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『GURPS』の創作への応用
- 玄兎
- 「そうそう。ストーリーモデルで思い出した。小説でも漫画でも映画でもアニメでも良いんだけど、創作について多少なりと理解があれば、おはなしを作るときは便利だと思いますよ、『GURPS』は」
- ケイ
- 「どういう風に便利だと?」
- 玄兎
- 「推敲に。ひとつには、キャラクターの運動に一貫性を持たせられること。特徴で制御されますんで、どこで葛藤してどこで振り切って、あるいは囚われて暴走して、とかそんなエフェクトが自然にかかります」
- ケイ
- 「ふんふん。それから?」
- 玄兎
- 「あとはまあ、大きいところはリアリティですかね。ルールが物語ではなく現実の現象をベースに構築されてますんで、ストーリーテリングとリアリティのすり合せが、自動的に行われることになります。パーフェクトではないにしても」
- ケイ
- 「なるほど」
- 玄兎
- 「『GURPS』の面白いところのひとつが精神的な特徴にあって、不利な精神的特徴は内向的にこう、プレイヤーがダイレクトに被害を蒙る方向で機能するんですが、有利な特徴は拡張的に、社会に対する影響力として機能してその、利益があくまで相手任せになるんですよね。第三世代以降の、もっと数学的なゲームシステムでは、この手の処理って敬遠されがちなんですが、この旧世代型の人間任せの処理が、むしろ社会的というか、僕としては現実寄りのリアリティがある、と考えるところで」
- ケイ
- 「コントロールしやすいところでもあるし、しにくいところでもあるわな。コンセンサス任せってのは」
- 玄兎
- 「その手の掛け合いが、ひとつの醍醐味だと思うんですけどねえ。えーまあそれは置いとくとして。それから、同じくリアリティに属する話としては、モブとキャストの格差を意識的に構築するところとか。このとき役に立つのが【特殊な背景】です」
- ケイ
- 「どういうことだ?」
- 玄兎
- 「ワールドセットのモデリングをどれくらい意識的に行うか、って話なんですが。たとえば錬金術という技術があるとして、それは一般にどれくらい膾炙していて、また逆に秘匿されているのかとか、そういうことが【特殊な背景・錬金術を習得している】に必要なCPに、まるごと集約されるわけです。CPの格差について理解していれば、たとえばオーバーテクノロジーを修得するときのCPとどれくらい違うかで、それがどれくらい社会的なズレがあるのか、とかいうことを分かります」
- ケイ
- 「そこはゲーム的な解釈は入らないのか? PCみんな錬金術師だから【特殊な背景】要らないとか」
- 玄兎
- 「そういう処理をする人もいますね。けどまあ逆に、たとえばPCはみんな錬金術師でも、世間的に錬金術師が特殊であるなら、初期CPを上げて均一に払わせるって処理があるわけで。ああ、えーとだからつまり、たとえばPCが武装錬金術師になる話があるとして、錬金術師を学ぶには【特殊な背景】に20CP必要としたら、キャラクター作成時のCPを20点底上げする、って処理をすれば問題ないわけで」
- ケイ
- 「その20CP底上げするところが、ゲーム的な処理ってわけだ」
- 玄兎
- 「ですね。ゲームのキャラクターと、ゲーム世界の一般人とを乖離させるプロセスになります。【特殊な背景】は、社会とキャラクターとの乖離とか、ある種の可能性みたいなもんを相対評価したもの、ってことになるかと。ああ、でも【特殊な背景】が特殊なだけで、なんも利点がなければ0CPなんですが」
- ケイ
- 「たとえば親が権力者、とかいうのは【特殊な背景】になるのか?」
- 玄兎
- 「それにしても、いくつかの表現方法があるんですけど、それによって社会的な権力を行使できるなら、【地位】やら【階級】やらを取るとか、ちょっと敬われるだけなら場面によって【名誉階級】とか【社会的尊重】とか。経済的なものなら【財産】とか、小遣いが多いだけなら【副収入】とか、わりかし色々と【特殊な背景】以外の特徴で表現できますんで、それ以外の特権的な構成要素を扱う時に使うもんでしょうね」
- ケイ
- 「じゃあ、どんなのが【特殊な背景】になる」
- 玄兎
- 「まあ、さっきの錬金術みたいな、技術とか能力とかに関係するものを特権的に取れる権利とか。妖魔の【特殊な背景・妖怪である】なんかも、妖力とか妖術が取得できるっていう特権を表すもんですわな」
