黒澤映画の傑作に『七人の侍』ってのがあります。
メチャクチャ有名ですな。見たことなくても名前くらいは知ってるでしょう。
内容については Wikipedia でも何でも、検索すりゃいくらでも出てきますんで、まあ見なくてもいいです。
面白いよと推薦できる名作です。ただしモノクロなんで目が疲れます。
古い TRPG の雑誌記事なんかでは、よく「黒澤映画のシナリオは TRPG に最適」とか「勉強になる」的に書かれていたもんなんですが、でも実際のゲームで『七人の侍』って完全再現されることってないんじゃないかって気がしてるのですよ。
なんでだろね？
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『七人の侍』の評価は色々あるわけですが、とにかく面白いのは用心棒たちの個性と迫力、それにドンピシャにはまる駆け引き、下克上のカタルシスに、端々で見られる農民のしたたかさと、エンディングの物悲しさ。そういうモンではないかと。
確かに全部盛り込むのは大変なんですが、シーン再現から考えても、ほとんどお目にかかったことがない演出が一つあります。
農民と用心棒の共闘。
たった七人の用心棒に「野武士はみんな倒してくだせぇ」ってのは無理な話で、映画の中でも農民たちを武装させ、村を砦にしてまず守ることから始めます。そして野武士の砦を急襲し、一人の用心棒を失いながらも一致団結、そして迫力のある決戦のシーンにつながっていく。
全部やろうとすると、それだけで連続した 3～4本のシナリオはラクに書けるだろう奥行きのあるストーリーなんですが、なんでかこういうシナリオって見かけません。
この「農民が困り果てて用心棒を傭う」って構図そのものは、冒険者を傭って仕事をさせるソード＆ソーサリーRPGの黄金パターン、その原型みたいに言われるんですが。
「ゴブリン退治してくだせぇ！
洞窟に潜りました。
財宝見つけました。
ゴブリン殺しました。
ありがとうごぜぇますだ！」
なんてもったいない換骨奪胎！
ゴブリンの群れに村が襲われるシーンとかあってもいいじゃないか。
そこで拙劣ながら農民指揮して奔走する冒険者とか、かっこよくね？
僕はそういうシチュエーションに燃えます(笑)
基本的に、正面衝突しても勝ち目のある敵しか出ないじゃないですか。もちろん倒すためには相手の弱点を突かなきゃいけない、その弱点は××というアイテムだ、なんてのもありますが、ソレさえあれば勝てる敵であり、そのアイテムも挑めば九分九厘、手に入るわけじゃないですか。
まあ「ゲームなんだから仕方ないだろ」って話も分かるんですが、こう、都合よく 1レベル冒険者の前には常にゴブリン退治の仕事が舞い込むようになってるってのもさ。興醒めじゃありません？
「村人総出で罠仕掛けてバリケード作って、敵の侵入路を限定しておいて、
更にその侵入路には村人の投石攻撃とかが待ってて、
いくらか弱らせたところで低レベル冒険者が普通なら勝算のない強敵に挑む」
そんなシチュエーションも、全然アリじゃないかと思うわけです。
まあ、直線的なデータのゲームだと「レベルが高い＝防護点が高い→投石攻撃じゃ傷一つ付かない」なんて構図が成立して、全然ダメだったりしますが。そもそもバリケードなんか踏み破っちまうぜヘヘン！ とか言われるとアウト。
もちろんそういうのは、敵に合わせて対策を講じればいいダケですが。
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で、これをやるにはどうしても必要なものが一つあるんですよ。
村人――つまり NPC がね、使えないといけない。
TRPG のシナリオに出てくる NPC ってさ、ほとんどが単なる情報源じゃないですか。アレ見ると「未だに『ドラクエ』引きずってるのか」って思っちゃうんですよ。村人は「ここはハマジリの町です」って死ぬまで繰り返さないとダメか？
GM はプレイヤーが NPC を運用することを嫌う傾向がある……らしいですね。そういや水野氏も、クリスタニアのリプレイで「NPC は必要なことを必要な場面で喋るだけでいい」みたいなことを言ってたっけ。
でも現実問題、村が滅ぼされるよ、強い用心棒なんか傭う金もないよ、そんなに腕ききじゃないけど戦ってくれる用心棒を何人か雇ったよ、でもそいつらに任せただけじゃ村はやっぱり滅びるよ……ってなったら、村人の中には戦おうとする人も出てくるんじゃないですかね？
若い狩人とか、力自慢の大男とかさ。
もちろん彼らは“井の中の蛙”に過ぎないんだけど、村の外の世界を知らない分だけ自信もあるし、恐いもの知らずだし。
そういう人間だっていると思うんだけど、出てこないんですよね、滅多に。
しかも雇われた冒険者の方も、何故か依頼を受けた時点でもう、自分らだけで解決することしか考えないでしょ。
なんでやねん、て思うんですよ。
特に駆け出しの冒険者なんてすぐ死にそうなモンでしょ。
生き残るために何でも使ってやる、くらいに考えませんか？
（最初から PC は超人で、村人なんぞとは懸け離れた存在として設定されてるゲームでは、どーしようもありませんが）
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副題「NPCの戦略配置」
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