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2016/12/10
- otneg
- これも久しぶりだあね。
- shinofusa
- 必要なくなったと思ったのにね。
- otneg
- まあなっちゃったもんはしょうがない。お手数おかけします。
- shinofusa
- 踏み倒しは認めない方向で。
- otneg
- アイアイマム。
- shinofusa
- で、今日はどんな話にするわけ?
- otneg
- どうしようかねえ。
- shinofusa
- テーブルトークの話は、なんかある?
- otneg
- ネタはあるんだけど時間が取れなくて書けてない話とかは、たくさん。
- shinofusa
- やっとく?
- otneg
- そうだねえ。じゃあ遊び方が昔とまるっきり変わってる話、あたりから。
- shinofusa
- ああ、変わったよねえ。
- otneg
- 変わったよなあ。同じシナリオを何度も遊ぶとかね。バトルゲームとしては当然有ったものなんだけど、それがストーリーゲームとしても遊ばれるようになったっていうのは大きいよね。視点としてはいくつかあるんだけど、やっぱりサイコロ・フィクションが大きな転機だったんだろうなあっていう。
- shinofusa
- SRSじゃなくて?
- otneg
- SRSを見るならシナリオクラフトかなあ。そもそも論としては、RPGがどうのって言うよりストーリーコンテンツの娯楽性そのものの変化っていうのがまずあったんだけども。あ、この話はあくまで僕がそう見てるってだけで、単なる俺史観で経験則なんで。念のため。
- shinofusa
- 大事(笑)
- otneg
- 言っとかないと面倒だから(笑)。ああ、でもちげーよって人はその人なりのゲーム史観を語ってくれたら良いと思う。色んな見方があるよ、色んな楽しみ方があるよってのが、いちばん大事なんで。
- shinofusa
- うん。
- otneg
- でまあそういうことで、その流れの根っこを探すと、多分とんねるずあたりまで遡る。
- shinofusa
- とんねるず? ノリタケ?
- otneg
- うん。話的には石橋の方が強いけどね。実際にはもっと昔からあったお笑いのメソッドなんだけど、名付けの魔法でごっそりやられた。ていうのは「お約束」ってやつ。
- shinofusa
- ああ。あれとんねるずだっけ。
- otneg
- 業界用語としては昔からあったのかもだけど、エンドユーザーに概念ごと普及させたポイントに居たのは、確かとんねるずだったはず。楽屋ネタを外に持ち出してきて、メタな笑いを定着させたのがとんねるず。
- shinofusa
- 「元サヤ」とかもそうじゃなかったっけ。
- otneg
- そうだった気がする。あれは「紅鯨団」だっけ?
- shinofusa
- そうそうそう。「みなさんのおかげです」より前だよねあれ。
- otneg
- いや開始は確か「紅鯨団」が先だけど、「おかげです」と並走してたからなあ。当時めっちゃ売れてたからねえ。
- shinofusa
- ダウンタウンより前?
- otneg
- うん。いや、かぶってるか? ヒストリー的には前だと思うけど。あれ「お約束」って、電波に乗って消費サイクルが早くなっていった一発ギャグを、少しでも長く笑えるようにもう一息おっかぶせたパワーワードで。最終的にはその「お約束」自体がネタとして消費されて陳腐化したたわけだけど、お笑い文化としては一つターニングポイントになってて。
- shinofusa
- とんねるず以前、以後、みたいなのはあったよねえ。
- otneg
- そうそう。今はもうダウンタウンに塗りつぶされた感じもあるけど、その前にとんねるずが居て。てかとんねるずでメタ視点で楽しむ笑いに馴染んだ観客に、今度はまっちゃんのメタ視点から評価する笑いが刺さって陳腐化された感じ。この辺で完全にダジャレとオヤジギャグが叩き潰されて、コミュニケーションのメソッドまでまるごと入れ替えられてるんだけど、まあそれは置いといて。
- shinofusa
- てかそれゲームの話?
- otneg
- 最終的には。てかさ、RPGって結局エンドユーザーの持ち寄ったネタの闇鍋みたいなもんだから、どういうネタを持ってきて、どう楽しむのかってモデルなわけで。
- shinofusa
- 昔やってたTRPG東西お笑い文化論みたいな?
- otneg
- 有ったねえ。今はそうでもないってか、そもそもSNEがボドゲ側にシフトしていってるんで、比較も何も有ったもんじゃないんだけど、90年代のSNEのゲームとFEARのゲームって、根本的に遊びどころというか、楽しむところというかにズレがあったと思うんよ。どっちもお笑い文化とのリンクが強くて、西の漫才芸と、東のコント芸の違いみたいな。生放送と録画というか。
- shinofusa
- 冒企さんは?
