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箱庭世界
- ケイ
- 「そういや、箱庭世界Kitって今どうなってんだ?」
- 玄兎
- 「最近、久しぶりにいじってます。戦闘周辺のテキストを書くのが面倒なんですが」
- ケイ
- 「ってと?」
- 玄兎
- 「戦闘処理の高速化を図った『T&T』のダウングレード版から、神経質にダイスを振り合うギャザ風バトルまでをカバーしようとしたら、テキストの相違点が多すぎて、それぞれにテキストを用意しなけりゃならなくなったんすよ。面倒くさい」
- ケイ
- 「どう面倒だ」
- 玄兎
- 「要は命中判定をどこまで分解するかで。改めて『T&T』の特殊性が浮き彫りになって。それ以外は基本的に、ヒット、ドッジ、ダメージ、ガードの四段階それぞれの有無くらいで、あとは基本的にマンツーマンで処理されるんでまとめやすいんですが。後はテクニックにインタラプトを入れる場合のタイミングだけで」
- ケイ
- 「ドッジとガードが別の判定なんてあったっけ?」
- 玄兎
- 「あるじゃないすか、有名なのが」
- ケイ
- 「ほう」
- 玄兎
- 「ソード・ワールド」
- ケイ
- 「あれそうだっけ? そんなにテンポ悪かった印象ねえぞ?」
- 玄兎
- 「そりゃそうだ。GM はダイス振りませんからね。固定値で」
- ケイ
- 「だからか。ありゃあ巧かったな。レーティングと期待値と固定値で、戦いの目算が立つようになってて。リスクコントロールがしやすいから、ちゃんと考えるプレイヤーが相手のときほど面白くなる。モンスターデータが直線的だったのが、ちょっといただけなかったけど」
- 玄兎
- 「考え無しな子だと、出たモンスターみんな倒せると思って突貫しちゃうんですよね。んでバランスが悪いとのたまう。何のためのセージ技能で、何のための怪物知識判定なのかと」
- ケイ
- 「レーティング表のせいで、分かりづらくなった部分もあるけどな」
- 玄兎
- 「手間なんですよね、あれ」
- ケイ
- 「でもあれがないと分布の目が粗くなるからな。期待値の変動が最小単位で推移するから、カスタムモンスターにも意味が出るんだろ。必要悪かね」
- 玄兎
- 「おお。ケイさんのソード・ワールド論って聞くの初めてですよ」
- ケイ
- 「そもそもお前とソード・ワールドやったことねえだろ」
- 玄兎
- 「ああ、そういえば。先輩のマスターってと、やっぱりガチガチの戦闘ゲームで?」
- ケイ
- 「だってあれはそういうゲームだろうよ」
- 玄兎
- 「ですか。僕はデータ増やしてデイリーライフやってましたけど」
- ケイ
- 「お前はお前で相変わらずか。ローズ熱が抜けてない」
- 玄兎
- 「ユルセルームは永遠ですよ。それより、ケイさんのソード・ワールド観って聞いてみたいですね。面白そうだ」
- ケイ
- 「じゃあもうちょいやるか?」
- 玄兎
- 「お願いします」
『ソード・ワールドRPG』について
- 玄兎
- 「今の流れだと、ソード・ワールドはコンバット?」
- ケイ
- 「オペ級コンバットじゃねえかな」
- 玄兎
- 「オペ級ですか。ストラテジーまではいかないんですね」
- ケイ
- 「ストラテジーにしちゃ運動性が高すぎる。あれは相当に野心的な数学ゲームだっただろ。マルチメディア戦略の方が当たりすぎて思惑通りに進まなかったんだろうけどな」
- 玄兎
- 「野心的というと」
- ケイ
- 「赤箱から『T&T』から、当時はランダマイザが暴れやすかったからな。だからシナリオ設計する時も、モンスターレベルとか、雑な基準でしかシミュレーションできなかっただろ。そこに期待値が1ずつ推移するミサイル命中表を持ち込んで、スリルを数学的に演出できるように狙っていったんじゃねえかな」
- 玄兎
- 「数学的なスリル演出ですか。それはでも、飽きませんか?」
- ケイ
- 「飽きるな。致命的に飽きる。ただGMがピーキーなバランスを組めば、ダイスロールの面白さが生きる。PCが死んでも構わないレベルで遊べばそれはそれで面白い。そしてピーキーな設計をするためにレーティング表がある」
- 玄兎
- 「なるほど、それが期待値の推移が細かい理由ですか。で、キャンペーン級を遊ぶにはPCの死の回避がありますよね。連載リプレイなんかだと特に。そうするとピーキーには組めませんが、その場合は?」
