[chat] 20100104#x3-エンドユーザとミドルユーザ

エンドユーザとミドルユーザ

TRPGの楽しみ方と二つの流れ#1 – ユーザの棲み分け
ケイ
「最後の話になってから長いな。大丈夫か?」
玄兎
「正直、話し足りないことだらけなんですよ。今、手がこんなだから書き残しておくこともできないし、オペが成功しても、当分は喋るのも一苦労になるでしょうし」
ケイ
「そうか」
玄兎
「まあそんなことは瑣末なことなんですが。じゃあ話を戻しまくって、子供になりましょうの話。TRPGの遊び方として、お行儀のいいプレイヤーはGMの用意した課題をGMの指示通りにクリアするわけですけど、そういうのって子供のお遣いじゃねーかと思うこととかあるわけです」
ケイ
「そんなのあるか?」
玄兎
「昔からあるでしょう。一本道ダンジョンとか、決められた判定に成功しないと先に進めないとか。鍵のかけられた扉が、鍵開けか解錠の魔法じゃないと開かないとか」
ケイ
「ああ」
玄兎
「今でもそんな感じの遊び方ってあって、ただ最近はドラマベースのシナリオだと、やらされてる感ってのが希釈されて、わりと普通に受け入れられてる部分があるみたいなんですね。もちろんその中でも自分からストーリーを増やしたり、展開を考えて予定より面白くなるように布石するプレイヤーもいるんで、その手のシナリオ構造自体がペケってわけじゃないんです。問題なのは、ただひたすらGMに課題を寄越せと囀るプレイヤーで、それだけだとGMが消耗するわけで。GMを消耗品として扱うなと言いたい。これがひとつ」
ケイ
「消耗されたGMはどうなる?」
玄兎
「最悪、TRPG辞めちゃったりしますよね。自信なくしたり、シナリオのネタが尽きてセッション組めなくなったり」
ケイ
「ああ、シナリオ書けないからセッション延期とか、よく有ったわな。で、お前がピンチヒッターになる(笑)」
玄兎
「お陰で箱庭回してストーリーでっち上げる腕ばっかりあがりました(笑)」
ケイ
「おめでとう(笑)」
玄兎
「(笑)なんかそれ受け入れたくない気がするんですがまあいいや。えーと、とにかくシナリオ作るのに疲れちゃうGMってのもいて、そういう人はGMやりたくなくなるケースがある、らしいです。まあ、サンプル数が少ないので一般論にゃならんのですが」
ケイ
「まあ、分からんでもねえけど」
玄兎
「レギュラーでGMやってる人が、たまにプレイヤーやりたいとかって言うの、本当にプレイヤーがやりたいのかっていうと、実はそうじゃなくて単にシナリオ作るのが面倒なだけ、みたいなケースもあるみたいですね。それだけシナリオを作るって工程は、負担になりやすいもんだって話で」
ケイ
「確かお前、それで商業がシナリオ集を出しまくるのは正解とか言ってたよな?」
玄兎
「ええ。商業レベルではそれで正解だと思います。ただ、現場レベルではやっぱり問題が有って」
ケイ
「というと?」
玄兎
「シナリオ集ってGMが買うわけでしょう。プレイヤー専門の人は買わない。とすると、テーブルの維持コストはGMが一方的に支払ってることになっちゃう。相対的に考えて、シナリオ集ってルールブックの半分以下しか売れないんで、単価が上がる。そうするとますますGMの負担が大きいってことになる。昔、友人のグループの天秤がちょっとだけ狂ったとき、そのちょっとした格差で一気に崩壊したことが有ったんですよ」
ケイ
「そんなに大きな格差か?」
玄兎
「どうなんだろう。システムにもよるんでしょうが、その時はプレイヤー専の人たちがまるっきりお客さん気分で、一方的にGMが背負っちゃってたみたいなんですよ。2回ばかしヘルプで参加したことあるんですが、運営サイドが一方的にコスト払って、金払わない客に文句言われるのってどうなんだ? とは思いました。僕はあの環境ではやりたくない」
ケイ
「そりゃあまあ、たぶん俺も嫌だな」
玄兎
「まあ僕が参加したときは末期だったんで、どうしようもないレベルになってたんだと思うんですが。とにかくそんなでGMが摩滅するとGMが逃げちゃう。GMがいなけりゃ卓が立たないわけで、いやまあ最近はGM要らずのシステムなんてのも出てきてますが、GMがいなけりゃそういうのしか遊べなくなる。それでいいなら構わんのだけど、従来のGMがいるセッションが遊びたかったらGMを大事に使わないと駄目よと」