- ケイ
- 「要はオプションを拡張するためのもんか」
- 玄兎
- 「あとは、キャラクターデータにならない、常識を書き換えるときにも使います」
- ケイ
- 「常識の書き換えってな何だ」
- 玄兎
- 「えーとですね。たとえばタイムトラベラーが能力を失ったとしても、未来や過去の知識は持ってるわけですよ。んでまあ、そういう知識ってデータにならない部分があるわけですけど、データにならなくても知ってることで、本来取りえない行動が発生することがあるわけで」
- ケイ
- 「ああ、なるほど」
- 玄兎
- 「まあこれにしても、たとえば統合技能として《義務教育》とか取って表現することも可能なわけですが」
- ケイ
- 「《義務教育》なんて技能、あったか?」
- 玄兎
- 「ないですよ」
- ケイ
- 「ねえのかよ」
- 玄兎
- 「ないです。でもまあ、それくらい作ってくださいよ。ファンジンの『ガープス・リリアン』でも、国語数学理科社会、あと英語もか、追加技能としてちゃんと搭載されてましたし。ここんとこ触ってないんで記憶はあやふやですけど、確か『ガープス・リリカルスクールテイル』だったか、すげえ出来のいい学園もののファンジンサプリでも、確かそんなのが有ったような気がします」
- ケイ
- 「ああ、それなりに一般的な発想なのな」
- 玄兎
- 「『GURPS』扱ってると、そういうの気になるようになりますんで。その手の常識について、どこまでデータでフォローしていくかってのは、ワールドセットのデザインをするときには考えます」
- ケイ
- 「そういうもんなんだな」
- 玄兎
- 「まあ『GURPS』に触れたら、大抵の人が自分のデータ化の道を通りますんで。学力とか気になる世代は、一度は通る道じゃないかと」
- ケイ
- 「で、その技能にはどれくらいCP食われるんだ?」
- 玄兎
- 「そうですねえ。まあ難易度は易として、1CPで小学校低学年、2CPで高学年、4CPで中学卒業、8CPでほどほどに真面目、12CPでがり勉、くらいでしょうか」
- ケイ
- 「どういう計算だそれは」
- 玄兎
- 「キャラ作成の段階で1歳あたり2CP使えるんですが、逆に1CPごとに起きてる時間の半分を、その技能に突っ込んでると考えて。まあ実際には、起きてる時間の半分どころか30%くらいで割り当てられるもんだと思いますが。人間、技能にならんような無駄な行動って多いし」
- ケイ
- 「でもそれ知力が高かったら違うだろ」
- 玄兎
- 「まあそうですね。平均値で考えてます。小学校のテストは、低学年で+6、高学年で+3、中学はボーナス無しとか。まあ1年ごとにボーナスを1ずつ減らしていくようにすりゃ、だいたい判定値10から14くらいの枠に入るかなと。判定値のパーセンテージがそのまま得点と考えると、平均ってだいたいそんなもんなんじゃないかな。もっと難しかったっけ?」
- ケイ
- 「赤点は平均点の半分とか、そんなだった気がするな。そうするとまあ、それくらいか?」
- 玄兎
- 「あれ、赤点って30固定じゃありませんでした?」
- ケイ
- 「そうなのか? うちは毎回変わってたけどなあ。その辺は学校によって違うのかもな」
- 玄兎
- 「赤点が変動するのって高校からだとばっかり。まあいいや。とにかく技能一つでそういうことも表現できますんで」
- ケイ
- 「なんだっけ?」
- 玄兎
- 「だから。『GURPS』のワールドセットの表現力とか」
- ケイ
- 「ああ、創作に役に立つって話だったな」
- 玄兎
- 「そうそう。たぶん」
- ケイ
- 「たぶんかよ」
- 玄兎
- 「まあ、この手の話はどんどん流れて変わっていってナンボですから」
- ケイ
- 「ログ起こしたら大変なことになってるぞ」
- 玄兎
- 「お任せします。適当に更新しといてくれると、僕が楽で良い。印象論が多いから、なんぞ叩かれるかも知れんのは、怖いですけど。ああそうだ。あと、できればサブタイ付けて分けてくれるとありがたい」
- ケイ
- 「好き勝手言ってやがんな」
- 玄兎
- 「まあ、お願いしますよ」
- ケイ
- 「考えとく」
- 玄兎
- 「よろしくお願いします」
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