[chat] 20091103#5-大アルカナの解釈・その2

大アルカナの解説・後半
オリハタさん(仮)
「次は、チャリオットね」
玄兎
「そう。ナンバーセブン、チャリオット。戦車。戦車と言っても現代のあれじゃなくて、戦闘用馬車ってか、まあ古代の戦車ね」
オリハタさん(仮)
「また戦争?」
玄兎
「カードの意味としては、勝利とか征服とかだから、まあそういうことになる。戦車に乗ってるのは年若い王で、調和の魔法数である4本の柱に支えられた、天蓋つきの馬車でどこかへ征旅、征服の旅へと向かう」
オリハタさん(仮)
「せっかくラヴァーズで仲良くする喜びに目覚めたのに(笑)」
玄兎
「(笑)まったくだ。ただまあこれは、社会の価値観がひとつじゃないことから生じるものだから、ある意味で仕方が無いと言えなくもない。戦争は嫌だけどね」
オリハタさん(仮)
「西洋史でも、戦争の時代ってことでしょ? 国家間の戦争とか」
玄兎
「そうなんだけど、ラヴァーズの時代に起こった国家の巨大化によって、国家ごとの文化のカラーが強くなっていってるわけで。国ごとの価値観も違ってくる。だからチャリオットで起こる戦争は、文明の衝突って意味も強い。個人的にはペルシア戦争あたりがシンボリックかなあ、とか」
オリハタさん(仮)
「ライフサイクルでは?」
玄兎
「小さい社会で醸造された価値観が、他の小さい社会と衝突することで、今までの価値観がぶち壊されたりする。まあ思春期だわな」
オリハタさん(仮)
「ラヴァーズは思春期じゃないの?」
玄兎
「まあラヴァーズも思春期かな。ラバーズが入り口で、まだ無自覚な頃。チャリオットのあたりで本格的に、思春期に突入する感じじゃないかと思うけど」
オリハタさん(仮)
「ラヴァーズが入り口で」
玄兎
「異性に関心を持つ、好きとか嫌いとかを意識して差し向かうのがラバーズだとすると、チャリオットでは身近なところでカップルが成立したり、あるいは自分がカップルになることで周囲が色々と変わっていく、その大きなターニングポイントなんじゃないかなあと」
オリハタさん(仮)
「ターニングポイント」
玄兎
「うん。ここ重要。テストに出ます(笑)。じゃあ次、これね」
オリハタさん(仮)
「ストレングス? でも女よね?」
玄兎
「女だね。ナンバーエイト、ストレンスグ。一般的には力って言われるけど、ここでは剛毅と言っておこう。気分的に」
オリハタさん(仮)
「気分なんだ」
玄兎
「まあ、『ペルソナ3』でもそっちが使われてるし。他に力士とかって呼び方もあるんだけど、これはまあイラストのイメージに合わなさ過ぎるんでスルー」
オリハタさん(仮)
「力士(笑)」
玄兎
「力士といえば高力士、は置いといて。誰かふざけてストレングスをスモウレスラーにしないかなあ(笑)。まあそれは冗談として、ストレングス。実はマルセイユ版、昔のタローでは、ナンバーエイトはストレングスじゃなくジャスティスなんだけどね」
オリハタさん(仮)
「違うの?」
玄兎
「そ、違うの。マルセイユ版ではナンバーエイトがジャスティスで、ナンバーイレブンがストレングスってことになってる。ウェイト版を作ったアーサー・ウェイトが、カバラやら占星術やらと照合して、入れ替えたらしい。未だにどちらの序列が正しいかってなると、研究家連中は激論を交わしてくれたりするんだけども。『水滸伝』のシオンみたいなもんだわな」
オリハタさん(仮)
「水滸伝?」
玄兎
「ああ、『水滸伝』て108人の豪傑に序列があるんだけどさ、そのうち85位のシオンてのが、本によって93位になってたりすんの」
オリハタさん(仮)
「ふうん」
玄兎
「て、まあそれはどうでもいいとして。とにかく今はウェイト版の方が一般的になってるんで、まあウェイト版準拠としよう」
オリハタさん(仮)
「それで、これはどういうカード?」
玄兎
「ストレングスは強い意志とか大きな力とか、まあ名前のとおり強さの象徴だね。女とライオン。正直これ何やってんのって思うんだけど、色んな読み方がある。でもまあ面倒だからそれはスルーして。西洋史としては、絶対強者としてのローマ帝国とか、その辺りかなあ」
