[chat] 20090731#7

『GURPS Lite』とファンジン
玄兎
「ただまあ、独占翻訳権ってやつがですね」
ケイ
「ああ、悪名高き」
玄兎
「そう、悪名高き」
ケイ
「やつのせいで、いったいどれだけのタイトルが闇に葬られてきたことか」
玄兎
「色々有りましたからねえ。今も昔も権利問題は面倒でいけない。本家じゃ無料の『GURPS Lite』すら、ファンジンでは腫れ物扱いになっちゃう」
ケイ
「本家で無料で出してるものくらい、日本語でも無料で出させろと」
玄兎
「まあ無料じゃなくてもいいんですが、たとえば『GURPS Lite』が他の無料コンテンツ、マジックチャートとかコンバットシートとかと合わせて、まあ500円なり600円なり700円なり800円なり、金額はまあ1,000円切ればいいんだけど、とにかくそれくらいのペーパーバックでも出てくれたら、よっぽどやりやすいんですよ。ファンジン的には」
ケイ
「あれだな、前に言ってたやつだ。安手のペーパーバックにして、一人で何冊も消費してもらうんだっけか」
玄兎
「そうそう。最近はコンビニコミックなんかを中心に、ペーパーバックものが結構展開されてますんで、何かの間違いでコンビニに置かれたら面白いなあとかいう話もあって」
ケイ
「それこそライト同梱のパックでも出せりゃ、面白いんだけどな。たしかLiteは雑誌の増刊かなんかで出たんだよな」
玄兎
「ロール&ロールSP2ですね。まあ、あれはライト・カスタムってことで正確なライト版ではないみたいなんですが。内輪向けに1ダース買い込んで配りましたけど」
ケイ
「コピーすりゃいい、とかってのはダメか」
玄兎
「まあ勢いで」
ケイ
「勢いかよ」
玄兎
「勢いです。なんかこう、平積みになってたのをゴソっと抱えて持って行きたい気分だったんですよ。薄かったし」
ケイ
「気分じゃしょうがないな」
玄兎
「やったあとで後悔したんですが。重かったし。まあとにかく、あれにしても雑誌なのがいただけなかった。無くなる。あれが無くなったらもう、あとは1万円出してくれと。それは若年層には厳しい。キャンペーンはゲームマスターだけが持ってれば良い、とは言っても、5千円だか6千円だかですからね。コンシューマのゲームソフト1本買えちゃいますよ」
ケイ
「そりゃあソフト買ってもらわねえと」
玄兎
「ケイさんの立場ならまあ、そうでしょう」
ケイ
「当然。でもPB展開してたんだろ、『GURPS』も」
玄兎
「えーと、ああ、そうですね。ライト・カスタムと同梱で、1冊で遊べます売りしてますね」
ケイ
「だったらそこまでベーシックにこだわらなくてもいいんじゃねえの?」
玄兎
「コアはそうなんだけど、サプリ用にカスタマイズされてる部分があるんですよ。文明レベルとか、技能とか。なんか知らんのですが、SNEの展開は妙にオリジナル技能を追加したがるところがあるんで」
ケイ
「ああ、コアとサプリを分けてないんだな」
玄兎
「プレーンなテキストだったらいいんですが、ベーシックの一部とライトを混ぜて再編集かけてるもんだから。それで同人でオリジナルサプリ出すときに、逆に手間がかかるというか。足し算だけならともかく、引き算もあるから」
ケイ
「手間かかりすぎってか」
玄兎
「たとえばユエルしか持ってない人にオリジナルのサプリを提示すると、ユエルのここは使ってここは使わない。んでここはこう変更される……とかやるのはちょっと。人間って足し算はともかく、引き算って再構築になるんで。その辺の手間を考えると、ファンジンでサプリ出そうって気になれないというか。内輪で遊ぶには十分なんですけど」
ケイ
「まあそうだろうな。そうすると、どこが問題になる」
玄兎
「市場が活性化しない。他に遊んでいる人がいる、っていうぼんやりした認識とか情報とか、そういうのが市場を活性化させるもんですから。バンドワゴンですよね。コンシューマでも遊んでる人がいない、まあいないとまでいかなくても、いるかどうか分からない、っていうのはやっぱりその、食い付きが悪いでしょう」
ケイ
「ああ。話のネタとして遊ぶってやつとかな」
玄兎
「そうそう。だから新作は発売から3ヶ月が勝負、とか言ってるんですが。その間にどれだけお客さんをつかまえて安定的に、ユーザに遊んでるよ情報を発信させるかってのが大事と。それには新刊出すのが一番手っ取り早いんですよ」
ケイ
「スタートダッシュでコケると、新作なんて半年かからず忘れられるしな。だから攻略本だの資料本だのを連続して出しておいて、話題の立ち消えを予防するわけだし」
