昔、というほどじゃないと思うんだけど、ネットで発表されてた同人システムで『死に急ぐ奴らのバラード』ってのがあったんですよ。(TRPG.NETにもページがあったんで、ご存知の方も多いとは思いますが)
昔のマフィア/ギャング映画とか、ちょっと古めのハリウッド的な……タフな男とセクシーな女が活躍するような映画の世界で遊ぶゲームで、まあ僕はこれが大好きだったんですが、気が付いたらサイトが無くなっていて、むぅ、と。
いやまあ全ページ保存してあるし、身内で遊ぶために特定世界観に合わせた海賊版も作ったりしてあるんで個人的には困らんのですが、みんなに見てもらえないのは残念だなぁ、という。
“ファッキン・チップ”ってルールが面白いんですよ。
名前はちょっとアレですけど(笑)
偉大なるファッキン・チップ
『死にバラ』最大の特徴は“ファッキン・チップ”のルールでしょう。
ロールプレイを演出するカードで、このカードの効果は常に“必ず”演出しなければならないという、恐ろしい威力を持っています。
文面がちょっとエキセントリックなんですが、そこもまたこのゲームの妙味なので、そのまま紹介してみましょう。
ファッキン・チップは、ファッカー自身がイベントを誘発できるカードであり、
死にバラのシステム最大の特色だ。
ファッキン・チップは全部で50種類有り(2002年3月現在)、
死にバラらしいイベントが各カードに記されている。ファッカーは最大で3枚までの手札を有し、
ゲーム中いつでもファッキン・チップを出してイベントを起こせる。
ただ、ひとつだけ制約があり、それは自分自身に対してカード効果を適用できない。
カード効果は、他人(ファッカー、NPファッカー)に対してのみ適用されるのだ。ファッキン・チップを使われ、その対象となったファッカーは、
甘んじてその内容を受け入れ、演出として活かさなければならない。
ファックする者の義務である。
セッション中、単独行動をするファッカーは、他のファッカー全員の注目を浴びるため、
余計にファッキン・チップの対象となる可能性が高い。
逆に言えば、他人の単独行動により舞台裏に身を置いたファッカーも、
ファッキン・チップの使いどころを考える楽しみがあり、暇は感じないはずだ。死にバラに、ヒーロー・ポイントという卑俗な概念はない。
ファッキン・チップがその役割を果たすが、自分自身に対しては使えない。
他人のロール・プレイ、セッションの流れを見た上で、それに介入できるだけだ。
自分のチンポを自分でシゴくな。
まずは相手を感じさせろ。濡らせ。そして、相手の愛撫には目一杯に応えろ。
それが真のファッカーというものである。また、ファッキン・チップは補充も行える。
ただし、手札の枚数は3枚が限度である(ファザーのみが5枚まで)
補充の方法は、お前が勝手に考えてくれ。
GMのもつファッキン・チップの手札の数、補充のタイミングも好きに決めろ。また、セッション中に死亡したファッカーは、即座に手札を最大数まで補充できる。
カードを出すという形で、以後もセッションには参加することが可能となる。
ファッカー死亡後も、プレイヤーに暇な思いをさせてはイケないのである。
ああ、言い忘れてましたがこのゲーム、PC のことを“ファッカー”、セッションをプレーすることを“ファックする”、と言います。『Shadowrun』の“ランナー”、“ラン”に相当するモンだと思えば問題ないでしょう。
(もちろん、この言葉の持つニュアンスが、このゲームを表しているわけですが(笑))
また、このファッキン・チップの内容も、例えば
「ジャミング」
奴は引き金を引いた!
しかし
銃口は火を吹かなかった!
「Fuck!ジャムりやがった!!」
奴の銃は弾詰まりになる。
非ジャム効果の銃には無効。
とか、
「非情なる運命」
その時、奴は気付かなかった。
己の愛する者に忍び寄る
危険を…!
奴の愛する者が
どこかで危機に陥っている。
現時点ではそのことに気付かない。
ってな具合で、色んなドラマを演出します。
……と、まあここまではどっかで聞いたような話なんですが。
ファッキン・チップの面白さ
こいつの面白いところは、なんと言っても
ただ、ひとつだけ制約があり、それは自分自身に対してカード効果を適用できない。
カード効果は、他人(ファッカー、NPファッカー)に対してのみ適用されるのだ。
この要素でしょう。
基本的に自分には使えないので、生存戦術を考えるのなら有利なカードは自分を助けてくれそうな PC に、不利なカードは自分にとって危険な NPC に使えば、ドラマを演出しながらゲームを有利に進行させることができます。そしてルーニーなゲーマーは、不利なカードを味方の PC に、有利なカードを NPC に使うかもしれません!
