[chat] 20100104#x1-サウンドノベルとアドベンチャー

サウンドノベルとアドベンチャー

玄兎
「そろそろ時間ですね。最後にちょっと、願望だけ吐露しといて良いですか」
ケイ
「そんな状態でもエロ話がしたいかお前(笑)」
玄兎
「いつエロの話が出た(笑)」
ケイ
「願望ったらそうじゃねえの?」
玄兎
「うーん。正直ちょっとエロ方面は飽きてんですよね。技術の発展なんかを考えると、まあ大概がセックスか戦争のどっちかが原動力になってるんで、エロとミリタリーの最新技術を見るのは楽しいんですが」
ケイ
「ポリ・ミリならぬ、エロ・ミリだな(笑)」
玄兎
「(笑)どっちも支配欲というか、反応と操作の極点なんですよ。不謹慎の向きもありますが、参加型エンターテイメントですね。エロが個人、だからまあ属性としてはミクロ。それに対してミリタリーは集団、マクロです。ウォーシミュレーションゲーム、ミニチュアゲームからストラテジーのダイナミズム溢れるゲームがマクロ方向への進化だったとすると、同じウォーシミュレーションからロールプレイングゲームはミクロ方向への進化、なんて考えることもできると思いますが、そうだとするとロープレとエロとの相性が決して悪いわけではない。もっとも、スキルに対するレスポンス装置もTRPGじゃ同じ人間で、対面してエロエロ演出するのも恥ずかしかったり色々あるんで、その辺バッサリ割り切れるレベルまで環境をいじらないといけない。でもバッサリ切るとエロでは無くなっちゃう。エロってその恥ずかしさの根っこに有る生々しさが命なわけで。だから結局のところ、ロープレを更に進めたサウンドノベル形式まで突き抜けたところで、ようやく結実したかなって感もあるんですが」
ケイ
「そのロープレってコンシューマのあれじゃないだろ。もっと昔のアドベンチャーゲームとかの時代の話だよな」
玄兎
「ですね。TRPGでもなくロールプレイング。役割を演じる。キャラクタープレイとかシチュエーションプレイとか、まあぶっちゃけイメクラですか。ただそのロープレのデジタルゲーム分野での展開が、コマンド入力型、コマンド総当たり型のアドベンチャーからサウンドノベルっていう性質の展開って、TRPGのゲームメカニズムの世代進行とかなり類似したものがあるように思ってて」
ケイ
「アドベンチャーの時代にゃロープレ型って無理だったのか?」
玄兎
「絶対に無理ってことじゃあないとは思いますが、あくまで一昔前までの経験則ってことで言えば、テキスト書くにしても障害は大きかったです。アドベンチャーの場合、主導権がプレイヤーにあるんでキャラクターがプレイヤーに歩み寄らなきゃいけないんだけど、そうするとターゲットペルソナの設定が難しくて、テキストを作るのが大変で。しかもキャラクターがプレイヤーに歩み寄ろうとすると、気障がギャグになっちゃうんですよね。二枚目に書くとプレイヤーと乖離しやすい。だからアドベンチャーの頃はメタギャグでお茶を濁すようなアプローチが一般的だったと思います」
ケイ
「それはアドベンチャー全般に言えるか?」
玄兎
「キャラを固め打ちして、わりと時間かけてグランドホテル型のドラマを書けるものなら解消できるんですが、それって結局のところ、サウンドノベルの手法とほぼ同じなんですよ。遠回りして同じゴールに入ってるというか。さっきも話したけど硬直した属性を利用して、ハードボイルド属性を煮詰めた『神宮寺三郎』シリーズなんかは、アドベンチャーでもキャラをロープレさせられるアドベンチャーで、王道のはずなんだけど全体からするとレアでしょう。まあその、周りが屍の山になって孤立しちゃったってのも大きいんでしょうけど(笑)」
ケイ
「神宮寺シリーズ以外は撤退しちまったんだな(笑)。にしても潜水艦だよな、あれ。あれ何年ごろから出てる? ファミコン世代だろ?」
玄兎
「『新宿中央公園殺人事件』がディスクシステムで1987年。シリーズ最凶の『横浜港連続殺人事件』がカートリッジで1988年。『危険な二人』がまたディスクシステムになって1989年。1990年に『時の過ぎゆくままに』が出て、ファミコン版のシリーズは終わり」
ケイ
「よく覚えてんなあ」
玄兎
「最近調べたばっかりだったんで」
ケイ
「シリーズ最凶ってな、なんだ?」
玄兎
