[chat] 20100731#5

ジェネレーションギャップとユーザにとって特別なドラマの話

シノフサさん(仮)
「旦那、しゃべりすぎ(笑)」
玄兎
「いやまさか電池切れてると思わなかった。ICレコーダは静かだから困る」
シノフサさん(仮)
「でもうるさいと気になって喋りにくいし」
玄兎
「そう? まあ慣れてないと、そうなのかも。テレコのシュルシュル言う音が嫌いって人はいたし」
シノフサさん(仮)
「結局、蓬莱学園のシナリオは旦那が作ってGMもやってくれることになったってことでOK?」
玄兎
「まあ間違ってはいないんだけど。サタスペそのまま移植しようにも、システムの堅牢さに支えられたサタスペと、放任主義の蓬莱とでは、やっぱり注意しなくちゃいけないところも色々あるし。その辺は一回やってみるから見覚えてもらうとして。それよかあれだよ、蓬莱に限らず、シナリオメイキングガイドみたいな話は、色んなアプローチしないとなー、みたいな気がしてて。シナリオのフレームワーク作ったり、ゲームマスターの振舞いからオブジェクト指向デザインの項目作ったり。とりあえずストーリードラマ物を殺したい」
シノフサさん(仮)
「また物騒なこと言ってるし」
玄兎
「ハリウッド型か、さもなくば少年漫画のストーリーフレームの話は、いい加減終わらせたい。そして忘れさせたい」
シノフサさん(仮)
「ほんとにパターン嫌いだよね、旦那」
玄兎
「パターンが嫌いなんじゃなくて、パターンに従えって言ったり言われたりするのが嫌いなの。パターンがあるよ、こういう構造だよって話はするんだけど、それに従えとは思わない。むしろぶっ壊してもいいじゃん、くらいに考えてアプローチするくらいでいいと思う。他の研究ベクトルもあるって話をしたい。セッションっていうパッケージで遊ぶだけで負担になってるのに、ストーリー作ってドラマ語ってオチ付けろとか、面倒くさすぎるし。しかもこれ、世代間ギャップを助長しかねないじゃんか」
シノフサさん(仮)
「ストーリーが鉄板だと、後はキャラで遊ぶしかなくなるもんね。そうするとキャラとシチュのパターン知らないと話についていけなくなるし」
玄兎
「シノもそういうことある?」
シノフサさん(仮)
「あるある。超ある。超ジェネレーションギャップある」
玄兎
「個人的にはキャラが鉄板で、ストーリーが可変な方がいいんだよね。超展開とか容認できちゃうような。そういう方が、ジェネレーションギャップなしで遊べるし。少なくとも今のTRPGのデザインモデルは、世代差の少ないペルソナシナリオばっかりになってて。あのね、『D&D』4版の凄さっていうのは、ゲーム性を遭遇にぶちこんじゃったダイナミズムにあると思うわけ。あれはロールプレイについて職掌を果たすこと、てコンセプトにしてるみたいだから、シナリオも、三つの遭遇を並べて間につなぎの話があればいいとか、相当ダイナミックなデザインが許容されるようになってる。目に見えるリソース管理ゲーム、ボードゲームライクなデザインってのは、ジェネレーションギャップのハードルを超えるのに都合がいいんだ」
シノフサさん(仮)
「あれ、でも旦那って『D&D』嫌いじゃなかったっけ?」
玄兎
「嫌ってるというか、避けてるだけ。それに嫌いなのと評価しないのは別だよ。わりと最近になってから意識するようになったことだし、お前が言うなって言われそうだけど。まあそういう事情とは別に、ウィザーズ・オブ・ザ・コーストはTRPGメーカーとしてはズバ抜けた体力があるようだし、商品展開の早さなんかも羨ましいくらいだし。そんなわけで個人的にはバトルゲーって趣味に合わないんだけど、客観的な評価はむしろめちゃくちゃ高いんだ。まったく羨ましい。いやむしろ妬ましい(笑)」
シノフサさん(仮)
「いきなりブラック化(笑)」
玄兎
「いやさー、国内の『ガープス』の展開があまりに不甲斐なくてさー」
シノフサさん(仮)
「(笑)」
玄兎
「まあその妬み嫉みは置いといて、話を戻して。ジェネレーションギャップの打破については、『ガープス』の方向性でも別のアプローチが可能だったと思うんだけどね」
シノフサさん(仮)
「どういうこと?」
玄兎
「あるキャラクターを想定して運動したとしても、マスタリングとしてはユニークデータ上の挙動に沿って処理していけばいいから、キャラの元ネタについての知識は、まったくユニークデータを持たないゲームに比べて少なくていいんだよ。その分、ジェネレーションギャップを縮小できるって話」
シノフサさん(仮)
「ちょっと待って。ユニークデータって何?」
玄兎
「あ、ごめん。個性とか人格とか、『ガープス』で言うところの特徴のこと。思ったとおりの、理想通りのキャラクターっていうのは早々作れたもんじゃないんだけど、理想に近くあろうとすることは出来るし、ルールで管制されることで遊びながら理解してもらうキッカケにもつながる。ユニークデータがシステム側で管理できないと、それはつまり他の参加者のイメージとのズレがあっても、プレイヤーの言ったもん勝ちになっちゃって対話のチャンスが無いんだよね。元ネタを知らなければ、それだけでもうイメージが断絶しちゃう。それが管理されてることで、ユニークデータを通じて対話ができるって話」
シノフサさん(仮)
「そうすると、ナラティブロールはどうなるわけ? 『ガープス』のデータじゃナラティブロールの割り振り出来ないでしょ?」
玄兎
