まあ正直どーでもいい話ではあるのですが。
「エモいシナリオが書きたいのだけど」と聞かれたので、自分が遊んできた中で「多分エモいシナリオの共通点ってこの辺よね」と思ったものの要点について、ちょっと書いておきます。
ページの内容
1. エモいシナリオチェッカー
1.1. そもそも「エモいシナリオ」とは
「そもそもエモいシナリオって何よ?」というところで、自分が考えるのは「ある存在(主にNPC)の強烈な価値観に共感できるシナリオ」のことだろうなと。
- 「あーこのキャラの言ってること分かるわー」
- 「そうだよな、そう思ったらそうするしかないよな」
なんて感じるモノのことです。
1.2. 現在のシナリオ作成術について
現在のシナリオ作成術、主に「三幕構成」に準じたモデルについては、概ねエモいシナリオを書くための基礎知識といって良いんじゃないかなと。
というのは、三幕構成ってな基本的に受容者に感情移入させることを目的にしてるから。
エモいシナリオってな感情移入が肝なので、そこは間違ってません。
まあ三幕構成も実は短編には不向きな部分があって、プレイ時間と相談せにゃならんこともあるんですけどね。
1.2.1. 三幕構成モデルの問題点
じゃあ普通に三幕構成で書けばエモいシナリオが出来るかと言うと、当然そんなはずもなく。(そうだったら相談されてないしね)
三幕構成、ゲームシナリオとしては「誰に感情移入させるか」の焦点がアヤフヤなのが問題。
三幕構成そのものは本来、主人公にフォーカスする物語の構築術なわけだけど、じゃあ「(T)RPG の主人公って誰よ?」って話になるわけで。
「主人公って PC① じゃないの?」ってのも間違ってはいない。間違ってはいないのだけど、観客としてのプレイヤーが果たして PC① に常に感情移入できるか? というと、必ずしもそうとはいかない。
だって PC① のプレイヤーがいるから。
1.2.2. (T)RPG の特性と没入への不具合
ちゃんと PC① が演技して、観客たる参加者たちが感情移入できるように動線を引いてくれるなら良いけど、必ずしもそれが可能なはずもなく。
(T)RPG は参加者全員が完全に役に入りきってお芝居を演じる、板の上のマジックサークルとはちょっと違って、シナリオをどうするか、ゲームをどうするかといったメタ思考がつきまとうので、互いにシールドしちゃう部分があるわけで。(それはむしろ健全なメンタリティなので、そこを糾弾するのはちょっと危険)
そういう意味では「エモいシナリオ」の主人公って、PC①じゃない方がやりやすいってこともあると思うのですよ。
1.3. エモいシナリオの主人公
じゃあエモいシナリオの主人公って誰なのか? というと。
まあ PC じゃないなら NPC しか居ませんよね。
どんな NPC が良いか?
これは大きく分けて二つの候補があります。
- ヒロイン
- 敵ボス
これはまあどっちもやれます。
ただし参加者適性は真逆になります。
1.3.1. ヒロイン主役型の参加者適性
ヒロインの価値観に共感させたい場合、参加者は積極的にシナリオに参加するタイプのプレイヤーが望ましい。
そして GM にはある程度のアドリブ能力が求められます。
これはプレイヤーがノリノリになるほど没入しているということであり、またそうであるほどプレイヤーはヒロインに関わろうとするからです。
ヒロインの強烈な価値観、この場合は「願い」のパターンが多いわけですが、それをブレさせず、その上でプレイヤーと楽しく掛け合いができる/したいなら、ヒロインを主人公としたシナリオを考えるようにしましょう。
1.3.2. 敵ボス主役型の参加者適性
敵ボスの価値観に共感させたい場合、参加者はやや傍観者寄りで、ゲームシナリオを義務感でクリアするタイプのプレイヤーが望ましい。
こちらは GM のアドリブ能力は低めでも構わない。
ただしちゃんとシナリオを用意しておく必要はありますが。
というのは、敵ボスを主人公とする場合、物語はどちらかと言うとプレイヤーの関われない領域、いわゆる「マスターシーン」で展開されるからです。
プレイヤーが関われないところで、要点を絞りながら主人公としてのボスのドラマを垣間見せること。その上でボスの価値観、こちらは「目的」のパターンが多いわけですが、その行動を止めようがないところまで持っていって、最後にプレイヤーに決着をつけてもらう。
そういうシナリオになります。
マスターシーンに時間をかけすぎると「吟遊詩人GM」なんて言われちゃったりもするわけですが、ボス戦でガッツリやり合うシナリオにしたければ、敵ボスを主人公にするシナリオというのはアリです。
