[chat] 20091110#3-役割配置・その2

ドラマの構造・その2(役割配置・後編)
オリハタさん(仮)
「大丈夫?」
玄兎
「まあ、なんとか。今日は役割配置の話だけで精一杯っぽいけど」
オリハタさん(仮)
「あらら。じゃあ私のネタは、また今度で」
玄兎
「なに、ネタって」
オリハタさん(仮)
「都市計画における子供の遊び場の属性」
玄兎
「お前そういうことはもっと早く言えよな」
オリハタさん(仮)
「なんで」
玄兎
「そっちの方が面白そうじゃんか(笑)」
オリハタさん(仮)
「そう? でも先に片付けるものは片付けなきゃ」
玄兎
「まあねえ。じゃあ次、それやろう」
オリハタさん(仮)
「はい」
玄兎
「じゃあさくさく片付けてしまえ。じゃない、その前に」
オリハタさん(仮)
「なに?」
玄兎
「さっきの訂正。てか、古いチャート持って来てた」
オリハタさん(仮)
「何が?」
玄兎
「対抗者の話。最終決戦前で消えるって話したっしょ」
オリハタさん(仮)
「うん、言ってた」
玄兎
「あれ間違い。てか対抗者の再定義したの忘れてた」
オリハタさん(仮)
「どういうこと?」
玄兎
「最近まで単なるヤラレ役って考えてたんだよ。その時のチャート持ってきちった。でも対抗者はさっきも話したけど、先遣隊というか偵察部隊というか、そういう存在に再定義したもんで、むしろラスボス戦にこそ必要ってことになったの忘れてた。まあ後でそのシーンになったら話そう」
オリハタさん(仮)
「これが違うわけね?」
玄兎
「そうそう、そこは×じゃない」
オリハタさん(仮)
「なるほど」
玄兎
「キャラクターの構成要件分類は、まだ借り物だからなぁ」
オリハタさん(仮)
「そこ、研究は進めてるの?」
玄兎
「いくらかは。たぶんパターンランゲージで書けると思うんだけど、まだカード化やってないんで、整理ついてないんだよね」
オリハタさん(仮)
「うまく定義できてない感じだもんねえ(笑)」
玄兎
「(笑)面目ない。あと2、3年でやっつけてみるさね。死ぬまでにその辺整備しとかないと、安心して死ねん(笑)」
オリハタさん(仮)
「またそういうこと言う」
玄兎
「人間いつ死ぬかなんて分からんでしょ。まあそれはいいとして、今日の話でその辺の洗い出しをちょっとやっておこうかってのも、ちょっとあるんで。なんかあったら意見プリーズね」
オリハタさん(仮)
「意見。はい」
玄兎
「どうぞ」
オリハタさん(仮)
「ちょっと思ったんだけど、協力者って要らないよね?」
玄兎
「やっぱりそう思う? 俺も話てて必然性のある説明ができねーなと思った(笑)」
オリハタさん(仮)
「振る舞いの引き合いが甘いから」
玄兎
「関係性だよなあ。うん、まあその辺はあとで考えてみるとして、今日はもうちょっと、グダグダなアウトプットに付き合ってちょ。これでも要件抽出できる人もいるだろうし」
オリハタさん(仮)
「もちろん。お役に立ちます、なーんて(笑)」
玄兎
「(笑)で、えーとそれはいいとして、じゃあ次はなんだ。シーン7? チャリオットか。ああそうだ、折り返し地点、まさにターニングポイント」
オリハタさん(仮)
「視野が変わるんだっけ?」
玄兎
「そう。今までの視点とは違った視点で状況把握をするようになる。ここで登場するのは協力者、敵対者、依頼者、援助者の四役」
オリハタさん(仮)
「対抗者はいないんだ?」
玄兎