玄兎
「その辺の売り方はコンシューマと同じですね」
ケイ
「今のゲームはソリティアじゃないからな。仲間内で話題にできんタイトルは、マニアにしか売れんし」
玄兎
「昔はヤリコミの物量作戦を評価するような感じでしたけどね」
ケイ
「今だにヤリコミを時間さえ注ぎ込めばオッケーなデザインしてるゲームはあるけどな。ただまあ、モンハンのお陰でだいぶ、プレイヤーのスキル重視のデザインでも平気になったか。Wiiのリモコンなんかもそうだけど、だいぶゲームが身体感に帰ってきた感じがある」
玄兎
「いいんですか。そんな中でRPG作ってて」
ケイ
「まあゾーニングが違うからな。元からうちはニッチだし。いずれシフトするときも来るだろうが、それまでに納得できるものが作れればいい」
玄兎
「なるほど」
『GURPS 3版』時代のファンジン
ケイ
「ところでファンジンの方に話を戻すけどな」
玄兎
「はい」
ケイ
「ファンジンは商業を潰すか?」
玄兎
「唐突だなあ。何でまた」
ケイ
「まあ独占翻訳権については、どうしようもないとしてだよ。『GURPS』はファンジンの活動があったから潰れたのか、それともあったから支えられたのか」
玄兎
「難しいですね、それは。というか、そもそも『GURPS』をファンジンが支えているような、あるいは潰してるような背景がどこかに見られたかどうかが怪しい」
ケイ
「ファンジンは市場にタッチしてなかったか?」
玄兎
「まったくゼロと言うわけでもないし、まあインターネットが普及してから一時期は、関連サイトも随分あったわけで、一概にバンドワゴンが発生しなかったとは言えないと思うんですが。ただまあ現実的な話をすると、えーコンベンションの開催数なんかを考えると、ファンジンレベルの活動が強い影響力を持ったってことは、それほどなかったんじゃないかと」
ケイ
「商業任せだったと」
玄兎
「比較対象が『ソード・ワールド』ってのが、間違ってるのかも知れませんが。もっと小さいスケールだったら、『Shadowrun』とか『BattleTech』とか、翻訳でアマチュアが活躍しまくってたものもあるし、『TORG』なんかもそうでしたけど。そっちは検証してないんで、今回は『ソード・ワールド』との比較ってことで、いいですか」
ケイ
「まあいいか。じゃあ洋ゲーとの比較はまた今度」
玄兎
「機会があったら。で、えーと『ソード・ワールド』との比較だと、そもそも『GURPS』のキャラクターメイキングが、コンベンションに不向きだってのが大きいと思うんですが。遊び方が致命的に違うし」
ケイ
「違うか」
玄兎
「違いますね。『GURPS』は『Traveller』の系譜だと思うんですが、共通することはシミュレーターってとこだろうと。プレー時のコンセプトが実験的なもので、自分が作ったキャラクターが、その世界のその状況にあったら、どういう風に物語を書き換えるんだろう? ってことをシミュレートする装置だと思うんですよ。『GURPS』って。『ソード・ワールド』の場合は、冒険者パワードスーツを着たプレイヤー自身がいたらどうなるか? っていう感じで、違います」
ケイ
「そういう見方だから、ゲームツールじゃなくてデザインツールだっつってるわけか」
玄兎
「ですね。遊んでる人には異論、反論ありまくりだと思いますけど。ああ、でもコンプRPGで読者投稿ページとかで、ファンジンの情報が出てくると嬉しかったなあ。そういう意味ではアマチュア活動がエフェクト効果をもたらしてた部分は、やっぱり評価しないわけにはいかない、ような気もします」
ケイ
「どっちだ?」
玄兎
「作る方では、相当な数のファンジンが出てたと思います。感覚的には、たぶん往時の『ソード・ワールド』ベースの同人システムに、拮抗するくらいの数まで増えてたんじゃないかっていう」
ケイ
「めちゃくちゃ多くねえか、それ?」
玄兎
「多いですね。いや実際『ソード・ワールド』の方がどれくらいの数あったか知らんので、印象論なんですが」
ケイ
「『ソード・ワールド』の方が、多そうだが」
玄兎
「かな? 『ソード・ワールド』と同じくらいってのは、言いすぎたかも知れません。まあいいや。それは置いといて、サプリ作る人が増えれば、オフィシャルの本も売れただろうな、とかは思います。これはあれですね、前から言ってる書く人が増えれば読む人が増えるの法則」
ケイ
「自分で作るようになると、他人がどうしてるか興味が出るから、ってやつか」
玄兎