- ケイ
- 「だからその先にパズルがある」
- 玄兎
- 「パズルですか?」
- ケイ
- 「そうだ。単純なパワーゲームの先にある、お互いの手の内を理解したうえでの駆け引きとか、単なる数字の上では負けるはずの戦いを、特定条件をクリアして勝ちに反転させるパズルゲーム。プレイヤー自身の知識を注ぎ込むゲームな」
- 玄兎
- 「ギャザ的な?」
- ケイ
- 「近い。ただ、たぶんそこまで極端なものは、当時のゲーム研究のレベルからすると、作れなかった可能性の方が高いんだが。ただSNEには安田先生がいるからなあ」
- 玄兎
- 「というと?」
- ケイ
- 「ボードゲームサイドでは、カードドリブンの嚆矢がもう有ったはずだろう」
- 玄兎
- 「ああ、ペンタンタスターですね」
- ケイ
- 「そりゃちとマイナーだから、御存知だったかは分からんけどな。まあカードでの駆け引きなら、コスミックエンカウンターもあるだろ」
- 玄兎
- 「ああ、そうか。でしたね」
- ケイ
- 「モンスターのアビリティとディスアビリティの設定が、かなり初期段階からパッチ・スタイルで作られてたから、たぶんそういう展開になると思ってたんだけどな。ただ、これはポシャった」
- 玄兎
- 「何故」
- ケイ
- 「スチャラカリプレイが売れ過ぎた。山本GMのマスタリングは、昔の『D&D』と同じ文法だっただろう」
- 玄兎
- 「単純にモンスターデータが少なかったのもあったんじゃないですかね」
- ケイ
- 「ああ、それもあったと思う。ただ、売れすぎたお陰で山本のシリーズが長続きして、そこでソード・ワールドの遊び方が固定化したってのは、俺の穿ちすぎかね」
- 玄兎
- 「どうでしょう? ニーズに応えたらコンセプトからは外れていった、ってことは連載ものの常ですが」
- ケイ
- 「まったく外れたわけじゃあなかったんだろうけどな。キャラを強くする方向でのパワーゲーム志向とは別に、特殊な状況での戦闘について、Q&Aに質問が寄せられるケースが少なからずあったからな」
- 玄兎
- 「ああ、ドラマガはまったく追ってなかったんですよね。なるほど、わりとトリッキーな遊び方に興味を持ってた人もいたわけだ」
- ケイ
- 「ただな、それがマルチメディア展開には反映されなかった。下手にそれを書くことで正解を教えちまうことになるから出来なかった、ってのもあったのかも知れんが」
- 玄兎
- 「考える楽しみは奪えないと」
- ケイ
- 「そう。まあ、実際そういうことを清松センセが考えていたかは分からんが、期待値なんて数学用語を入れ込んだり、アビリティを変数に数量化して基礎モデルに組み込んだり、なんて構造は、それを可能としただろうと勿体無く思ってるわけだ」
- 玄兎
- 「勿体無いですか。でもデータをプレイヤー側が理解しちゃうと、それまでってことになりませんか」
- ケイ
- 「だからセージ技能がある。ここでちょっとばかし、今までの話がひっくりかえっちまうんだけど。清松センセは固定値でのスピーディーなマスタリングを、良しとしてるような節があるし」
- 玄兎
- 「というと?」
- ケイ
- 「珍しく察しが悪いな。GMが嘘をつかない保証がどこにある」
- 玄兎
- 「はあ? ……ああ、判定の結果ですか」
- ケイ
- 「そこだ。モンスターデータなんてな、開示されるまでは絶対のものにはならんだろう。そもそもキャラクターに個体差があって、モンスターに個体差がないなんてことは、差分は人間ほど大きくはなかったとしても、ありえねえだろうよ」
- 玄兎
- 「で、GMがモンスターデータに個体差を付けたとすると」
- ケイ
- 「期待値のズレが1ならともかく、2ズレたら計算やりなおすくらいまで、ピーキーな設計ができるだろ。レーティング表」
- 玄兎
- 「ああ、そういう」
- ケイ
- 「勝てない戦いがあって、勝つために手持ちのカードをフル活用しなくちゃならんのが、ソード・ワールドのシステムが志向する最上の戦闘モデルだろう。頭脳ゲーム、数学ゲームとしてはな」
- 玄兎
- 「なるほど、レーティング表と期待値には、そんな意味が。だとすると2.0は案外、正統進化なのかな」
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