[chat] 20090731#6

『GURPS 第4版』の日本語展開
ケイ
「サポート終わってちゃ仕方ないよなあ」
玄兎
「公式には終わってるわけじゃないんでしょうけどね。単に情報が僕の視野から消えただけで」
ケイ
「4版って月刊でサプリ出てなかったか?」
玄兎
「痛いこと言わんで下さい。それ原書だけです」
ケイ
「そういや日本じゃどれくらい出てんだ?」
玄兎
「ベーシックが上下巻と、魔法大全。あとワールドサプリがルナルの後継としてユエル。妖魔、百鬼の後継としてリボーンリバース。リプレイのおまけ的に出たのがソーサル……ナイツだったかアカデミーだったか、いや、カンパニー?」
ケイ
「もしかして焼き直しばっかりか?」
玄兎
「ですね。コンバートの仕方を紹介した、と好意的に捉えたいところですけど、正直それも無理な話で。ユエルの異種族データが3版ルナルとほとんど同じだったのは、ものすごい手抜き感が漂ってて。あれで本当に売る気があったのかと」
ケイ
「3版と4版ってデータかなり違うんだろ?」
玄兎
「違いますよ。能力のルール的な解釈が変わって、CPがダイナミックに変わってる部分もあります。見事にスルーされてますけど」
ケイ
「それじゃシステムぐだぐだじゃねえの」
玄兎
「ぐだぐだですね。結局、自作しました」
ケイ
「ほんと自作好きだな」
玄兎
「作ることしか能が無いですから。まあ作ることにも能力が有るかったら怪しいもんですが、『すきこそもののあはれなり』を信じるなら、まあ」
ケイ
「で、他のはどうなんだ。その、リボーンなんたらとか」
玄兎
「リボーンリバース、通称リボリバ。小説とリプレイが出て、妖魔夜行みたいに展開するのかなーと思ったんですが、掲載誌が無いんで続かない」
ケイ
「まあ、ああいうのは連載してなんぼだからなあ。定期的に書かなきゃいけないから書くんであって、作家なんて連中は書かせなけりゃ、いつまで経っても書きゃしねえ」
玄兎
「なんか恨みでもあるんですか」
ケイ
「お前のことじゃねえよ。被害妄想」
玄兎
「どっちにしろ耳が痛いことには違いない。なんてひどい人だ」
ケイ
「置いとけ。それよりゲームシステムとしては、どうなんだ?」
玄兎
「やりたいことがわかりません」
ケイ
「は?」
玄兎
「何がやりたいのかが、よく分からんのですよ。いやまあペルソナなんですけどね」
ケイ
「どっちの。ゲームのか、元の意味の方か」
玄兎
「ゲームのです。あるいはジョジョの第四部あたりなんでって、あの、怖い顔しないで。とにかく穴を指摘するなら山ほどあるんですが、たとえば攻撃能力の一本化が基本なので戦闘がワンパターンになるのは、バトルゲームとしてのデザインを考えると欠点でしょうね」
ケイ
「でもそれ前からじゃねえか?」
玄兎
「妖魔の頃からそうなんだけど、妖魔はまだバトル要素が少なかったんで。小説もホラーとキャラ物が基本で、戦闘シーンは5ページあったら御の字とかだったし。百鬼でバトルにシフトしたことで、『GURPS』の弱みがもろに露呈した形で」
ケイ
「戦闘が苦手ってことか?」
玄兎
「戦闘中に起こりうるような、現実的な細かい出来事の解決は得意なんですがね。戦闘そのものは、システムの一部であって中心じゃないので」
ケイ
「ゲームとしては致命的なんじゃないのか、それは」
玄兎
「戦闘をゲームの中核に据えるなら、確かに。というか、そもそも『GURPS』はゲームのためのシステムじゃありませんから。あれはゲームデザインのためのシステムです。戦闘なんか飾りですよ。偉い人にはなんとかってやつです。ゲルググ?」
ケイ
「ジオングだ馬鹿」
『GURPS』の戦闘
ケイ
「しかしそこまで言うか」
玄兎
「いや、ちゃんとやれば戦闘も面白いんですけどね。コンディションがどんどん変化するところが『GURPS』の戦闘の面白味で」
ケイ
「コンディションって、朦朧とか気絶とかだっけ?」
玄兎
「そうそう。朦朧とか。まあ気絶したらほぼ確実に戦線離脱ですけど。あとはもっと頻繁に発生する、衝撃ルールが一番の肝です。ダメージを受けた次のターン、受けたダメージ分のポイントが判定のペナルティになる、という」
ケイ
「ああ、ジリ貧ルール」
玄兎
「そうとも言う」
ケイ
「あれこそ手間じゃねえか?」
玄兎
「手間ですね。でもあれがあるから戦闘が単調にならないんですよ。長引く原因でもあるけど」
ケイ
「ってと? リカバーの話か?」