ケイ
「でもそれレフリーがそれで良かったら問題ねえんじゃねえの?」
玄兎
「そりゃそうです。でもGMにもいろんな種類の人間がいて、僕は大雑把にレフェリー、ディレクター、ストーリーテラーなんて分類をしてますが」
ケイ
「レフリーじゃなく?(笑)」
玄兎
「レフリーじゃなくレフェリー(笑)。だから必ずしもトラベラーのレフリーがそうだって話ではないです。同じようにストーリーテラーもWhite Wolfのあれではない。どっちもベースではあるんですが。で、えー話を戻して、たぶんストーリーテラー型のGMなら問題ない。ディレクター型とかレフェリー型のGMにとっては相対比で問題になりやすいかなあ、と」
ケイ
「どういう分類だそりゃ」
玄兎
「ゲームボードをどこに置くかってイメージの話なんですが。概念的にはレフェリーはルールの裁定をする傍観者。ワールドシミュレーターですね。ディレクターはそのまま、ゲームを面白くするための演出やなんかを考えてハンドリングする人。エンターティナーです。ストーリーテラーはストーリーを語ることをメインにするGM。ストーリーを仕立てるのが好きな人で、まあアーティストになるのかな」
ケイ
「ちなみにお前は?」
玄兎
「本質的にはレフェリーですね。たまにディレクターになったりもします。ストーリーテラーとは縁遠い。そういう人間にとって、面白いゲームにするのはテーブル全体の仕事。更にゲームの面白さというか、GMの楽しみの何割かを意外性に置いてる。GMが想定してなかったプレーをプレイヤーがしたときですね。その瞬間は、GM役の人間もプレイヤーになるんですよ。レベルの違うゲームをしている、というかレイヤーが違うって方が正解かな。ここでもう一つ、下準備しといた話が出てきます」
ケイ
「さっきの話か」
玄兎
「そう。TRPGをプレイヤーの側から捉えたとき、さっきの話で言えばコマンド選択型のアドベンチャーゲームなんですね。それに対してレフリーの側から捉えたときは、サウンドノベルになるんです。シナリオテキストが読めない立場と読める立場、レフリーは読める立場に立つ代償として、常に自由な選択肢を保有する権利を、供物として捧げている。レフリーがシナリオに沿ってゲームを進めている限り、レフリーはシナリオデザイナーの司祭でしかない。ただし英雄、まあプレイヤーですが、彼らが神に、つまりシナリオデザイナーに直接介入するようなアプローチをすることで、シナリオの先の展開が読めない状態になり、レフリーは即興でシナリオの先の展開を予測し、構築し、予め用意されていたシナリオと、即興で構築したシナリオとの選択肢が提示されることになります。マーク・ミラーはここにいる、ていう」
ケイ
「ああ、あったな。懐かしい(笑)」
玄兎
「TRPGの参加者は、プレイヤーならキャラクターに、GMならシナリオに対して連続性を維持することが要求されます。プレイヤーはキャラクターを自分の方に引き寄せるわけだけど、アドベンチャーが持っていたプレイヤーと主人公とのマッチングテスト障害は、自分でコマンドを生成することで解消する。レフリーもシナリオとレフェリングのマッチングテストを常に行ってます。前にブログでプレイヤーにとってのPCと、レフリーにとってのシナリオは正対すると思うって話を書いて、その時は言葉の使い方を間違って、変な方向に転がっちゃってダメだったんですけど、言いたかったのはこんな感じの話です」
ケイ
「それを俺に言われても(笑)」
玄兎
「うん、まあそうだとは思うんだけど、もしこれ文字起こししてもらって、読者さんが読んでくれた場合のために(笑)」
ケイ
「お前これかなりの分量だぜ?」
玄兎
「なんならうちのスタッフに送っといてもらえれば」
ケイ
「出来る範囲でやるけどな」
玄兎
「お任せします。で、話を戻しますが」
ケイ
「ああ、すまん」
玄兎