「クライマックスのシーンで、コマンドの選択順を間違えただけでアウトだったそうです。この時期、僕は日本にいなかったんで知らんかったんですが、ある意味『たけしの挑戦状』ばりのアプローチですよねえ」
ケイ
「たけ挑とか、おま(笑)」
玄兎
「あれはたけ挑って略すのか」
ケイ
「いや、知らん」
玄兎
「知らんのかい(笑)」
ケイ
「知らん(笑)。で、サウンドノベルはプレイヤーをキャラクターに没入させるから、キャラクターが気障でもイケメンでもアリアリなのか」
玄兎
「没入しやすいようなポイントは作っておく必要はあるんで、どんなキャラでも可能ってわけじゃないんですが。でも実際いたらウザいだろうなあってセリフとかも、サウンドノベルだとわりと書きやすいです。選択肢について考える時間が少ない分、パズルゲームに思考リソースを持っていかれないんで、テキストは普通に読み物として読ませりゃいいんで。そうするとまあ、プレイヤーの関心は主人公のアウトプットじゃなくNPCのアウトプットに集中しますし」
ケイ
「そうか。一問一答のダイアログだとプレイヤーのやりたかったことと実際にやったことが乖離しちまうことがあるから」
玄兎
「そうそう。プレイヤーがマッチングテストしちゃうんですよね、毎回。そうするとプレイヤーとキャラとのズレが累積しやすくなって、つまり小さいストレスが蓄積するんですけど、それは操作性が悪いアクションゲームと同じようなもんなんです」
ケイ
「なるほどなあ」
玄兎
「まあ『弟切草』に前後して、『VIPER』みたいなタイトルも有ったり、アプローチ次第、素材次第で解決できる話だと思うんですが。まあそれはそれとして、結局コマンド型にしてもサウンドノベルにしても、主人公のことをテキスト化するところでノイズが生じるんですよ。で、じゃあ主人公のことを書かずに済ませるにはどうしたら良いかってことで、一つの解法として感情入力システムが出てきて」
ケイ
「あれキャラの行動書かれねえんだっけ?」
玄兎
「ないですね。感情を入力すると直接NPCの反応がアウトプットされる形で。だからNPCの反応から主人公の行動を逆算してもいいし、主人公のイメージを固定してNPCの反応が変だとしてもいい。主人公の行動をマスクすることで、プレイヤーごとのイメージに幅を持たせるアプローチです。まあ決定的な選択までそれでやると、意思決定が正しく機能しないで大変なストレスになるんで、あくまでNPCとのコミュニケーションに限った話なんですが、そこで主人公のイメージをプレイヤー内に増大させて、プレイヤーとキャラクターの言動をシンクロさせる、ていうアプローチになります」
ケイ
「整理すると、アドベンチャーは短いスパンでマッチングテストが行われるからストレスが溜まりやすい。この問題はプレイヤーがキャラクターを理解できないことで発生する。解消にはプレイヤーにキャラクターを理解させる必要がある。神宮寺三郎のハードボイルド記号がその好例」
玄兎
「YES。コマンド選択の場合、常に自分ならどうするかを考えて結果を予測し、コマンドを入力してその成否が確認される、というプロセスになります。また、コマンド選択型アドベンチャーの多くが一回のコマンドで出力されるテキストが短くて、コマンド選択になるたびに現実に意識が引き戻されるために、ゲーム世界に没入するための時間が足りない、とも考えられます」
ケイ
「キャラクターを理解させる方法として感情入力システムが考えられた。NPCの反応からキャラクターを逆算して、キャラクターの傾向を理解させる。自分ならどうするかではなく、キャラクターならどうするかを想像することを習慣化させる」
玄兎
「YES」
ケイ
「なんで感情入力システムが定着しなかった?」
玄兎
「ある意味で革新的なアプローチだったのかも知らんのですが、もっと単純にパクリ言われるのは避けられませんからね。あのシステムの特性を生かすデザインワークって、考えてみるとわりと難しいんですよ」
ケイ
「汎用性低いのか、あれ」
玄兎
「低いと思います。あのシステムの特性を、たとえば今の流れでは周辺環境の変化と、主人公への同期って評価をしてみたわけですが、これが一番マッチするステージセットってジュブナイルだと思うわけです。主人公との同期、自分を知るってことと、周辺環境がめまぐるしく変化していく環境って言うと、丁度アイデンティティの獲得に相当するシーズンでしょうし。でも魔人がジュブナイルですから、二番煎じと言われないためには別のアプローチをしたいところで。でもそうすると、システムとの相性があんまりよく無くなっちゃう可能性が高い。もうあれは出したもん勝ちだった。先行逃げ切り(笑)」