玄兎
「そうそう。『Shadowrun』でもコンディションモニタでペナルティはあるんだけど、あれは回復するまで永続するでしょう。『T&T』の集団戦で、大負けしちゃったときに近くて、あれこそジリ貧ですわな。ローリングストーン。もっとも『Shadowrun』の場合は、そこから戦術を変えるための武器選びとか、別の次元で楽しいコンバットプランニングがあるわけですが」
ケイ
「だな」
玄兎
「『GURPS』の場合は、1回の攻撃による衝撃ペナは、1ラウンドだけです。だから1ラウンド凌げば再起できる。この1ラウンドをどう凌ぐのか、って部分でスリリングなダイスロールが発生するわけです。『BattleTech』の熱管理にちょっと近いですかね」
ケイ
「なるほど。ボクシングとかプロレスっぽいな」
玄兎
「どっちもアメリカじゃ人気のスポーツですよね。んでまあ、更にダメージが大きければ跳ね飛ばし、そこから転倒判定なんかもあります。転倒したら衝撃ペナの他に転倒状態によるペナルティもあるし。叩き武器は防護点で防がれやすいんだけど、ダメージレートが高いんで、跳ね飛ばして転倒を狙っていくようなブルドーザー戦術があります」
ケイ
「転倒してもすぐ起き上がれるんじゃなかったっけ?」
玄兎
「うちでは《軽業》で跳ね起きられるかっての有りますが、ありゃローカルです。それにあれも衝撃ルールありきですんで。とにかく普通は転倒からは膝立ち、立ち上がり、で2秒かかります。1ラウンド1秒なんで、一度コケたら大変な騒ぎです」
ケイ
「そこだけ聞いてると、面白そうなのは気のせいか?」
玄兎
「いや、だから面白いんですって。上級戦闘を使えば、更に位置取りでも駆け引きが発生しますし、モール戦士に壁をやらせて、相手の後ろに《べたべた》かけといて、後退防御したらひっかかったなエナジードレインとか。ちなみに後退防御しなかったら跳ね飛ばし攻撃のハメになります。まあ避ければいいんですが。他には武器の相性なんかも、色々有って」
ケイ
「たとえば」
玄兎
「そうですね。えー、武器にはそれぞれ攻撃範囲が決まってるわけですけど、たとえばクオータースタッフは距離1と2、ブロードソードなんかは距離1の固定、ダガーは距離0と1。そうすると、クオータースタッフと戦う時ブロードソードは恐ろしく分が悪いわけですが、ダガーの場合は相手の懐に飛び込んで、ゼロ距離で攻撃すれば勝ち目はあるわけです」
ケイ
「ほうほう」
玄兎
「で、更にそこでゼロ距離に踏み込んだ時、ただ攻撃するんじゃなくて、まず先に組み付いて相手の行動に4ペナを与える、そこから更に押し倒して転倒させる、押さえ込んで動きを封じる、なんてオプションもあります。まあ押さえ込みは体力勝負なんで、叩き武器持ってる相手にナイフで戦うキャラが勝てるかは怪しいもんですが。しかもナイフで攻撃するなら片手分で3ポイント、相手の方が有利になるし」
ケイ
「いや細かい数字は分からんが」
玄兎
「でしたね、すみません。えーまあそんな具合で、ルール的には色々とサポートされてるんですよ。問題は……いや問題といっていいかは分からんのですが、戦闘を楽しみたい人にとっての問題は、これプレイヤーが使おうと思わないと、まったく使わないでも遊べちゃうところで。攻撃、殴る、当たった、ダメージなんぼ、だけでも戦闘が出来ちゃうんですよ。そこは軽さでもあるんだけど、単調でもあって、だから『GURPS』の戦闘は面白く無さそうに見える」
ケイ
「必殺技みたいなのも、無いしな」
玄兎
「攻撃属性の問題もあるでしょうね。普通はまあ、スペシャルパワーを属性分けして、弱点とか耐性とかのデータを増やして、その辺の戦術を拡張するでしょう。でもまあ現実にそういう属性ってのには、厳密な線引きがほとんどありませんから。まあ衝撃、切断、刺突のダメージタイプで分けるくらいで」
ケイ
「逆にそういうダメージタイプを扱ってるシステムは少ないんだけどな。その辺は『GURPS』はユニーク」
玄兎
「まあ一応、3版時代のコンバットマニューバ、4版で言うテクニックを使えば必殺技っぽいことは可能なんですが。コンビネーションとか。でもまあ基本、現実世界で人間が行えることをベースに設計されてますんで、リアルではあるけど派手さには欠けます。それはもう、汎用システムの宿命」
ケイ
「そういやd20を汎用展開してたときの『D&D』3版も、なんかそんな感じだった気がするが」