「完全に不可能なわけじゃないけどね。まあ、やらない。ていうか、仕切りなおしてからは、そもそもナラティブロールが必要ないか、あるいは自主的にナラティブロールを取りにいく遊び方の話をしてるわけだから」
シノフサさん(仮)
「あれ? あ」
玄兎
「これについては、実は『マギウス』のいくつかのタイトルがチャレンジして失敗してるんだけど、まだ研究の余地がある話だと思ってて。まあいいや。うん。今日はものすごい喋らせてもらったから、疲れたでしょ。まさか誘導因子と魔術とユニバーサルデザインの話までさせてもらえると思ってなかったし。今日は終わる?」
シノフサさん(仮)
「うん。でもシナリオデザインの話は聞きたいし。ちょっと休憩入れていい?」
玄兎
「じゃあそれで」
シノフサさん(仮)
「そろそろいい? さっき言ってた別の研究ベクトルとかって、何?」
玄兎
「ハリウッド映画のデザインフレームで言うと、たとえば従来型のロードムービーモデルなら、ひとつにドラマカーブに沿った演出をすること、そしてカーブの極点にするために、時間経過に合わせてポイントを打つわけだけど。TRPGのシナリオデザインの話だと、未だにこのポイントの打ち方について、数値分析的な解釈が語られてないのは何なんだろうと思う。ドラマチックな演出をストーリードラマでやれって言うからシナリオデザインが大変になるんであって、そこを単純な行為判定の数理調整だけで演出できるって考えはないのか、とか。サイコロを振るときのドキドキ感、緊張感をもっと有効活用すれば、極端な話、ストーリードラマシナリオなんか無くたって楽しめるんじゃ? とか」
シノフサさん(仮)
「ドラマチックな演出をドラマでやらないって可能なわけ?」
玄兎
「TRPGの性質を考えれば、不可能じゃないと思うよ。つまりテクスチャの貼りつけと貼り替えなんだけど、ドラマ的な意味を後から割り当てる、編集にかけることで、大した意味のなかった行為判定にドラマ的な意味を割り振ったりっていうことは、TRPGなら可能だと思うんだわ。シナリオクラフトは、このテクスチャのコントロール技術によって成立してる。まあ正直そんなのは小手先の話で、たぶんシナリオデザインに対する従来のアプローチの細密化、連続体力学とか構造工学的アプローチの範囲に収まってるんだけど。もっと別の研究ベクトルもありうる。シナリオデザインについてこれだけ語られてきた理由はなんだろう? て考える」
シノフサさん(仮)
「ゲームマスターの負担軽減でしょ?」
玄兎
「そうそう。でもゲームマスターの負担になってることって、何もシナリオデザインだけじゃないでしょ。シナリオデザインが負担になってるのも、大きな要件はそれにストーリードラマが求められてるためでさ。イベントパッケージを並べるだけでもシナリオは出来るんだけど、そこにユニークなドラマを求められるから、大変。でもさっき出た『D&D』なら、三つの遭遇で済ませることだって出来る。シナリオクラフトなら行為判定とプライズの累積だけで語ることも可能。ゲームマスターに優れた表現者であれ、て求める方が酷なんだと思う。それはリプレイの出来が良くなったことがマイナスに影響しててさ。部外者の勧誘のために使われた、今でも部外者を勧誘するために使われることのある、物語の主人公になれる、ていう文句に誠実に対応しようとした結果とも言えるんだけど、それが結果としてデファクトスタンダード化して全体の負担を押し上げちゃったりもしてるわけ」
シノフサさん(仮)
「ユニークなドラマは必要ないって話?」
玄兎
「そう」
シノフサさん(仮)
「そうなんだ(笑)」
玄兎
「て言うかね、実はユーザにとってユニークなドラマなんて簡単に作れるんだよ」
シノフサさん(仮)
「それはさすがに嘘だと思うなー(笑)」
玄兎
「(笑)そう思うでしょ。でも嘘じゃないんだよ。方法は簡単でね、セッションをリプレイ化すればいい。たったそれだけの話。年がら年中アウトプットしてる僕らにしてみれば、そうか? と思うような話だけど、そうなんよ。読み物として客観視出来るコンテンツになってるっていうのは、実は物凄く特殊でね。なんてことないセッションでも、そうして形を残すだけで、特別なものになる」
シノフサさん(仮)
「ペテンくさ(笑)」
玄兎
「(笑)まあ否定はしないけどね」
シノフサさん(仮)
「お、真面目。そんじゃさ、それがそうだとしても、リプレイ書くのって大変じゃない?」
玄兎
「もちろん大変だよ。でもダイジェストリプレイとか、ニュースペーパーみたいな形とか、フォーマットは色々ある。これまでそっちの研究はまったくされてこなかったというか、言及されてきてなかったんだけど、物語を特別なものにするには、セッションの、プレイの記憶を再生、リプレイ、想起させるマジックアイテムがあればいい。だったらユニークドラマを体感させる方法は、セッション本体についての研究だけじゃなく、リプレイとかセッション外にあるものを研究するって方法もある。たとえばリプレイのパラテクストとか互換テクストとかの方法論を研究するとかね。それはレビューや批評を容認する土壌にもなるし、相対的にTRPGに関われる人間を増やすことにもつながる。生真面目な人はゲームで語れよって言うだろうし、正直邪道くさいとは思うけど、そんな考え方もある」

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