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TRPG市民権
- ケイ
- 「やりたいことは分かった。それで、それが出来るプレイヤーってなどれくらいいるんだ?」
- 玄兎
- 「今はまだ2グループだけですね。あと2年くらい継続的に遊べれば、もう1~2グループくらいは増やせるかな。1年かけてそれぞれ基本スタンスを見出してくれたみたいなんで、今後はとにかく遊びの幅を広げて、いろんなゲームをみんなで遊ぼうって感じで」
- ケイ
- 「別のものに興味が行っても構わねえの? ギャザブームのときみたいな」
- 玄兎
- 「構わんと思いますよ。なにもRPGにこだわる必要も無いし。むしろあれこれ見てRPGならではの楽しみとか、価値とか、見出してくれた方がよっぽど長く遊べるでしょ。プレースパンが年1回になっても、それが楽しいゲームだと思ってもらえた方が、遊ばない人たちにもプラスの影響を与えやすくなるし」
- ケイ
- 「市民権がどーのこーのってやつだな」
- 玄兎
- 「現状、先細りが懸念される商業的には、ちょっと受け入れがたい部分もあると思いますが。ただ、そう、テーブルトークに詳しいです、って人よりアナログゲームに詳しいです、って人の方が、色々楽しめるだけのキャパがあるわけで。いきなりRPGやらんでも、他のボードゲームでもカードゲームでも、アナログゲームの面白さから広げていく方が手堅いし」
- ケイ
- 「90年代のプロレスファンが、プロレスに市民権をって言いながら、話題がディープすぎるアングルとブックしかなくて大逆走しちまったようなんじゃあ、困ると」
- 玄兎
- 「プロレスも、最近また少し復調してきたかと思ったんですがね」
- ケイ
- 「ファイティングオペラの功績は認めざるを得ねえよなあ。その点は」
- 玄兎
- 「あれはひょうげものでした。最終的にはアングルが大きくなりすぎて、普通のプロレスになっちゃった感もあるけど」
- ケイ
- 「プロレスのアングルは連載マンガだからな」
- 玄兎
- 「あれプロレス詳しい人が見ると、やる夫SSとか、アスキーアートのキャラ使った創作と構造同じなんですよね。ハッスルのリング上ではマスクマンだったり別キャラだったりだけど、背景に別のリングのアングルがある。キャラの元ネタ作品の設定が分かると、より面白いっていう」
- ケイ
- 「マスクマンからして元々そうだからなあ。強いて言うならプロレスはネタバレ厳禁ってくらいか。高田のぶ……総統はスレスレのネタをよく振ってるけど」
- 玄兎
- 「のぶ。あの辺も今風ですよね。昔だったら『やりすぎだ』ってなりそうなところまで踏み込んで、きっちり笑いに仕上げてくる。このネタが分かると面白いよ、ってのを上手くガイドしてるんですよね」
- ケイ
- 「マイクパフォーマンスは一日の長だな。やりすぎて朝令暮改男になったりもするのがあれなんだが」
- 玄兎
- 「だから現役時代に目をつぶっても、まだディープなファンに嫌われるんだろうけど。あと、ハッスルってと『ハッスル注入DVD』のあれ、メインのカードよりメキシコ編の方が面白いんですよね。正直、あんなの知られたら日本のプロレスやばいんじゃないかと。試合のリズムとか、オカマイッチバーンとか」
- ケイ
- 「そうか、お前実はジュニアの方が好きなタイプか」
- 玄兎
- 「どちらかと言えば。ストロングスタイルの強さとか渋みも嫌いじゃないけど、こう、ジョークとセメントが入り混じったスピード感のあるルチャ・リブレの方が、一般受けはするでしょう」
- ケイ
- 「どうやらお前とは膝を詰めて語り合わなきゃいけないことがあるようだ。次の酒の席では覚悟しておけ。一晩かかっても終わらんだろうが」
- 玄兎
- 「いやもう、色々と勘弁してください。俺そこまでプロレスファンじゃないし」
- ケイ
- 「まあ遠慮するな」
- 玄兎
- 「うん。だからそういう姿勢が市民権獲得できなかった理由なんじゃないかと」
- ケイ