玄兎
「3版では汎用システムのベクトルを持って、テクニックを一般化してたのが、4版になってまたクラス別に割り振られる形になったみたいで。汎用化って、そういうもんなので」
ケイ
「オプション探すのいちいち面倒だったよ」
玄兎
「まあ、『GURPS』もそんな感じです。戦闘はまだ、まとまったパッケージなんでましなんだけど。技能から行動を逆算しなくちゃいけないケースもありますんで、正直あれは手間です」
ケイ
「SNEの『Shadowrun』みたいな」
玄兎
「いやそこまでカオスじゃない」
ケイ
「そうか」
玄兎
「まあとにかく、あんまり突拍子もないキャラクターにしなければ、白兵戦は普通に楽しめるレベルには達してると思います。あと禁断の【我慢強い】、4版なら【痛みに強い】さえ使わなければ」
ケイ
「【我慢強い】って、衝撃ペナルティを無視するやつ?」
玄兎
「そうそう。スピーディーにはなるし、えらくパワーアップもできるんだけど、ぶっちゃけ『GURPS』の戦闘の面白さは半減します。で、まあその辺が百鬼、リボリバと継承されちゃった欠点かなあ、とか」
ケイ
「さっきのあれでいくと、コンディションが変化しないからつまらんと」
玄兎
「単なる削り合いなんですよ。だらだらとダイス転がすだけのゲームが展開される。そりゃあロールプレイのひとつもやって、演出してなきゃやってらんねえわな、ってくらい」
ケイ
「耳が痛いのは何でだろうな」
玄兎
「自業自得じゃないですか」
ケイ
「可愛げのない」
玄兎
「あっても嫌でしょうに」
ケイ
「まあな」
玄兎
「だからまあ、そういうのが嫌なんで、妖魔夜行のときからもうずっとなんだけど、戦わない話の方が多かった。戦わないシナリオの作り方ってか、物語仕立てにするって方法は、たぶん妖魔でトレーニングしたのが大きいと思いますね。ファンタジーなら旅の再現だけでも面白いんだけど、現代社会だと再現するだけじゃ世知辛くなっておしまいなんで」
ケイ
「『Traveller』は?」
玄兎
「あれはどうなんだろう。あれもでも旅するだけで面白いくちですけど、世知辛くもありますか。うーん」
ケイ
「どっちだ」
玄兎
「えーまあ僕がレフリーやるときは、あんまり物語性なんてのは考えてなかったと思います。キャラが弱いから普通に遊ぶだけでドラマになったし。単に若かったってのもありますけど」
ケイ
「まあ、とにかくそこがリボリバ、だっけ? の欠点なわけだ」
玄兎
「ですね。コンセプトはコンバットっぽいんですけど、肝心の戦闘について、どうも『GURPS』の強みを丸ごと叩き潰してる。おかげでたくさんダイスが振れるだけ、ってゲームに」
ケイ
「他には?」
玄兎
「山ほどあるんですけどね。スペシャルパワー使うためのゴーストは、どんどん呼び出しにくくなってくとことか。まあワールドセットのパワーバランスを考えると、社会にあんまり影響を及ぼさないようにするための道理としては分かるんだけど、お陰で超人パワーが見せたいのかヒューマンドラマをやりたいのか、さっぱり分からんことになってます」
ケイ
「ちゃんとコンセプトワークしてねえわけだ。グダグダじゃねえか」
玄兎
「グダグダですね。まあ正直なところ、今からリボリバ遊ぼうと思ってる人がいたら、素直に『シルバーレイン』を薦めます。リボリバの小説のファンなら止めませんけど、そうでもなけりゃあ『シルバーレイン』の方がまだ、メディア展開してる分だけ追いかけやすいし。ってか、ほぼ同じコンセプトで『GURPS』縛りから解放されて、のびのびデザインされてますんで、あれもわりと楽しめると思いますよ。考え無しに遊んでると、どんどんワンパになるんですが」
ケイ
「えらい酷評するなあ。そんなにダメだったか」
玄兎
「まあ、諸々考えたり、話を聞いたりすると当然かなーって感じもするんで、あんまり酷評しても悪いんですが。そもそも『GURPS』みたいなタイトルを、1人で延々十年以上もサポートしろとか、よっぽどの人間でもなければ厳しすぎるだろうし。しかも自作ならともかく、翻訳してるだけなんだし」
ケイ
「お、いきなり擁護に回った」
玄兎
「いやあ、3版時代、友野センセの連載には本当にお世話になったんで。気持ち的にはお疲れさまでした、なんですが。ただまあ、独占翻訳権ってやつがですね」

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