1.4. 三幕構成による主人公
そもそも主人公ってなんなのか。
三幕構成に基づいた主人公というのは、基本的に「周辺人物の振る舞い」によって決定されます。(勘違いされやすいんですが)
物語上、障害は誰にでも発生します。その時、彼らの周囲にいる人物がどのように対応するのか? それこそが物語の主人公を決めるポイントです。
1.4.1. 「設定」
物語の始まりである導入部。ここでは主人公がどのような立場であるのか、その「設定」を開示します。
ここでは主人公の「大切なもの」を見せます。
1.4.2. プロットポイントⅠ(PP1)
PP1 では主人公はなにかしらの危機に遭い、問いが投げかけられます。
その問いを作り出したり、選択の結果を垣間見せるための犠牲者や、選択肢に偏りを作るための対抗者が登場します。
1.4.3. 「葛藤A」
「葛藤A」では PP1 の問いに対して、解決しようと模索します。でもまあ上手くいかないんですよね。いったらお話し終わっちゃいますんで。ここで主人公はちょっとションボリします。
なのでここではその試行錯誤に付き合ってくれる協力者や、あーせいこーせいと言ってくる指示者が登場します。
1.4.4. ミッドポイント(MP)
MP は、いわゆる急展開。これまでの試行錯誤が逆効果となって、なんかしらとんでもないトラブルが発生します。ただしこれはクリアできるトラブルで、ここを乗り越えて一時的に自信を回復します。
ここではトラブルの大本になる敵対者、そいつの犠牲者、主人公の協力者、あと場を引っ掻き回す対抗者なんかが登場します。
1.4.5. 「葛藤B」
「葛藤B」では MP を乗り越えて自信をいくらか取り戻した主人公が、目標を明確化させます。どうしたらミッションクリアじゃ! というのを決めるわけですね。そのために顕在化するトラブルを解決しながら前に進みます。
ここでは目標を決めたり、目標達成のための方法を提示する指示者、そのために主人公に協力してくれる協力者や、間接的に助けてくれる援助者、あとまあヤバさを見せるための犠牲者なんかが登場します。
1.4.6. プロットポイントⅡ(PP2)
PP2 で、主人公はラスボスの行動を目の当たりにします。論争の場面ですが、どっちかというと感情面でのぶつかり合いをするシーンです。そこで主人公側の価値観が揺さぶられます。揺さぶられながらも、最後にはやっぱり覚悟を決めて信念に基づいた行動を取るわけですが。
ここでは主人公と対抗者、あとまあ揺さぶられる主人公を支える協力者が登場します。対抗者じゃなくて敵対者の間違いじゃねーかと思うかもしれませんが、ここでは感情こそぶつけ合うものの、完全決着のための戦闘などの行動はまだ行いません。なんでまあラスボスのラベルは対抗者だったりします。
1.4.7. 「決着」
まあ、ラストバトルですね。戦ってください。以上(笑)
当然ここには主人公と敵対者、あと主人公の協力者が登場します。
1.4.8. エンディング
主人公が何を得たのか、何を失ったのかを語りましょう。
1.5. NPC を主人公にする場合
NPC を主人公にする場合、PC をどうするかという話になりますが。
1.5.1. ヒロインが主人公の場合
[1.4.] のモデルを使用し、ヒロインを主人公にする場合、PC は協力者や指示者、援助者などのポジションになります。いや犠牲者にしてもいいけど(笑)
イベントはヒロインに対して発生するので、PC はヒロインを助けられるポジションに置いておきましょう。
1.5.2. 敵ボスを主人公にする場合
敵ボスを主人公にする場合、PC は対抗者や敵対者になります。
敵ボスの物語についてはマスターシーンで語られますが、これについては序列(順番)を入れ替えてしまう方法もあります。
どのタイミングで、敵ボスの行動理念/価値観を参加者の腑に落ちるようにするのか? というのが見せ所なので、それがどの場面なのかというのは、見せ方によるわけです。まあ大体「設定」で開示する「大切なもの」と、その顛末(大抵どこかで失われる)のどっちかを最後に持ってきたりするわけで。
1.5.3. ラスボスになるヒロインが主人公の場合
突如現れた第三の選択肢(笑)
まー取り扱い注意のラベルが貼られるシナリオだけどね。
とはいえこれもまあ、基本的には[1.5.1.]と[1.5.2.]のあわせ技というだけなので、やってやれない話ではないわけです。
2. どっとはらい
以上、疲れたのでオチマイ。