「プレイヤーとGMのパターンについては大体これくらいなんですが。プレイヤーが一方的にシナリオを求める構造がGMの酷使になるとして、その解消方法として外からのアプローチは三つ。一番ダイレクトなものから、シナリオ集、ソースブック、シナリオデザインガイド。まあでもソースブックとシナリオデザインは、結局シナリオを自分で作ることになるわけで、あんまりサポートにはなってないって話もありますが。だからまあ、商業としてはシナリオ集メインで勝負するのも当然だろうと思います」
ケイ
「その辺はコンシューマの事情と対して変わらねえわな。特に日本じゃModが一般的でもねえし」
玄兎
「TRPGはModそのものですからね」
ケイ
「直接研究材料にするときは、その辺から読めばいいか」
玄兎
「でしょう」
電子出版と同人活動#1 – チャンス到来(笑)
玄兎
「ああ、そうそう。また脱線します(笑)」
ケイ
「ああもう、どんどんやれ(笑)」
玄兎
「(笑)投げやりだなあ。まあ勝手にやりますけど。この話は実はちょっとあれで、えーとアマチュアのシステムデザイナーの人たち、チャンス到来です。商業はオンラインセッションへの対応が遅れてるし、現行の出版物で利益を出すようなビジネスモデルは、それ自体が黒船来航で大ダメージの可能性大です。Kindleやら、Appleの何やらは月末発表らしいし、SONYとか国内でもなんか出るだろうけど、とにかくその辺のデジタル出版の時流を掴めれば同人タイトルがオンライン市場を席巻することも不可能じゃないかもしんない。たとえばあれだ、どどんとふのプラグイン的に、『シルバーレイン』のメガリスチャットみたいなカード機能とか作れれば、そこで使ってる機能をオフライン用のカードとかにグッズ展開するとかの逆流アプローチもあるわけで。はい野望のあるクリエイター諸君、勝負どころが来ました(笑)」
ケイ
「いいのかお前、そんなこと言ってて(笑)」
玄兎
「膠着してますから、これくらい言っといた方がいいんじゃないかと。プロが弱ってもアマチュアが下支えできるけど、アマチュアが弱ったら先がありません。やれる人、がんばれ(笑)」
ケイ
「何だその丸投げテンション(笑)」
玄兎
「今ちょっとネタ枯れ気味なんですよ(笑)。あとまあこれだけ言っても実際成し遂げるまでのフローは結構多いんで、その辺の環境整備をするだけでも一仕事になると思います」
ケイ
「あれだよな、そこまでのマニュアルとか作ったりすりゃ、それだけで商品になるんじゃねーかとかは思うわな。ハウツー本」
電子出版と同人活動#2 – シナリオから始まる批評活動
玄兎
「そこでまあ経済としては、Kindleやなんかが普及して、電子書籍の販売ルートが確立されれば同人シナリオを販売しやすくなる、なんてのもあります。ぶっちゃけそこまで進んで、ようやくTRPGもミドルユーザの充実が図れるかなとか思ってるんですが」
ケイ
「フリーのシナリオ頒布ってのもあるんじゃねえの?」
玄兎
「ありますけど、無料に甘えってあるじゃないですか。有料で金を取ることで責任を負うというか、評価基準がシビアになるんで、ちゃんと淘汰される構造ができあがるし。アマチュアの価格帯が出来て、有料化によるシビアな目線が生まれれば当然、それを評価する動きも出てくるだろうし、システムとの相性というか、どういうシナリオが遊びやすいかとか、どうやってシステムを駆使すると楽しめるかって話の研究も進められると思うんですよ。プロの価格帯に求められるレベルも高くなるだろうし。まあ逆に、商業主義というか企業秘密的に扱われる可能性もあるんですが」
ケイ
「値段の高い安いも関係しねえかな」
玄兎
「あるかもしれませんが、たぶん格安で100円、普通で300円から500円くらいで安定するんじゃないかとも。印税35%として、頒価300円なら1部100円くらいにはなるわけで、まあちょっとした小遣いにはなるだろうし。問題はむしろ支払い手数料の方なんですが」
ケイ
「ああ、中間摂取(笑)」
玄兎
「結局そこで値上がりしちゃえば意味ないんですよね。そうするとまあ、手数料がネックになって安くても売れない、なんてことにもなるし。まあその辺は今回ちょっと無視します(笑)」
ケイ
「逃げた(笑)」
玄兎
