[chat] 20100104#x8-エチュードの楽しみ

エチュードの楽しみ

ケイ
「しかし、TRPGの楽しみってのは、それだけか?」
玄兎
「もちろん違いますよ。根本的なところではあるんですが。逸脱すること、突破することの楽しみの正反対の座標にも、楽しみが有ったりします」
ケイ
「逸脱しない? 予定調和か」
玄兎
「ザッツライト。それです。この辺はだから、完全にエチュードの楽しみになってくるんですけどね。この極点に、ロールプレイ評価ルールってのがあります」
ケイ
「おい。ちゃんと話せ」
玄兎
「じゃあ、まずはエチュードから。エチュード、アドリブ、即興劇。古典芸能の世界に目を向けると、能や狂言はその元に散楽がある。猿楽でも良いですが。猿楽、猿真似、物真似。物真似芸。物を真似る芸。物とは自分ではないもののことですね。自分ではないものの真似をして、なりきって、それを見る人に伝える。これが演技、演じることの根源にある。それに足りないものは、台詞で名付けをして、補助をする。くさびら等は、まず山伏がそれをくさびら、キノコだと言うことでキノコになる。これはまっただ人体のようなくさびらじゃ。キノコの演技になる。ぼろんぼろ。ほいほいほいほい」
ケイ
「おい?」
玄兎
「ああ、潜りすぎました。ちょっと戻って、つまり演劇ってのも相手に何かを伝える表現、コミュニケーションなわけです。コミュニケーションの喜び、楽しみって何かと言うと、それは意図が正確に伝わること、理解できること。まとめて情報の共有を実感することが、やっぱり第一にあるわけです。よくコミュニケーションをキャッチボールに例えられますが、意図を伝えること、正しく伝わるようにコミュニケーションをするってことは、キャッチボールで言えば取りやすいボールを投げる、てやつですね。物真似芸であれば、わかりやすく情報をまとめて伝えるってことになります。どういうボールが取りやすいのか、どういう情報が伝わりやすいのかっていうと、それがパターンということになります」
ケイ
「パターンなあ」
玄兎
「嫌な言葉ですよねえ、パターン。でもまあ考えてみると、パターン、定型、決められた型、かまえ、テンプレートに沿ったやりとりって、エンターテイメントの世界ではよくあるじゃないですか。それこそお笑いの一発ギャグとか、ボケツッコミ、コントのオチなんてのは、分かりやすいところで。そういう定型を真似ることで、話題とかシチュエーションとかを一発で伝えることができる。子供が一発ギャグをやたら繰り返したりするのは、情報の伝達がやたら簡単だってのもあるでしょう。特に大人との会話なんかもう、普段はまったく意図が伝わらないところで、一発ギャグをやればとりあえず分かってもらえる。時間を共有できる」
ケイ
「パターンったら返しもパターンだからなあ。そら簡単だわ」
玄兎
「TRPGでもやっぱりそういうところがあって、まず最初にパターンに沿うことでお互いにコミュニケーションを成立させる。分かり合えること、言語が通じることの喜びというか。で、言葉が通じる、パターンが成立すると、それが枠組みになって、今度はそこから逸脱する楽しみってのが発生する。逸脱した状態がベースになると、そこから逸脱して、再びコミュニケーションの成立を目指す」
ケイ
「コインが回ってんだな」
玄兎
「ですね。それを一緒くたに見ようとするから、TRPGの遊び、コミュニケーションの楽しみについてごっちゃになるし、対立するんだろうとは思います。軸足というか、状態というか、自分がどっちの枠組みの中にいて、どういう楽しみを求めてるのかっていうのは、極論するとそういう裏と表があるんだろうなと」
ケイ
「意図が伝わることが楽しみか」
玄兎
「パーティーゲームというか、チームプレーの楽しみなんかも、そういうとこあると思うんですよ。ほら、最初に作戦会議してから予定通りにプレーするよりも、場当たり的に何の相談もなしにコンビネーションプレーが成功すると、より快感だったりするじゃないですか。で、そういうのってリアルタイムに進行するデジタルゲームの方が強くて。『モンハンポータブル』の協力プレーの面白さのひとつでもあるでしょう」
