[memo] (T)RPGとLARPの扱うフィクション

ちょっと他所で話を振られたんですが、長くなったんでこっちで回答しときます。

!!Caution!!

予め断っておきますが、本記事における (T)RPG と LARP の認識は、あくまで僕個人の経験によるものだし、特に LARP なんかは前世紀に USA の友人と WoD 系(主に VtM と WtA)や DnD 系のルールで遊んだ数少ない体験と記憶、後は伝聞がメインなので、現在遊ばれているものとはぜんぜん違ってるかもしれません。悪しからず。

LARP という遊び

ライブイベントの価値の向上*1特に今世紀に入ってからの鮮明で高密度な記録が廉価で量産可能となったことに依拠するものや、活動組織の発足、普及活動の活発化と共に認知度を高めていった LARP。

ともすれば (T)RPG と競合しうるその娯楽の広がりに、かつて M;tG に庇を貸して母屋を取られかけた記憶をくすぐられる人もいるかも知れない。

両者とも天(時間)地(空間)人(人間)を贅沢に浪費する娯楽であるため、今あるパイ(可処分資源)をきっちり分けたつもりでも、どちらかに偏りが生じているように見えてしまってもまあ、仕方がないと思う。

ところで (T)RPG と LARP という二つの遊びは、共にフィクションの中に揺蕩う娯楽という点で同じなのだけど、それがどのようなフィクションであるのかという点で大きな違いがある。そのあたりを理解して扱えば、変にバッティングすることもないんじゃないかと思う次第。

身体性と社会性

先に結論を書いておくと、相互の優位は以下の二点になる。

  • (T)RPG は身体的なフィクションにおいて LARP に優越する
  • LARP は社会的なフィクションにおいて (T)RPG に優越する

個人的に面白いと思うのは (T)RPG は言語というツールによって遊ばれること、対する LARP は身体というツールによって遊ばれることを特徴とするのに、実際の自由はその逆であるという点なのだけど、まあそれは置いておくとして。

身体的フィクションに強い (T)RPG

(T)RPG の扱うフィクションのうち、最も大きなものは身体性だ。自分の身体によって表現できないことを、発話/作文というツールによって代替する。また他者の身体に代表される物理空間への影響も、想像の中でなら幾らでも演出することが出来る。

たとえば《爆裂火球》の魔法が投射された時、 (T)RPG でならその結果を言語によって描写することが出来るし、爆発に巻き込まれた被害者が激しく吹き飛ばされる様子も、その後の悲惨なありさまも具体的に記述できる。それは言語情報の中で一貫した処理が行われるため、フィルタリングによる情報ノイズが発生しないという点で強固だ。

対する LARP でも、同じように《爆裂火球》の呪文を唱え、投射することはできる。そして爆発に巻き込まれた被害者であるプレイヤーも、相応の演技をしてくれるかもしれない。しかしそれは、怪我をしないよう穏当な表現に留まってしまう。現実の空間を介し、言語情報と視覚情報を往還する間に発生する情報ノイズが、却って描写を阻害してしまう点において、 LARP は (T)RPG に及ばない部分が確かにある。

――とはいえ《爆裂火球》の実際の効果など誰も本物を見たことがないので分かるはずもない、といった意見もあるだろう。そうしたときは、もっとシンプルに「ガス爆発」と書き換えても良い。

社会的フィクションに強い LARP

LARP の扱うフィクションのうち、最も大きなものは社会性だ。装束を整え、発話に加えて身振り手振りといった身体表現によってプレイされる LARP は、それがゲームシステムの世界設定に沿ったものである限り、現実の社会規範から逸脱したものであっても許容する空間を形成する。

なんらかの極端な振る舞いを思いついた時、社会化された人間はまず、それが現実の社会規範(常識や良識)から逸脱していないかどうかをフィルタリングする。そしてそのフィルタリングに抵触したものであった場合、それを抑制する。そのフィルタを、視聴覚情報を書き換えることで希釈し、ゲームの舞台に則したもので上書きする。それが LARP の強みだ。

もちろん (T)RPG も、現実の社会規範から逸脱した振る舞いを許容する。問題はその範囲で、 (T)RPG はあくまで発話の中でのみ許容されるのに対し、 LARP は身体より範囲を拡大している点において圧倒的に強い。

――こう言うと「いや (T)RPG でも仮装してプレイすることは出来る」と反論する方がいるし、それ自体について特に否定しない。ただ LARP は参加者全員が(可能な範囲で)仮装するし、誰もがプレイの際に身振り手振りを必要とする、というルールによって、より強く現実の社会規範から開放してくれる部分がある。
(同じようなルールを (T)RPG に持ち込むことは可能だが、そうするとそれは LARP と何が違うのかということになって、まあそのくらいの距離にいるんですよって話なんだけどね)

越境するのか特化するのか

個人的には、こうした特徴を持つ二つの遊びが、それぞれどういった娯楽の演出技巧を開発していくのかというのは、ちょっと興味のある話で。

簡単に分けると、越境する(相手の長所を取り込む)のか特化する(自分の長所をより伸ばす)のか、どっちを選択するのかということになる。越境して混ぜ合わせた遊びを生み出してもいいし、より先鋭化していくことも可能だろう。ここにボードゲームを加えても良い。

LARP の登場(というか普及)はアナログゲームを特に社会性の面から拡張するもんだと思うので(身体性についてはアクション系のボードゲームやパーティゲームもある)、それがその他のゲームにどう影響していくのかー? というのが気になってます。

といったところで、今日はここまで。

References   [ + ]

1. 特に今世紀に入ってからの鮮明で高密度な記録が廉価で量産可能となったことに依拠するもの