オリハタさん(仮)
「自信ない?」
玄兎
「なんかこう、ライオンと女のイラストからどうしてもクレオパトラのイメージが有ってね。強い意志とか負けない強さとかってと、なんとなく。まあいいや。悪いけどここはスルー。ライフサイクルの方にいきます」
オリハタさん(仮)
「投げた」
玄兎
「今回はライフサイクルの方がメインだから。てことにしといて」
オリハタさん(仮)
「(笑)しょうがない」
玄兎
「いいね、しょうがない精神(笑)。じゃあ進めて、ライフサイクルにおけるストレングスは、ターニングポイントを過ぎて多様な価値観に触れてきた人が、自分はどうするのか、てことを定める頃。スタンスを決める、決意する頃だね」
オリハタさん(仮)
「高校受験のあたり?」
玄兎
「そうだね、まあそういう読み方でもいい。他にも思春期に決意することってたくさんあるけど、そういう、色んなことに触れて葛藤して、その中から何かを決意する。そういう時期」
オリハタさん(仮)
「決意ね。なるほど」
玄兎
「だいたい読めてきたでしょ?」
オリハタさん(仮)
「なんとなくね」
玄兎
「うん、まあ後でまとめるから。次、ナンバーナイン、ハーミット。隠者とも呼ばれる。老人の姿で書かれてるけど、マルセイユ版だと特に、フールのイラストは彼と照合するような描かれ方をしてて、隠者はかつてフールだった人だとされる」
オリハタさん(仮)
「先輩ってことね」
玄兎
「まさしく。西洋史的には隠者というより老人としての解釈が先に立って、老い衰えた帝国のシンボル、なんて読み方をされる。人と関わりを持たない隠者としての性質は、内向的、内省的、国家の中だけで物事が帰結する、そんな時代かな」
オリハタさん(仮)
「停滞から衰退へ、てことね」
玄兎
「そう。確実に崩壊へと歩みを進めている時代。まあ現代でも色々と象徴的だわな(笑)」
オリハタさん(仮)
「(笑)それで、ライフサイクルは?」
玄兎
「ストレングスで何かについて決意を持ったわけだけど、そんなことはお構いなしに訪れる危機。触れる価値観の多様化によって、それと成人として独り立ちすべき時期が近付いてくることによって、今まで積み重ねてきたことがクリティカルな危機に直面する。そんな時期」
オリハタさん(仮)
「大学受験だ」
玄兎
「感覚的には、かなり近いかな。ストレングスを高校受験とすると、いい対比になるかもしんない」
オリハタさん(仮)
「で、危機ね」
玄兎
「そう、危機。で、ついに訪れるナンバーテン。運命の輪、ホイール・オブ・フォーチュン」
オリハタさん(仮)
「ついに、て?」
玄兎
「ハーミットのときに訪れた危機が、現実のものになる。大きな運命の転換点であって、ここでの判断はものすごく大きな意味を持ってる。ウェイト版では魔法陣として描かれた輪の中に、露骨にR、A、T、Oの四文字が記されてて、これがまあ、タロー、T、A、R、O、Tの由来だ、と言う人もいる。それくらい重要なアルカナ。枚数的にも、10枚目ってことで大体まんなか」
オリハタさん(仮)
「でもアルカナって22枚でしょ?」
玄兎
「そうだね。フールを0として配列すると、真ん中なんだけどね。マルセイユ版ではフールはナンバリングされてなかったから、そうすると21枚で、だったらまんなかはナンバーイレブンなんだけど、てイチャモン付けてくる人もいるんで」
オリハタさん(仮)
「だから大体まんなか」
玄兎
「そう、大体まんなか。で、ここが運命の転換点で、判断を間違えると巻き戻っちゃう。西洋史でも、何度も帝国が衰退して分裂、また帝国化して分裂、てのを繰り返してる。ただ、フォーチュン、幸運とされてるとおり、これはチャンスなんだね。ハーミットによってもたらされた危機を、上手くすれば好転させられるチャンスの時代ってわけ」
オリハタさん(仮)
「ライフサイクルでも同じように考えていいんでしょ?」
玄兎
「そう」
オリハタさん(仮)
「どこの大学を受けるか、大学じゃない別の選択肢を選ぶか、そういう運命の分かれ道になってるわけね」