「ケータイアプリの支払いみたいになってくれれば、その辺も活性化すると思うんですが、うるさい連中がどこまで群がってくるか、それ次第でしょう。まあその辺は置いといて、電子書籍でちゃんとマップやらなにやら作りこんだシナリオであれば、それだけ印刷して使うとかも便利でしょうし、価値も上がるでしょう。あれどこだっけ、セブンイレブンだったかのプリンタサービス使えば、準備を忘れても出先でプリントアウトしたりできるし」
ケイ
「なるほど」
TRPGの楽しみ方と二つの流れ#2 – 自作する流れ
玄兎
「まあ、大局としてはそういう分化が進むと思うんですが、もうひとつ、別の展開も忘れないでおきたいというか、もうひとつの流れも保存しておきたいんですよ」
ケイ
「分けさせない流れか?」
玄兎
「流石。レトロな話ではあるんですが、やっぱり自作すること自体を捨てさせるのは惜しいと思うんですよね。分化のメインストリームの先に、シナリオやシステムに対する分析やら批評やらが生まれるとは思うんですが、生まれなかった場合の先行きってやっぱり不安ですし」
ケイ
「どうしてもタイムラグはできるよな」
玄兎
「そう。でもまあ自作っていうと、やっぱりGMへの負担ってのが課題になってくる。従来型の遊び方で、自作して、GMの負担を少なくする方法はないかと考えたときに、一つの解法が、プレイヤーが子供になる」
ケイ
「なんでそうなる」
玄兎
「子供は遊びの天才、てやつですよ。子供たちって放っておいても勝手にハンディキャップつけたりしながら遊びの調整するんですよね。そうやってコミュニティの維持をする。子供は数も行動範囲も限られている分、有り物で勝負しなくちゃいけないから、あれこれ工夫するわけですが、大人になると現状をすんなり受け入れちゃったり、無いものは外から持ってこようとする。エンドユーザのモデルなんかはそういう大人的な発想なんだけど、外からの供給が絶たれた瞬間に、大人って無能化するんですよ」
ケイ
「責任転嫁したりな」
玄兎
「そう。でもまあそれじゃあつまんないので、子供になりましょうってのは現状に甘んじず、有り物で拡張することを考えようって話です。まあ分かりやすいところで言うと、昔は既存のシステムのルールを分解して別のシステムに組み込んでみるとか、良くやったじゃないですか」
ケイ
「シナリオの書き換えとか、キャラのコンバート式作ったりとかか。そういうこと、今ってやんねえの?」
玄兎
「いやまあやってる人はやってると思います。ただまあ単純にそういう話が外に出てこないだけとか、あるいは僕のアンテナが短いだけかもしれないんだけど、ほとんど聞かないんですよね、そういう遊び方してるって話」
ケイ
「そら寂しいな。越境しねえのかなあ、キャラ」
玄兎
「だから今こそエターナルチャンピオンを(笑)」
ケイ
「なんでだ(笑)」
玄兎
「いやなんとなく(笑)」
ケイ
「雑だなあ(笑)」
玄兎
「丁寧に噛み砕いて考えるのは、興味がある人任せで(笑)。プレイヤーってスキルユースのレベルでは高い次元まで伸びるんだけど、システム運用のレベルでは伸びないんですよね。GMがシナリオとルールの両方を掌握してるから。それはストーリーハンドリングを考えると確かに重要なんだけど、そこを独占することがプレイヤーの視野を狭くしちゃってる部分も有って。つまりどのルールをどうやって使うとどういう表現ができるのか? ていう物語表現のレベルで、プレイヤーってほとんど伸びないじゃないですか」
ケイ
「プレイヤー専門でどんだけ経験積んでも、レフリーはイマイチってやつはよく居たわな。その辺のインストってなんかあんのか?」
玄兎
「インストというよりレクチャーですかね。翻訳すりゃいいと思うんですが」
ケイ
「何をだ」
玄兎
「ストーリーコンテンツを。ピンチにかけつけるヒーローは移動判定をASAPで成功したんだな、とか。やったじゃないですか」
ケイ
「ああ、あったあった。『スターウォーズ』の全シーンを『トラベラー』で書くとかな。そういうことか」
玄兎
「そういうことです」

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