ケイ
「あれ採用してるのって、魔人と他なんだっけ。転生と九龍だけか?」
玄兎
「たぶん。あとモノカラもそうなんでしょう?」
ケイ
「らしいな」
玄兎
「全部学園モノなんですよ」
ケイ
「ああ、そうか」
玄兎
「まあそれは置いといて、別の理由としてはもう、単純にコストの問題じゃないかとも思います。実際書いてみると泣きそうになりますよ、あれ。感情が8種類に入力なしの、計9パターンの処理を考える必要があるわけで。それぞれの感情が違うテキスト、違うパラメータ変化を起こすわけで、たとえばNPCのイベントについてパラメータで処理するとして、それまでのパラメータの変動と反応の流れとをチェックしないと、NPCの行動に一貫性がなくなっちゃいます。結果、デバッグ地獄に陥るわけです。以前にどうもこう、感情のエミュレートとしてはパラメータの変動が単純なプラスとマイナスってのが気に食わなくて、感情の揺れについて現状の状態とベクトルに、係数をかける形で変動させるのはどうかと提案したことも有ったんですが、ますます地獄が拡大しちゃって総スカンくらいました(笑)」
ケイ
「んじゃモノカラの方は大変そうだなあ。で、あれか。サウンドノベルはそれに比べれば一本道でテキストを書けば良いってことか」
玄兎
「ですね。もちろんエピソードの数が多ければ単純に文字量は増えるわけですが、ルート分岐でそれぞれが扱うパラメータが少なければ、デバッグコストも下がりますし。恋愛ものなんかで攻略出来るNPCがルートごとに限られてれば、攻略NPCの変数は共通で構わないわけだし。極論すると、選択肢ごとのパラメータの変化自体を同じにしちゃって、フレームワーク化しちゃうって手すらある。この場合、分岐はパラメータ変化の結果から逆算して書けばいいわけで、工場生産としてはやりやすくなります。実際のところ、サウンドノベルの開発コストって、どっちかといえばテキストの連想認識で、誤字脱字のチェックが死ぬ思いとかそういう話のような気がしますよ」
ケイ
「死ぬよな、あれ」
玄兎
「文章を読み慣れてる人間のほうが、あの手の誤脱は見つけにくくなっちゃうところがあって、でも読み慣れてない人に長文読めってのもまた大変だしっていう(笑)」
ケイ
「デバッガーってな遊び慣れてるやつだからなあ。アンビバレンツだあな(笑)」
玄兎
「ですね。でもサウンドノベル、選択肢ごとのテキストが無駄になりにくいって強みがあるんですよ。書き手としては、この辺わりと嬉しい話。まあそれはともかく、なんにせよ完全に読み物になりますんで、主人公とプレイヤーの乖離はそもそも問題ですらなくなる。読み物なんだから、違ってて当たり前ってわけです。そうなるともう、問題は純粋にストーリーコンテンツとしての完成度だけになる」
ケイ
「だからゲームじゃない、とか言われるんだろうな、ああいうのは」
玄兎
「そうなんでしょうね。その辺については、読んできたテキストと没入感それ自体をリソースとしたゲームだ、とか確かそんな感じの話をしてる人がTRPGブロガーの中にいたと思います」
ケイ
「やりこみ中毒の一種か」
玄兎
「ああ、なるほど。そういう見方になるのか」
ケイ
「プレイヤー自身の投資と配当が、リソースになるんだろ? ロンダルキアだ、ロンダルキア」
玄兎
「そうして読み替えると、ゲームっぽいですね、確かに」
ケイ
「だろ? てかよ、このサウンドノベルの話でいいのか?」
玄兎
「ああ、じゃあ戻します。えーとあれだ、RPGにしてもJRPGはライナーRPGだーなんて皮肉も出てますけど、そんなん昔々のその昔に、ベーマガかなんかの投稿プログラムでとっくに皮肉られてたじゃんかー、とか。今更感どころじゃなく」
ケイ
「そんなのあったか?」
玄兎
「まあうろ覚えなんで違うかも知れんのですが、そういうプログラムはあったはずです。ベーマガで、かれこれ二十年くらい前で。盤面が見えないスゴロク形式って触れ込みで、まあ実際にはランダムにイベント判定してるだけなんですけど。さすがに移動するとHP減って経験値増えるとか、そこまでスマートじゃなかったんだけど、どっちに進もうがやってること同じって言う。当時サークルの会誌にアルゴリズム書いて紹介したはずなんですが、覚えてません?」