- otneg
- 冒企ゲーはそこから一歩離れて、まずコンポーネントとの親和性が土台にあるからなあ。アップルベーシックとか、まずあのサイズの新書として出すとしたらどうか? みたいな。本を読む楽しさとゲームを混ぜ込んだら? とか。それが今のサイコロ・フィクションに流れてたり。サタスペもルールブックからして同じライン上にいるし。そういう意味ではあそこはずっとボドゲ畑って印象が強い。
- shinofusa
- なるほど。
- otneg
- 舞台芸とテレビ芸として見ると、ショープロレスとかともちょっと重ね合わせて見てみたら面白いかも知んないんだけども。詳しい人が居たらプロレス技の歴史とかでちょっと聞いてみたかったりもする。テレビとサブミッションとかの。
- shinofusa
- カメラが寄れるようになったから関節技が見えるようになったとか?
- otneg
- そうそう。昔はリングサイドのかぶりつきで見るしか無かったから、サブミッションなんかは何やってるか分からないくせにダメージだけあって評判が悪かったって話。テレビになってカメラがパンするようになると、サブミッションは撮りやすいし、レスラーの表情もハッキリ映せるから、ちゃんと使える技術になったとか。
- shinofusa
- でもやっぱ大技の方が人気ない?
- otneg
- そりゃあ音があるから。
- shinofusa
- ああ、そうか。
- otneg
- サブミッションでもスタンプで音を作ったり、工夫はされてるんだけどね。
- shinofusa
- あと関節技ってやっぱ手加減しやすそうってか、実はきまってないでしょ、みたいなの、ない?
- otneg
- あれはレフェリーとのやりとりもあって、こう、きまってない、きまってない、きまった? 耐える? まだ? いける? やばくない? 返せる? 頑張る? 大丈夫? あダメきまったー! ダメだったかー! みたいな細かいやりとりを楽しむもんだから(笑)
- shinofusa
- そうなんだ(笑)
- otneg
- そうなんです(笑)。まあそれだけじゃないんだけど、やっぱその辺カメラの影響って大きくて。でもやっぱ大技の方が、てのは仕方がないと思う。そうであってくれた方が、興行単体のクォリティで考えると大事なんじゃないかとも思うし。
- shinofusa
- どういう話?
- otneg
- お金の話。
- shinofusa
- ああ。昔プライド観に行ったとき、リングすごい遠くて、モニター見てるだけだからこれ家に居ても同じじゃん、とか思ったりしたんだけど。
- otneg
- でも他の見知らぬお客さんたちと一緒に盛り上がったりってのは、やっぱ会場でないとってのもあるわけでさ。
- shinofusa
- それはまあ。
- otneg
- 純粋に試合が見たかったら家でテレビ見てる方が良いわな。面倒もないし。
- shinofusa
- だよね。
- otneg
- その辺はライブの価値というか、楽しみ方の違いだからなあ。しょうがない。
- shinofusa
- だよね。
- otneg
- それはそれとして、サブミッションが評価されるようになって、痛みが観客にも分かりやすいレベルに降りてきたのがプロレス最強論につながって、色々と変な視点を呼び込んじゃったじゃないかなー、とか考えるともにょるものがあったりもして。
- shinofusa
- そうなの?
- otneg
- いや適当言っただけ(笑)
- shinofusa
- おい(笑)
- otneg
- まあ、えーと、なんだっけ。
- shinofusa
- なんだっけ。「お約束」?
- otneg
- あ、そうだSNEとFEARの遊びの違い、てか遊び方が変わった話だ。
- shinofusa
- 一度放っておいてどこまで脱線するかやってみたほうが面白いかもしれない(笑)
- otneg
- やめてください死んでしまいます(笑)
- shinofusa
- (笑)
- otneg
- で話を戻すけど。遊び方が変わったってのは、ひとつはゲームマスターの役割が変わったっていうのもあって。昔はゲームマスターが語り手、語り部で、プレイヤーはただ行動を宣言して、後は聞き手だった。みたいな。
- shinofusa
- ああ、たしかに。そんな感じだったよねえ。でもあれ最初からそうだったの?
- otneg
- どうだろ? 最初の最初は違った、てか多分ボドゲと同じような遊びだったんじゃないかね。ボドゲやりながら、適当にキャラクターを演じて場繋ぎをするっていう。
- shinofusa
- 『D&D』とか、そんな感じだよねえ。あれやっぱリプレイがターニングポイント?