- 「なんだと。そんな馬鹿な」
- 玄兎
- 「いやあんた自分で言ってたでしょうが。もうね、ニンテンドーDSの無料パンフを見習えと言いたい」
- ケイ
- 「DSのパンフってと、はじめてのDSだっけか」
- 玄兎
- 「そうそう。あれです」
- ケイ
- 「コモにもらったけど、あれはショッキングだったな」
- 玄兎
- 「なにしろ最初が、DSはカートリッジを差し込んで遊ぶゲーム機です。次がDSはこうやって持って親指でボタンを押します、ですよ。しかも見開き」
- ケイ
- 「コモも最初はどこまでハードル下げるんだっつって呆れてたけどな。はじめての、のハードルとかDSのターゲットユーザの広さとか、紹介してるシリアスゲームとかを考えると、怖いくらいクリティカルなんだよ。理解したら怖くなった。あれのお陰でうちのばあちゃんが美文字トレーニングやってんよ」
- 玄兎
- 「最初は何だこれと思ったけど、よく考えると確かに、まったくコンシューマ知らない人にDS体験してもらおうと思ったら、ペンの収納場所から取り出し方とか、開いてからどうやって持つかとか、自分でもいちいち説明してるんですよね。で、それに気付くと怖くなる」
- ケイ
- 「タイトル紹介もシリアスゲームが3本だけだしな。普段ゲームを遊ばない人なら、実技評価だけでも十分以上に関心があるだろうし、下手にゲームゲームしてるよりマイペースに触れる方が、手も出しやすい。まさにデザインが欲望を作る」
- 玄兎
- 「TRPGにせよプロレスにせよ、今のファシリテーションはその種の視線が欠けてる気がするんですよ。ターゲットユーザが最初から、遊ぶ人しか見てなくて。売り方がPSPっぽい。ハードとソフトの連携が悪くて、モンハン出るまで負け続けとか」
- ケイ
- 「あんまり気にしすぎて潔癖になっても、本体のゲームがつまらなくなったら本末転倒だけど、遊ばない人にも反感を持たれないようにするってのは大事だな。コンシューマ開発でも、ハードによってその辺はかなり気を使うところだし」
- 玄兎
- 「広報は大変ですねえ」
- ケイ
- 「まあ場所によっては開発から流されてきた宣材をメディアに提供する、ただのパイプみたいな所もあるけどな」
- 玄兎
- 「それは切ないなあ」
- ケイ
- 「開発もピーキーだし、速報の価値ってのも分かるんだけどな。糸井重里がコピーライター辞めたのは、大きかったんだろう」
- 玄兎
- 「雑誌メディアでのアナウンスの場合、速報大事だとどうしても誌面編集がテンプレに偏りやすいのも事実だし、テンプレを使うことでユーザフレンドリーになる部分もあるんですけど」
- ケイ
- 「かといってWEBアナウンスはコストパフォーマンスが目に見えないからな。無料な分、クリック数に比べれば実売の率が低すぎるし」
- 玄兎
- 「どっちにしろ、知りたい人しか見ないメディアじゃ外向きのベクトルは得られないでしょ」
- ケイ
- 「じゃあ、どうすると」
- 玄兎
- 「だから。ユーザ自身が広告塔になるしかない。というかユーザ自身を広告塔に仕立てるしかない」
- ケイ
- 「口コミ戦略か」
- 玄兎
- 「です。結局、言葉を増やして少しでも多くの人に、理解してもらえる土壌を作っていくしかない。ブームって風に吹かれて大地が乾燥しちまってます。そのままにしといたら砂漠化しちまうんで、水撒いて地固めしないと」
- ケイ
- 「おお、地球温暖化。エコバッグは一人一枚ずつ自治体で配って、ビニール袋は有料化します」
- 玄兎
- 「なんのマニフェストですか突然」
介入ゲームとサウンドノベル
- ケイ
- 「あれ、でも介入ゲームって何年くらいやってたっけ? 10年じゃ効かないよな」
- 玄兎
- 「『弟切草』と『かまいたちの夜』のレポートが元だから、最初は95年ごろですか」
- ケイ
- 「サウンドノベルが元ネタなのか?」
- 玄兎
- 「そうですよ。記録文学作家に介入して、今まさに書き綴っている歴史的事実をねじまげるツール、としてサウンドノベルを解釈してみたときに、ああそうかと」