ケイ
「あー、なんかあった気がするな、そんなの」
玄兎
「まあ汚いアルゴリズムだったんですが。あれとマイクロマガジンの『コンピューターRPGの作り方』てのとで、僕はRPGの基本的なロジックを理解したんだと思います。ああ、あとゲームブック自分で作ったりしたのも経験としちゃ大きいですが」
ケイ
「ああ、あのFFもどきな(笑)」
玄兎
「そうそう(笑)。なんで黒歴史だけ覚えてるんだあんた(笑)」
ケイ
「グーニーズとFF2をくっつけたようなヤツだろ。屋根裏部屋でなんか見つけたり(笑)」
玄兎
「もうその辺でやめるんだ先輩!(笑)」
ケイ
「いいじゃねえか。いやあ、よく出来てたと思うぞ(棒)」
玄兎
「文字起こししたら今のケイさんのセリフには、カッコ棒カッコ閉じ必須で(笑)」
ケイ
「とにかくあの辺で理解したわけだ。RPGを」
玄兎
「ですね。だからまあブログの方でも書いたんですけど、うちのチビ助の先生にTRPG説明したとき、スゴロクでどうのって話したのとか、あとイマジナリーボードって話なんかもすんなり理解できたのも、その辺の土壌があったんでしょう。マスタリングしてても、頭の中じゃあゲームの状況のグラフィカルイメージに、条件式とチャートが上位レイヤーとして乗っかってますし。て、何の話でしたっけ?」
ケイ
「エロ話じゃね?」
玄兎
「エロ。エロ? ああ、これか。エロがミクロでRPGでサウンドノベル。まあエロを扱うTRPGてのも無いわけじゃなくて、つぎはぎ本舗の『絶対隷奴』とか、パソパラチャットで連載してた、なんだっけあれ、えー、えー、『エンジェルクエスト』だったかな、ちょっとタイトルうろ覚えですが」
ケイ
「そんなんあったのか」
玄兎
「ありました。まあ単にヒットポイントを耐久力として、どっちが先にイッちゃうかってだけの、テクスチャの張替えなんですが。RPGってテクスチャ命でしょう」
ケイ
「そりゃそうだ。テクスチャーが無かったら何をロールプレイすんのかもわかんねえし」
玄兎
「だからまあ、そういうことなんですが、まあでもエロったら普通はシラフでやれるこっちゃないわけで。だからギャグですわな。ホラーゲームと遊びの質は、あんまし変わらんような気がします」
ケイ
「まあホラーもテクスチャー命だわなあ」
神と詐欺師
玄兎
「まあエロはいいとして、業病といえば他者支配の先ってのもまだあって。他人に興味が失せ切った為政者の、ナルシシズムの極限に踏み込んだ不老長生ってのが。いわゆる皇帝病なんて表現してる人もいて言い得て妙だと思ったもんですが。これはまあ、人間が神を持っちゃったときからの業病なんでしょうけど」
ケイ
「神を持ったからそうなったのか」
玄兎
「支配欲そのものは、防衛本能の裏返しみたいなものだったりするんで、群生動物なら普通に持ってるもんだと思うんですが、そこに神なんてもんを持ち出しちゃったからさあ大変。自分より上の存在がいる、ある、てのは支配欲の危機、防衛活動の危機ですよ。しかもそいつは運命とか未来とかを操って、自分に試練だの苦行だの死だのを与えやがる。これがもし、他の自分と同格の、まあ同種とか同族とかの生物にも一定の支配を許してる、被支配を認めてる人間なら構わんのですが、同族の頂点にいる人、立ちたい人にとっては支配されることなんて認められんわけで。下に軽んぜられかねない。でも神の野郎は一向に姿を見せやがらねえわけで、そしたらもう、こっちから出向いて殴り飛ばしてその座から引きずり下ろして、代わりに自分がそこに座るくらいしか方法が無い」
ケイ
「どうでもいいけどお前、むちゃくちゃ不遜なこと言ってねえか?(笑)」
玄兎
「神とはなんぞや、の定義によってはそうだと思います。でもまあ一神教のパラドクスってのがあって、神が全てを作りたもうたのであるならば、悪魔とはいかなる存在か、という。悪魔じゃなくて悪人でもいいんだけど、地上に悪人が生まれたとき、悪人は神の意志によって悪行を為すのか、神の意志に反して悪行を為すのか。神は人の魂を試されているという。何故試す必要があるのか。神はなんのために人を作ったのか。魂とはなんぞや。天使とは悪魔とは世界とはなんぞや。動物とは植物とは海とは大地とは地球とは宇宙とは光とは言葉とは。もしかしたらそこには壮大な何かが有るのかもしらんのですが、当の神様がTweetでも残してくれんことには知る由もない」