通常、そうしたルーニープレーには予防線を張るところですが、ファッキン・チップにそんなもんはありません。
この部分をご覧ください。
ファッキン・チップを使われ、その対象となったファッカーは、
甘んじてその内容を受け入れ、演出として活かさなければならない。
ファックする者の義務である。
ダイナミックです(笑)
むしろ逆境に陥り、それを跳ね返せてこその主役ってモンでしょう。
ハリウッド映画ってのはそういうモンです(笑)
また、もう一つ。
また、セッション中に死亡したファッカーは、即座に手札を最大数まで補充できる。
カードを出すという形で、以後もセッションには参加することが可能となる。
ファッカー死亡後も、プレイヤーに暇な思いをさせてはイケないのである。
この要素も重要です。
ほとんど全てのゲームで、PC が死亡すれば PL はヒマになります(詳しいことは知らんのですが、たぶん現在でも大抵のゲームで解決されてない問題なんじゃないかと)。
ドラマチックな死にロールってのは、ある種の美学があるモンなんですが、ゲームでそれをやるとその瞬間はいいんだけど、シーン終わるとヒマになるんですよね(笑)
かといって毎度の如く死んだはずのキャラが生き返る演出(『魁!男塾』とか『聖闘士☆星矢』とか)をやってちゃ興醒めですし、そうすると事実上、死にロールってのは不慮の事故で PC が死んじゃった際に、しょーがなく演出するようなモノになってしまいます。
でもそれじゃあちょっと、もったいないわけです。
死に様ってのは確かに一つの美学です。それは現実には二度経験することの出来ないもので、だからこそゲームの中でやってみたい、という願望も分かります。
(死にたがりは困りますが)
このゲーム、その問題点をあっさりクリアしちゃいました。
さ、あなたのファッカーは死んでしまいました。
もう自分で何かを成し遂げることはできません。
でも、あなたの手元にはファッキン・チップが残されています。
自分を死に追いやった奴に、怨念を込めて復讐するもよし。
愛する誰かを守るために PC を走らせるもよし。
何度か PC で遊んだときは、〈ルーキー〉(町のチンピラ。解説では「新入りのハリキリ・ボーイ。死に急ぐその生き方も若さゆえなのか?」とあります。特典は「二丁拳銃をペナルティ無しで射てる」だけ(笑))で特攻して死に、惚れた相手(男女問わず)を守るために様々な“偶然”を演出するプレーをしてました。
(そればっかりじゃないけどね)
[例1:今度は俺が守る番だ、ブラザー]
ブラザー(兄弟分)の侠気に惚れこんだのなら、ブラザーのピンチに敵に【ジャミング!】【奴を狙う銃口】【災いは突然に】を使って救援するのはとりあえず基本ですな。
そして「ブラザー、今だ!」とか心の声演出をしたいところ(笑)
[例2:頼むよブラザー。俺の仇をとってくれ]
ブラザーが自分を殺した奴と遭遇したところで【怒りの拳】を使って殴ってもらったり、【殺意の凶弾】で一撃してもらったりが基本。
あるいは自分が死んだ瞬間にチップに恵まれていれば【奴が来た】でブラザーを呼んで【男たちの挽歌】で一騎討ちしてもらうとか。それでもし負けそうになったら【立ち上がれ】でガッツを見せてもらうとか、[例1]と同じように【ジャミング!】【奴を狙う銃口】【災いは突然に】とかで妨害できるとすげぇナイス。
その場合はやっぱり虫の息で観戦しといて、チップ使った瞬間に「後は任せた」演出で死亡、チップ補充してピンチに備えるとかですかね(笑)
[例3:アイツのこと、頼むよブラザー]
自分の惚れた相手がピンチになってるところに、全然別の場所にいるはずのファッカー(できればブラザー)に「奴が来た」を使って無理矢理助けさせる(笑)
助けようとしなかったら【男に二言なし】【交わされた友情】【スポットライト】……あるいは【恋の芽生え】とか(笑)、とにかく手元にあるチップを駆使して何が何でも助けさせるのが吉。
ま、どれもこれも手持ちのカード次第なんだけどね。
こういうゲームもたまに遊ぶと面白いです(笑)
余談
基本的には悪ノリで遊ぶゲームなんですが、ファッキンチップの内容に少し手を入れたり、Soul や Taste のデータに手を入れれば、コアルール自体はシンプルなのでどこでも遊べてステキです。
ちょっと改造しては魔界都市〈新宿〉を舞台に超伝奇バイオレンスな世界を遊んだり、自作の荒廃したアーバンアクションを遊んだりしてました。
失くなってるのが残念で仕方がない。
うーむ。
……と、アーカイヴを叩いてみたら出てきたんで、紹介しておきます。
TRPGシステム「死に急ぐ奴らのバラード」
(文字エンコードが化けてるかもですが、日本語(Shift_JIS)でいけます)
このゲーム、ファッキン・チップのお陰でシナリオは徹底的に荒れるんだけど、その不安定な状態から体勢を立て直しつつ状況を進行していくのが面白いんですよ。
ちょうどシナリオハンドアウトとは逆位置にある(なんせ過去設定をチップで後付けされたりしますし。しかも誰かの手によって勝手に)ようでもあるんですが、テーブルを囲む全員でシナリオハンドアウト(コネクション情報など)を作っていくと思えば、それはそれで面白いんじゃないかなァ……とか。
可能な限り GM と PL の関係をフラットにしたいというのが僕のスタンスなんで、こういう PL が GM の領域に踏み込んでくるような、GM と PL に運用の差がないフラットな状態を作るアプローチ、ものすごく好きなんです。
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