「シーン4と同じで、視野が変わって色々と整理しなくちゃいけないんで、ライバルは邪魔なんよ。だから出てくる必要は無い。出てきても構わないんだけどね。このシーンでは、今までの価値観がぶち壊しになる。正義のヒーローを偽善者呼ばわりするキャラが出てくるとか、今までの価値観の基盤になってた情報に矛盾が見つかるとか。ここで精神的に揺れて、大きな決断をしなくちゃいけなくなる。それでも決意を曲げないのか、模索の道を選ぶのか、とか」
オリハタさん(仮)
「協力者は?」
玄兎
「協力者は、もちろん主人公を助けようとする。悩むなと言ったり、貴方の選択についていくと言ったり。協力者が疑問を呈するパターンもある。このシーンでは、まあ大抵の場合は敵対者が視点切り替えの情報を持ってくる。直接的なメッセージ、さっきの偽善者よばわりみたいな話ってのもあるし、間接的なメッセージというか、情報を増やすことで主人公やら協力者やらに気づかせる、ていう方法を取ることもある。主人公が子供だと前者で、大人だと後者とか、わりとその辺の線引きは分かりやすい」
オリハタさん(仮)
「コナンは?」
玄兎
「名探偵?」
オリハタさん(仮)
「そう」
玄兎
「あれは頭脳は大人だから後者。てかまあミステリーは大概後者だわな。サスペンスだと前者もある」
オリハタさん(仮)
「サスペンスはユーザフレンドリーだから(笑)」
玄兎
「TRPGでも、その辺はサスペンス寄りの演出の方がいいだろうね。プレイヤーはマスターが気付かないことに気付いたり、気付いて欲しいことに気付かなかったりするものだから」
オリハタさん(仮)
「そういうときって、ボケが滑ったみたいな気分じゃない?」
玄兎
「(笑)あーあーあー。今はもう諦めて、そういうのは伝わらなくても平気なように組んでるけどまあそれはいいや。次いこう次(笑)」
オリハタさん(仮)
「(笑)はいはい」
玄兎
「次はシーンコード8、ストレングスか。強い決意をするシーンだね。ここでも登場するのは協力者、敵対者、依頼者、援助者になる。依頼者の持ってきた依頼内容とか、援助者によって与えられた行動力とか、敵対者の存在とか、視点が変わって色々分かるようになることで、これまで分かってなかったプレッシャーを自覚する。依頼者あたりからは、具体的にプレッシャーをかけられることもあるし、敵対者はどんどん迫ってくる。そういうことが、主人公に決断を促すことになる」
オリハタさん(仮)
「次が大学受験でしょ(笑)」
玄兎
「(笑)それは例えだっちゅーに。次はハーミット、シーン9だね。隠れていたものが表に出てくるシーン。ここも登場する役割は一緒」
オリハタさん(仮)
「対抗者はまだ?」
玄兎
「まだ。あれは最後の決戦用。あれ、そういや俺、さっきなんか間違ったこと言ったね」
オリハタさん(仮)
「なに?」
玄兎
「対抗者がラスボス戦で消えるとか言っちゃわなかった?」
オリハタさん(仮)
「言ってたね」
玄兎
「あちゃー。ごめん、それ訂正。解釈違いだ。こないだ対抗者の解釈変えたの忘れてた」
オリハタさん(仮)
「言葉の意味が変わったってこと?」
玄兎
「で、えーとコード9か」
オリハタさん(仮)
「うん」
玄兎
「隠されていたものが表に出てくる。多くの場合、敵対者の脅威だね。ラスボス登場というか、正体が判明したり、目的がはっきりしたりする。急展開ってやつで、まあ起承転結で言うと転のステージに突入。協力者は今まで通り。敵対者は具体的な行動に出てくる。ここで改めて犠牲者が発生するケースは多いんだけど、出なくてもいい。依頼者は主人公にさっさと片付けろと急っついたり、援助者は表面化した危機から主人公を守ったりする。敵対者のジェノサイドから救われたりする」
オリハタさん(仮)
「ふんふん」
玄兎