玄兎
「まさしく。危機を乗り越えるための糸口を見出す、そんな時期」
オリハタさん(仮)
「解決の糸口、と」
玄兎
「うん。じゃあ次、さっきも話したけど、ナンバーイレブンはジャスティス。正義。イラストはこれがまた象徴的で、玉座に座った女性が、剣と天秤を持っている」
オリハタさん(仮)
「剣は力?」
玄兎
「いや、この場合は支配とか、玉座と合わせて王権とか、そういう上層的なもののシンボルかな。天秤の方は、釣り合ってるくせに皿の大きさが違う。これは公平さとは必ずしも数量的な均衡ではないことを象徴してる、とされる。正義ってのは常に数の多い側に立つもんじゃないぞ、とかね。かなり欺瞞くさいけど(笑)」
オリハタさん(仮)
「(笑)黒くならないで」
玄兎
「ああ、ごめん」
オリハタさん(仮)
「ライフサイクルだと?」
玄兎
「うん。ライフサイクル的には、ハーミットで予告され、ホイール・オブ・フォーチュンで糸口を見つけた危機と、実際に対峙することになる。対峙して、それと自分とが天秤にかけられる」
オリハタさん(仮)
「受験だ」
玄兎
「今までの例えを継承すると、そうなる。センター試験とか。そういやうちの長男も高校受験なんだよなあ」
オリハタさん(仮)
「あらら」
玄兎
「うん、まあそれはいいとして、ライフサイクルとしては公平さ、公正なものと直面する。より大きな、独立した一人の成人としての生き方が問われる。でもまだ成人とはみなされない」
オリハタさん(仮)
「あ、まだなんだ」
玄兎
「まだだね。この後で通過儀礼が待ってる」
オリハタさん(仮)
「通過儀礼?」
玄兎
「そう。それがナンバートゥエルブ、ハングドマン。吊るされた男。刑死者なんて呼ぶこともあって、『ペルソナ』ではそっちを採用してるんだけど、まあそれはいいや。で、こいつは別に、何か罪を犯して吊るされてるってわけじゃない」
オリハタさん(仮)
「違うんだ」
玄兎
「だったら縛り首にされるでしょ。わざわざ足首縛って吊るす必要はない」
オリハタさん(仮)
「あ、そっか」
玄兎
「だからこれは、刑死者と言うより受刑者なんだな。ライフサイクルで言うと、さっきも言ったとおり通過儀礼。この儀式を通過して、何かが認められる。だからこれは、乗り越えるべき危機とか課題とか、そういったものに対する努力だね」
オリハタさん(仮)
「大学受験の後の努力? 卒業するとか?」
玄兎
「まあ、それでもいいけど、今風に言えば就活になるかなあ。社会に出るための最後の訓練。最後のモラトリアム期間」
オリハタさん(仮)
「モラトリアム期間ね」
玄兎
「そ。で、こいつが来ちゃう。ナンバーサーティーンは、デス。死神。」
オリハタさん(仮)
「死んじゃうの?」
玄兎
「表面的には、そういうことになる。といっても通過儀礼の後の話だから、これは象徴的なものと考えるのが正解かな。死んで、生まれ変わる」
オリハタさん(仮)
「成人するんだ」
玄兎
「正解。まあ成人というか、独立とか自立の方がいいかな。現代日本で言うなら、学生の身分から社会人の身分へとクラスチェンジする。そのために学生の身分が死ぬ、刈り取られる」
オリハタさん(仮)
「なるほどなあ」
玄兎
「とまあ、こんな感じで大アルカナは人生のモデルだ、なんて言われてるわけ」
オリハタさん(仮)
「これでおしまい?」
玄兎
「大アルカナは22枚あって、今回は14枚しか紹介してないんで、あと8枚あるんだけどね。でもまあドラマの構造解釈をする上では、ここまでで十分なんで。ここで切った理由も一応、ちゃんと有るんだけど、それは後で話そう」
オリハタさん(仮)
「じゃあこれで準備終わったんだ」
玄兎
「終わった。長かったあ(笑)」
オリハタさん(仮)
「(笑)お疲れ様」
玄兎
「ありがと。じゃあ、今までのを整理しよう」
オリハタさん(仮)
「休まなくて大丈夫?」
玄兎
「うーん。軽く休憩したい」
オリハタさん(仮)
「じゃあ、ちょっと休んでから」

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