「そうそうそれそれ。批評と言うか、評価をするための目って色々あるわけですけど、やっぱり書くようになると色々考えるようになるんで、見る幅が広がるって言うのはあると思います。職業病で目が潰れることもあるんですが」
ケイ
「やり方によっちゃあ純粋に楽しめなくなるからなあ」
玄兎
「他人に迷惑かけてなければ、どう楽しんでも構わないと思いますけどね。突破すると原点回帰するケースもありますし。んでまあそれは置いといて、えーとなんだっけな。そう、サプリじゃないところで違いが有るとすると、たぶんリプレイの数じゃないかなあと」
ケイ
「ファンジンでか?」
玄兎
「ファンジンで。リプレイブームっていうか、まあ感覚的なもんなんですけど、『ソード・ワールド』だと件のスチャラカシリーズ以降、ファンジンでリプレイを発表していくってのが、かなり有ったように思うんですけどね。それに比べると『GURPS』関連は、オリジナルサプリとか翻訳なんかは強かったんだけど、リプレイの数は『ソード・ワールド』と比べて圧倒的に少なかったんじゃないかと。妖魔で増えた気がしますが」
ケイ
「その話は解析済み?」
玄兎
「印象論です。そんなにコミケに足運んでたわけでもないし、行っても売り子で動けずじまいとか、多かったでしょうが」
ケイ
「記憶に無いなあ」
玄兎
「ひどい人だ。僕はあれで何度寝込んだことか」
ケイ
「悪かった。でもあれは俺が決めた方針じゃねえんだから」
玄兎
「まあいいんですけどね。とにかくリプレイの数については、公式設定の差ってのが大きいと思いますよ。『GURPS』はルナルでハードルを上げすぎたというか」
ケイ
「そのハードルは、どんなハードルだ」
玄兎
「冒険のスケールです」
ケイ
「冒険のスケール?」
玄兎
「スチャラカ冒険隊って、サンデーアドベンチャラーってほどじゃないにしても、そこら辺にいる冒険者の話でしょう。ノベライズにしても、冒険のスケールはローカルだし。それに対してルナルは最初から、ワールドワイドというか、テーマが大きすぎた」
ケイ
「ああ、なるほどな。つまりライバルが最初から強大すぎたわけだ」
玄兎
「ファンジンの精神って、ひとつには、オフィシャルなんぞ目じゃねえぜってのがあると思うんですよ。我らこそ真の開拓者なりってか。そこを見誤ったんじゃないかって考えです」
ケイ
「どうすればよかったと思う?」
玄兎
「ロングキャンペーンは確かに大事なんだけど、それと平行してスケールの小さい、身の丈に合ったオムニバスを露出していくことですか。『ソード・ワールド』みたいなシェアード・ユニバース展開が、ファンジンを引き出すコツじゃないかと。まあ、ルナルじゃ最初の最初にミスを犯してたんですが」
ケイ
「なんだそりゃ」
玄兎
「アンディとエフィが100CPなんですよ」
ケイ
「は?」
玄兎
「いやつまりですね、100CPって『GURPS』の基本的なキャラのCPなんですよ。それがロングキャンペーンの主役で活躍しちゃうと、オムニバスで同じくらいのCPのキャラが、地道な貧乏冒険者やってるのが、ちょっと」
ケイ
「ヴェテランが世界を救っちゃうようなもんか」
玄兎
「100CPの強さがよく分かってなかった頃ですからね。100CPがヴェテランのイメージだったんですよ。実際はソードマスターくらいは有るんですけど、他のシステムは作成時の強さ、イコール1レベルですから。その辺の感覚のズレが」
ケイ
「そりゃあ仕方が無い。オーソドックスじゃなかった方が悪い」
玄兎
「アナウンス不足だったと思うんですね。25CPくらいの一般人のデータとか、駆け出しの冒険者を50CPくらいのデータを見せるとか、認識の書き換えが必要だったんじゃないかとか」
ケイ
「作ってなかったっけ?」
玄兎
「作りましたね。まあファンジンで出しても大した影響力は無かったんですけど。20部くらいしか捌けなかったし」
ケイ
「でも50CPとか、きつくねえか?」
玄兎
「そこできついと思うのが、ズレているというか。能力値14、15が横行してる方が変なんですよ。そんなのが、そんじょそこらをほっつき歩いてる方が怖い。ゲーム的にも技能の成功率が高くなりすぎますし」
ケイ
「まあそのズレは分かった。で、妖魔になってリプレイが増えたっていうのは、じゃあシェアード・ユニバースで展開したのが良かったってことか」
玄兎
「だと思います。大きいものが小さいことをする、小さいものが大きなことをする、っていうのは初歩的なストーリーモデルですし」
ケイ
「一寸法師だな」

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