- otneg
- なんじゃないかなあ。誌上リプレイ、『ロードス島』のあれあたりが起点で。文化史として整理すると、リプレイによる一般化を第一世代とするなら、それ以前の黎明期、ゼロ世代があって。ゼロ世代のアウトプットはルール処理が中心で、ストーリーが明確化したのが第一世代とか。
- shinofusa
- そんな感じかあ。じゃああれは? 七つの祭壇。
- otneg
- あれは評価が難しいんだよなあ。メタギャグの持ち込みはあの頃からもう有って。
- shinofusa
- 有ったっけ?
- otneg
- 確かインディージョーンズとかスターウォーズとか、あの辺の映画ネタが入ってたと思う。
- shinofusa
- 時代だなあ。
- otneg
- だねえ。だからまあ当然ではあるんだけど、RPGは、少なくとも国内のRPGは、まずメタ遊びから始まってるというか。そういう標本としての価値付けになるかねえ。
- shinofusa
- なるほど。で、『ロードス島』でストーリー化とキャンペーン化があって。
- otneg
- そうそう。それはゲームマスターの負担が大きくて、代わりにプレイヤーのイニシャルコストは低かった。その辺がまあ一人度胸のあるやつがいれば始められるっていう敷居の低さにもなったし、負担が一人におっかぶさって長続きさせるとスキルの偏りが大きくなるって問題にもなったし。
- shinofusa
- わりと今まで続いてるよねそれ。
- otneg
- だね。そのレトロモデルを認識させたのがストーリーテラーシリーズで、これはそのまま、ゲームマスターの呼称にストーリーテラーって言葉を持ってきたのが大きい。
- shinofusa
- さっきの「お約束」みたいな。
- otneg
- そうそう。それまでにもキーパー、レフリー、ダンジョンマスター、ゲームマスター、ディレクター、ルーラー、なんてのが有ったんだけど、GMがストーリーテリングをしてるってはっきり明示したのがストーリーテラーで。ただ実際にストーリーテラーがストーリーテリングする役割かっていうと難しかったりもするんだけど。
- shinofusa
- あれでしょ、プライオリティの話とか。ゴールデンルールみたいな。
- otneg
- そうだね。GMが何をするのか、何を入力、計算、出力するのか、みたいなガイドを明示したって点で意味があったんだと思う。で、このモデルを後生大事に抱えてきたのがSRSで。フェイズプロセッションモデルってのはその中でどうにかGMの負担を減らそう、てアプローチなんよね。ビジネスモデル上、シナリオの価値を一定以上に保とうとするとそうなる、みたいな都合もあるのかなあ、とも思うんだけど。
- shinofusa
- ふんふん。
- otneg
- でまあそのGMの負担を減らす工夫として、それとは別のアプローチとして資源管理ゲームを導入したのがサイコロ・フィクションやシナリオクラフトで。具体性をゲームからある程度切り離して、抽象的な、アブストラクトゲームのレヴェルを一枚下敷きにして。で、GMの担当するゲームデザインの範囲をそっちのボードに限定化して、物語る遊びの部分をプレイヤー側に一部開放した。
- shinofusa
- あれでもさあ、プレイヤーが色々語れなくちゃいけなくなっちゃった、みたいな。古いプレイヤーからすると、そのへんちょっとハードル高く感じるとか。
- otneg
- うん。正直あれだ、僕も今の遊び方でプレイヤーやれって言われたら結構きついと思う。今はプレイヤーの方がハードル高くなってる気すらする(笑)
- shinofusa
- そこまでじゃないとは思うけど(笑)
- otneg
- いやほら、僕はもともとプレイヤーの経験値少ないから(笑)。だからそこで同じシナリオを何度も繰り返し遊ぶことに意味が出てくるんだけどさ。ゲームプレイヤーのメモリマネジメントを考えた時、未来に備える、特に裏切りっていう時間芸術にありがちなどんでん返しに対して警戒する、備えるためにメモリの一部を待機状態にするようなセッションでは、そこにさらにストーリーデザインを待機させるのって相当きついわけね。だから先の展開をある程度知っている状態で、個々のシチュエーションをどうデザインするのか、てことだけに集中できるようにしてるわけで。
- shinofusa
- シチュエーションに集中するってあたりが、なんかすごくオタクくさいっていうか。キャラ愛とか、キャラ属性とかの、なんかそういう感じが(笑)
- otneg
- うん。それはちょっとわかる(笑)。その辺はざっくりとカラオケ文化、だったかな。新城カズマが『トーキングヘッズ』の何号だったか、学校というフェティッシュとかそのへんで、カラオケ的なものとして展開してた話があって。
- shinofusa
- 新城カズマって柳川さん?