「サクサク進めよう。次、コード10だから、フォーチュンか。加速したドラマがひとつのピークに達する。ここは援助者の見せ場みたいなもんで、最後の戦いにいく前のひとつの山場になるんだけど、最終決戦のための装備を整えてくれる。で、いってらっしゃい(笑)」
オリハタさん(仮)
「えー(笑)」
玄兎
「ここで援助者の役割は終わるんだな。伝説の剣が授けられたり、最後の封印が解かれたり、まあそんな厨展開もあれば、心が折れそうになったときに大切な人からの応援を受け取ったり、犯人追求に必要な証拠の品が届けられたりすることもある」
オリハタさん(仮)
「古谷一行が全員を集めて下さいって(笑)」
玄兎
「(笑)あと緊急配備を要請したりね」
オリハタさん(仮)
「他の登場人物は?」
玄兎
「えーと、さっきまでと同じ、じゃない。ここで対抗者が復活するんだった」
オリハタさん(仮)
「さっきのだ」
玄兎
「そう。解決の糸口が見えたことで、主人公を出しぬいて手柄を独り占めにしようとしたりする。あるいは主人公が糸口を見つけた頃に、ミスリードされたまんま勝ったと思って暴走する」
オリハタさん(仮)
「誤認逮捕みたいな」
玄兎
「そうそう。で、主人公はその人が犯人じゃないの分かってるから、やばい早くしないとってんで関係者を全員集めたりする」
オリハタさん(仮)
「これミステリーの話だっけ?」
玄兎
「ハリウッド映画の話だったはずなんだけどなあ(笑)」
オリハタさん(仮)
「それでそれで?」
玄兎
「ああ、うん。さっきも言ったけど先遣隊だから、基本的には主人公より先に行動を起こして、それがトラブルの種になったり、主人公が行動するきっかけになったりする。対抗者が道を開くんだな」
オリハタさん(仮)
「でもやられちゃうんだ(笑)」
玄兎
「その辺は主人公じゃない悲しさ(笑)。で、依頼者は同じく依頼、ミッションの重要性とか必要性とかを語る。この頃になると、独立した依頼者というより、協力者が依頼者の代弁者になってたり、依頼者を兼任する形になってることが多い」
オリハタさん(仮)
「敵対者は?」
玄兎
「自分の弱点がバレるわけだから、もうなりふり構わず直接攻撃を仕掛けてくる。まあミステリーだと直接攻撃ってのもちょっと違うんだけど。サスペンスだと主人公が交通事故に遭いそうになる(笑)」
オリハタさん(仮)
「そしてバレる(笑)」
玄兎
「分かりやすさと緊張感が、サスペンスの売りだから(笑)。で、後はもうクライマックスの展開なんで、説明することもなさそうなんだけど。一応やっとくと、シーン11はジャスティス、対決シーンだね。ここでは協力者、敵対者、依頼者、対抗者が出てくる」
オリハタさん(仮)
「まだ依頼者必要なの?」
玄兎
「さっきも言ったけど、協力者とコンボになってて、主人公の社会的な目的を示唆する役割だから。いなくなると何するんだか忘れちゃうんで(笑)」
オリハタさん(仮)
「主人公に、なになにするんだ! とか言っちゃうわけね」
玄兎
「そう。で、対抗者もその辺は近いんだけど、敵対者と対決するときに、対抗者が先走ってやられる。ミスリードに引っかかったり、当たらない攻撃を繰り出しちゃったりする。ここではもう、対抗者と主人公の目的が合致していて、目の前にそのハードルがあるわけだから、対抗者は協力者になるケースも少なくない」
オリハタさん(仮)
「ハナ肇がミスリードに引っかかって、犯人はあなただ! て無実の人を犯人よばわりして、それを古谷一行が、そう思うように仕向けた、て訂正して?(笑)」
玄兎
「そうそう(笑)。まあ、そんなんで敵対者を追い詰めて倒す」
オリハタさん(仮)
「ここで倒しちゃっていいの? まだ日常回帰しないのに?」
玄兎
