前回「エモいシナリオの要諦」として、基礎となる三幕構造の利用について書きつつ、疲れちゃったので途中でポーイしちゃったのだけど。
もうちょっと必要なコトあるんじゃないの? ということで、補記。
ページの内容
「強烈な価値観」とは
前回、エモいシナリオ=「ある存在(主にNPC)の強烈な価値観に共感できるシナリオ」と定義しましたが、一方で「強烈な価値観」ってのが何なのかについては、触れませんでした。
この辺は好きにしてくれ/分かるでしょと思ったんですが、「具体的にどういうことよ?」と聞かれたので。
これ、言い換えれば(俗語としての)エゴです。
物語の主人公は、その価値観によって何かを決めつけ、それに対処することを第一義として行動します。
「強烈な価値観」の基本パターン
ゲームシナリオによくある「強烈な価値観」は、主に「ある対象に対する振る舞い」として表れます。
これは大きく分けて、二つのパターンに分類できます。
- 「ある対象を何が何でも守り通す」「そのために邪魔な全てを排除する」
- 「ある対象を何が何でも打倒する」「そのために邪魔な全てを排除する」
行動原理は真逆ですが、「振る舞い」の方はクライマックスで対決する理由付けなので、やることは一緒です(笑)
なので、ここで大事なのは「ある対象」の見せ方です。
ということで「ある対象」の描写こそが、そのシナリオをエモいものにできるかどうかの分水嶺というわけです。
「強烈な価値観」に至る道
よく使うパターンとしては、
パターンA
- 「設定」 = 「大切なもの」を描写する
- PP1 = 「大切なもの」に関わる小さな危機が訪れる
- 「葛藤A」 = 「大切なもの」を守りつつ日々の暮らしを送る
- MP = 「大切なもの」を喪失する。または重篤な危機に直面させる
- 「葛藤B」 = 絶望の中から、MPの原因となる敵対者の存在に気付く
- PP2 = 対抗者に「大切なもの」の喪失を揶揄される
- 「決着」 = 敵対者と対決する
パターンB
- 「設定」 = 「大切なもの」を描写する
- PP1 = 「大切なもの」を喪失する
- 「葛藤A」 = 喪失の原因を自分の中に見出して絶望する
- MP = 敵対者の存在に気付いて激情する
- 「葛藤B」 = 敵対者への憎悪を原動力に行動する
- PP2 = 対抗者と論戦する
- 「決着」 = 敵対者と対決する
パターンAは、「大切なもの」との接点を増やすことで、そのものに対する感情移入のポイントを増やします。これは観客自身にとっても「大切なもの」になるような描写を行い、それによって主人公の喪失感と行動原理を共有するよう促します。
対するパターンBは、「大切なもの」の喪失はただのキッカケで、その後の主人公の感情(主に憎悪)と行動にフォーカスします。主人公の出番が増やすことで主人公の憎悪に基づいた行動を描写し、観客に主人公に反発を抱かせやすくなります。(「大切なもの」の描写が減る分、観客自身の経験に依存する傾向はあります)
前回の NPC を主人公にする物語の場合、ぶっちゃけ――
- パターンA = ヒロイン
- パターンB = 敵ボス
――ということになるわけですが。
「大切なもの」の設計
「大切なもの」といっても、それは人物や物品とは限りません。むしろ概念であることの方が多かったりします。
たとえば「退屈で平穏な生活」や「かけがえのない時間」なんてのがよくあります。
あるいは特定個人の「声」とか「笑顔」なんてのもあります。
このあたりはもう、正直に言ってシナリオライター自身の体験から絞り出すのが良いのではないかと思うわけですが。
いや、ランダムチャートでも作っときゃ楽なんでしょうけど……
例によって疲れてきたので今日はここまで。
気が向いたらまた書きますが、気が向かなきゃ書きませんので。
あしからず。