ケイ
「まあ、そういうことはあるよな」
玄兎
「前にブログのコメントでいただいたんですが、『D&D』でも相談なしにノックバックとか使ってコンボ成立させて楽しむとか、そういうのもあるみたいですね」
ケイ
「その辺はでも、作戦会議で先に決めてると、楽しさ半減ってわけだ」
玄兎
「判定があるんで、上手くいくかどうかってのは相談してても分かりませんけどね。だから判定が成功する、というプロセスで近い快感は得られるように思います」
ケイ
「そういうとこでもダイスロールは機能するってか」
玄兎
「ええ。不確定要素のコントロールが胆だと思います。まあ大体そんなとこでしょうか」
ケイ
「あれ、ロールプレイ評価とかってやつは、どした?」
玄兎
「ああ、あれね。忘れてくれていいんですが。なんかこう、私怨混じりなんで正当な評価にならないと思うんですよね」
ケイ
「じゃあやめとくか?」
玄兎
「まあでも一応吐いときます。ロールプレイ評価って、要するにロールプレイがカッコいいとか、ノリがいいとか、そういうプレイに対して評価して、プラスボーナスを与えるルールです。このプラスボーナスは最終決戦に投下するリソースになるんですが、当然これが高い方が活躍できるし、低ければ活躍するチャンスがものすごく少なくなる。ということは、それまでのプレイでボーナス稼げるようなロールをしておく必要があるわけです」
ケイ
「ふん」
玄兎
「で、そういうプレー、評価されるプレーがどういうものかっていったら、まさにエチュードの、コミュニケーションの楽しみで、相手に伝わるパターンに沿ったもの、ということになります。何故かと言うと、カッコイイっていうのは前後のイメージが出来ることが重要だし、ノリが良いってのは前の人の発言とのつながりが濃厚と判定された結果だからで。前後のイメージが出来るくらい圧縮された情報、物真似が成立していることで、別の似たようなシチュエーションから逆算することができる。そうすることで、カッコイイと評価出来る。濃厚なつながりってのも同じですね。情報の圧縮、物真似、つまりパターンです」
ケイ
「ああ、そういう考えか」
玄兎
「だからボーナスを稼ぐためにはパターンの応酬をするのが一番効率が良い。しかもこのボーナスをプレイヤー同士で投げられるルールになると、お互いに投げやすいボールを投げ合えば、お互いにボーナスが稼ぎ合えるし、一方が評価されたら、評価された方は恩返しとばかりにボーナスくれた相手に返そうとする。自分のロールプレイにリアクションを起こしてくれた人にボーナスを投げるとか、そんな感じで相乗効果を生むことが出来るわけです」
ケイ
「お前がそれ嫌いな理由が分かった。パターンから逸脱できねえからだろ?」
玄兎
「そうなんですよ。逸脱というか脱線というか、パターンの流れをぶった切ることになるわけで、それって凄いストレスなんですよね。あと、場のコモンセンスから外れたプレイがまるで認められないところとかも苦しい。ただまあこの辺は恨み節なんで、簡単に反論できることなんじゃないかと思います。あんまり正当な評価にはなってない気がする。バラバラのところから分かり合うことの楽しみを追求するなら、これはこれで強力にサポートしてくれるルールだと思います。単に僕がそれだけじゃ嫌だっていう欲張りなだけって話で」
ケイ
「まあ、そりゃあそうだろう。欲ボケの権化だもんなあ、お前(笑)」
玄兎
「ひどいことを言う(笑)」
ケイ
「まあ何だ。そのまま世に憚れ、憎まれっ子(笑)」
玄兎
「人間死ぬときゃ死にますよ。ああ、最後までタイムオーバー〆切突破だ(笑)」

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