「いいのいいの。次、ハングドマンのシーンは問題の根本的な解決。これはまあ、金田一だと犯人が自殺して終わったりするパターンだね。フロドが指輪を火口に投げ捨てたり。社会派なドラマだと、敵対者は社会的な構造の被害者で、だからその問題になる構造自体が解体されたり、あるいは問題解決のロードマップが見えたりする。悪の族議員が自殺したり逮捕されたりして、その後、談合が行われた事業の見直しが行われるとか、談合に参加した企業に捜査のメスが入るとか、そういう演出がされるシーン」
オリハタさん(仮)
「それは日常回帰じゃないの?」
玄兎
「その途上だね。エンディングの、日常に戻った後で語られるパターンもあるけど、とにかくここで後日談で伏線の大掃除をやって、ドラマの後片付けをする。ここでは必須の役割ってと、ドラマに大きく関係した人物たちで、結局また協力者、敵対者、依頼者、対抗者のあたりね。まあ依頼者なんかは居なくても良いと思うかもだけど、依頼を達成した、しない、についてコメントする仕事が残ってるんで」
オリハタさん(仮)
「それって必要なの?」
玄兎
「てかね、それが無いと主人公の行動の価値付けがあやふやになっちゃうから。大魔王の手から姫君を助けました、で、助けた後の話がまったく何もないってのも困るわけですよ。助けてくれてありがとう、のキスくらいしてもらわんと。十牛図で忘れられる牛じゃないんだから」
オリハタさん(仮)
「他の役割は?」
玄兎
「対抗者は捨てぜりふを吐いたり、好敵手と書いて友と読んじゃったりするようなことを言う。協力者は素直に祝福して、敵対者はここで完全に殲滅されるから、殲滅されるために出てもらわないと困るわけ」
オリハタさん(仮)
「で、最後、死神のシーンは? 日常に戻ってるから、また役割なし?」
玄兎
「そう、無し。日常に戻って、最初のシーンとの対比を描いて終わりだから、役割というより単純な関係性だけの話になる。誰が出てもいいし、誰も出なくてもいい」
オリハタさん(仮)
「これでおしまい?」
玄兎
「そういうこと。これでまあ、全13回、1クールの話の構造にもなったり。とは言っても、日常回で一話食いつぶすのは珍しいから、対決のシーンが2回分になるとか調整される(笑)。どうだろ、なんとなくでも分かってもらえた?」
オリハタさん(仮)
「言いたいこととか、ビルドしたい構造とかは。でもちょっと、役割ごとの関係性がはっきりは分からなかったかも」
玄兎
「だよなあ。出来上がってる作品の解釈とか、自分で作品作るときのチェックシートとしては、実際によく使うんだけど、いざ人に話そうとすると、まとまってないことが多いからなあ。うん、いつも以上に詭弁くさくなった自信がある(笑)」
オリハタさん(仮)
「(笑)そこ威張るところじゃない」
玄兎
「(笑)たぶんこれ、上手くモデリングできればUMLみたいに書けると思うんだよね。そうすりゃチェックシートと言うよりフレームワークが作れると思うんで、シナリオの標準化を考える分には使えるんじゃないかと。まあ嫌いだけど、標準化(笑)」
オリハタさん(仮)
「なんで嫌いな物の研究してるのよ(笑)」
玄兎
「好き嫌いと価値は別物だから。僕はTRPGは複雑系のワールドシミュレーターとして遊びたいんだけど。ああ、何にしてもおつかれさま。お付き合い下さってありがとうございました」
オリハタさん(仮)
「こちらこそ、おつかれさま。ねえ、ちょっと休んだ方がいいんじゃない? 顔色悪いし」
玄兎
「うん、じゃあちょっと仮眠取るわさ」

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