- ケイ
- 「なにが『ああ、そうか』だったんだ?」
- 玄兎
- 「アドベンチャーとしての、アドベンチャーゲームとしてのRPGは、いや、逆かな? まあいいか。とにかくそのレベルでのRPGは、キャラクターの行動によってのみシナリオに干渉してるわけですよ。確かにその中で分岐が発生することもあるんですが、それもキャラクターの言動、キャラクターの主観から選ぶじゃないですか」
- ケイ
- 「そりゃあそうだな。サウンドノベルって違ったっけ?」
- 玄兎
- 「あれ、三人称で書けるんですよ」
- ケイ
- 「は?」
- 玄兎
- 「ああ、つまりですね、第三者視点で書けるんですよ、テキスト。そうするとね、選択肢を選んでいるのが、果たして本当にキャラクターなのか? というのがあやふやになるケースがある。主人公であるはずのキャラクターの視点から語られていない選択肢、っていうのが出せるんです。他にも、主人公が複数いて、それぞれの行動を選択するケースなんかもある。そうしたとき、プレイヤーはどういうポジションにいて、それを選ぶ行為はどういう意味があるのかと」
- ケイ
- 「ザッピングとかの話か?」
- 玄兎
- 「ああ、まあそれも延長線上にあるかな。かまいたちやったときに、ザッピングは可能だと思ったし。同じ文法として、たとえば読者参加の誌上ゲームなんかもあって。得票数で行動を決定するとか」
- ケイ
- 「なんでアドベンチャーはその、第三者視点で書けなかった?」
- 玄兎
- 「質疑応答だからです。システムが」
- ケイ
- 「質疑応答」
- 玄兎
- 「ダイアログ・ウィザードです」
- ケイ
- 「そういうことか。入出力端末が主人公固定なのか」
- 玄兎
- 「そうそう。だから。その辺で言えば『SIREN』の幻視、視界ジャックのシステムなんかも、サウンドノベルに近い文法だと思うんですが。まああれは視聴覚しかジャックできないから、単純に端末の感覚器だけ移動させただけ、とか主観レベルから切り離せてない、とも言えるんだけど」
- ケイ
- 「なるほど」
- 玄兎
- 「最近のマスタリングテクニックでいくと、マスターシーンって名付けられたやつが、まんまサウンドノベルの文法ですよね。まあ直接介入まで取り扱ってるケースは、たぶん公式では無いんじゃないかな」
- ケイ
- 「直接介入ってな何だ」
- 玄兎
- 「キャラではなくプレイヤーの選択でマスターシーンが変わるようなプレー。まあプレイヤーの茶々入れに、GMがノリで返すケースなんかは有ったと思うんですが、あまり公言される話じゃないし」
- ケイ
- 「それ、途中で犯人が変わるミステリーみたいな話だよな」
- 玄兎
- 「そうそう。もしプレイヤーが真剣に推理していたとしたら、そりゃあプレイヤーを馬鹿にした話になっちゃいますんで、プロが公にできる類の話ではない。ただまあ、そういうプレイヤーを馬鹿にしたような話ってのとは違うんですが、アリアンロッド・サガ系のリプレイで、近似値のトライは行われてるような気もします」
- ケイ
- 「どんなのだ?」
- 玄兎
- 「うちでもやってたじゃ無いですか。プレイヤーとマスターが入れ替わって、別の視点から同じ話を書いたり。特に触れてなかった部分について、穴埋めする形で歴史的事実に介入する。全部読んでるわけじゃないんで、ミクスチャーの度合いまでは分からんし、そもそも元のセッションであくまで触れてなかった部分なんで、うちの介入ゲームみたいに極端な改竄ではないんですが。複数のゲームマスターによって確定状況が増えていく、それでシナリオの土台が変わっていくキャンペーンですね。その辺について読んだエントリってのは、そういや見たこと無いですね。あるのかな?」
- ケイ
- 「無いならチャンスだろう。書いたらどうだ?」
- 玄兎
- 「やですよ面倒くさい。あたしゃ今、『箱庭世界』の設計で手一杯です」
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