ケイ
「(笑)神はキーボードを叩くってか」
玄兎
「叩いてくれないかなあ、神。まあでもそれが神のものなのか半ダースの猿のものなのか、確認する術もないし。随分と前にちょっと何かに入れ込んだセリフだけど、人が知覚できる神なんて神じゃないって話もある。多神教というか汎神主義というか、我に神あり汝に神ありの人間としては、面と向かってしゃべってる相手が神様かも知れないって考えもあるんですよ」
ケイ
「じゃあ俺が神なのか」
玄兎
「僕にとってはそうかも知れない。あるいは今は違っても、将来的にこうして話したことが、僕の人生を豊かにするきっかけになったと気付く日もあるかも知れないわけで、それと気付いたとき、僕がそれを神の御加護と思ったなら、過去に遡って今ここにいるケイさんが神だったり神の御使いだったりに変わるわけです」
ケイ
「神は過去に現れるってか」
玄兎
「認識されている神って、そういうものでしょう。実存は常に過去にある。人間は過去に介入できません。手が出ない。無敵です。逆に神は常に未来に居座って現在に布石している、とも考えられる。これだと多宇宙理論に反しちゃうような気もしますが。どっちにしろ人間と同じ時間軸に神様がいてくれることは無いと思います。だから人間に知覚できる神なんて神じゃない」
ケイ
「つぶやかねえかなあ、神(笑)」
玄兎
「本当に起こったら何もかもご破算になりそうですけどね。まあとにかく、人間は他人の考えてることすら分からんのに、上位存在の考えなんかが分かるのかって話で、まあ分かるのかも知れないけど確かめる術はない。結局のところ信じるしかない。神様の思惑はともかくとして、信じるしかないってことは、詐欺師やペテン師にとっては都合がいい。神を信仰する人がいれば、神を利用する人もいるのは当然ですよ」
ケイ
「お前も利用したか?」
玄兎
「だいぶ。だいいち、概念のまま個々人が崇めてるだけだったら司祭だなんだなんて生まれないでしょうよ。神のお告げがどうのこうのと誰かが言うと、真偽は分からんが逆らって面倒事になってもやだし、ていう日和見がそいつらを黙認して、既成事実にしちゃう。儀式だ何だ言ってもね、神使、御使い、まあ典型的なのは鳥ですわな。連中は飛ぶし、空の彼方を知る術は無かった。他にも密林の奥深く、雪山の絶壁の彼方、海の彼方とか色々あるんだけど、とにかくそういう動物連中が供物みんな食べるってんなら構わんのですが、祭壇に捧げられた供物をどうするかっつったら司祭連中が美味しくいただきました、なんてことも当たり前に有ったでしょう。人柱なんかもそうですわな。処女の生贄なんかにしたって、まあそれこそエログロよろしく処女食ってから捧げた、まあ口封じも兼ねて殺しちゃうわけですが、そういう司祭がいたって全然不思議じゃない。英雄の血肉を食らう儀式だってあったとか言いますし。それに司祭が生贄に捧げるようお告げが下ったとか言って、自分が気に食わないやつを殺させることだってあったでしょう。その時の神は、ていよく利用されてるに過ぎない。人間に使われる存在ですわ」
ケイ
「神そのものじゃねえけどな」
玄兎
「名を騙る詐欺師ですわな。でもまあ信じられれば神になる。信じてる人に取ってプラスの結果が出てて、迷惑してる人がいない間は、放っておいても構わないと思うけど。雨乞いの儀式が成功したとき、過去に遡って儀式場に神が降りたことになったりするわけで、過去が当たってれば現在も、未来も、てのは辻占のテクニックと同じですが」
ケイ
「雨が降るまで雨乞いを続けるってやつだな。そりゃ成功するわな」
玄兎
「最初にその方法を考えついた人がいたから、雨乞いの儀式は成功するものとして定着したんでしょう。あくまでダミースキルとしての話で」
ケイ
「どういうことだ?」
玄兎
「ああ気にしないで。それよりまあ、大体そんな感じで条件は揃ったんで、結論というか言いたいこと言わせてもらっていいですか」
ケイ
「今まで言ってなかったとでも」
玄兎
「いやまあそういうことじゃないんですが。今までのは話の枕というか、下準備というか」
ケイ
「もう時間オーバーしてるけどな(笑)」

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