- otneg
- そう、柳川さん。
- shinofusa
- それ今度読ませて
- otneg
- 仕事場に並べてるはずだから、言えば出してくれると思うよ。たぶん。
- shinofusa
- うん。
- otneg
- で、ええとそうか、どう。うーん。ちょっと待ってね。
- shinofusa
- はい。
- otneg
- ちょっと順を追って潜ってみるから、止まりそうだったら適当に相槌打ってね。
- shinofusa
- ほーい。
- otneg
- まず同じシナリオを繰り返し遊ぶっていうのがあって、それは何故かっていうとストーリーテリングの遊びをプレイヤーに一部解放したこと、それによってセッションの面白さ、楽しみ方を増やしたっていうのがあって。『蒼天航路』の天下三分みたいな。
- shinofusa
- ツァオツァオが喜んじゃう(笑)。俺の知らない天下があと二つ。
- otneg
- 正にそうそう(笑)。こう、それまで天下が一つだと思ってたユーザーが軒並みドーンとやられちゃった(笑)。で、これはゲームマスターのマスタリングポリシーとして「ストーリーテラー」って用語が定義されたこととか、プレイヤーのプレイング、提案をメタ評価する『レレレ』『ワープス』『ドラゴンハーフ』みたいな流れがあって。
- shinofusa
- その辺も洋ゲー由来?
- otneg
- 多分。まあ単純に先行者有利だったり、スタージョン的に数も多かったから多様化も進んでたし。あと当時は洋ゲー研究するのが当たり前、みたいな層もあったりして。てか御大とか銀さんとか、黎明期のトップランナーは大体洋ゲーも射程に捉えて言及してたから、知らなかったってことはないと思う。言語マルビは日本語版が出るまで待ちなさい、とかあったし(笑)
- shinofusa
- マルビ(笑)
- otneg
- うん。まあ80年代の話だから。影響がどうってのは本人たちにしか分かんないことだけど、とにかくそういう新しい遊びの提案がなされたわけだ。
- shinofusa
- なるほど。
- otneg
- そこからストーリーテリングの遊び、熟れたユーザーがドラマを遊び楽しむことに肯定的になって。この辺にさっきの「お約束」て言葉のメタ視点、天丼を肯定するメソッドが入ってくる。国内だと手探りでこれに挑戦したのが、ダイスロールをカードプレイにしてプレイングの強度を高めた『トーキョーN◎VA』からの流れが有って。並行して大本命の『トーグ』があって。
- shinofusa
- それ、時期的にはどの辺になる?
- otneg
- 『ドラゴンハーフ』が91年だから、その前後じゃないかな。『モンスターホラーショー』も国内では91年だから、だいたいその辺で、多分一旦飽きた人が出てきてた(笑)
- shinofusa
- 飽きちゃったんだ(笑)
- otneg
- 同じように遊んでたらどうしたって飽きるからねえ。フルキャンペーンもロードス除くとビッグネームの記憶はないし。ペンドラゴンは知名度低いし『セブンフォートレス』はまだだったと思うし。そもそも水野良がプロゲーマー以前に小説家として知られて、あっちは作家だから、みたいな諦めと住み分けちゃってた感じで。
- shinofusa
- リプレイは作り物だし、とか?
- otneg
- そうそう、それもあった。それでなかなか物語る遊びに踏み切れなかったユーザーも多くて。あくまで腕のいい人だけができる特別なゲーム、みたいな。
- shinofusa
- しかもそのためには特別なゲームマスターが必要で。
- otneg
- そうそう。そういう厳しいオーダーがマスターにおっかぶせられてた部分があったのよ。今世紀に入ってから敢えてそのレアリティを強調した『レッドドラゴン』とかもあったけど。そこからの解放として、たとえばSRSというかFEARは必死でメソッドの明文化を進めてるっていうのがあって。
- shinofusa
- 『D&D』もやってなかったっけ?
- otneg
- 超手厚くやってる(笑)
- shinofusa
- 流石『D&D』手強い(笑)
- otneg
- 『D&D』はいつだってガチだから(笑)。まあサードパーティー製のハンドブックってのは昔からあって、それは日本でも「よくわかる本」があったし、海外でも「フォー・ダミーズ」とかあって。雑誌でのサポートなんかは昔からだしね。メソッドの明文化については、継承を意識し始めたのが90年代の前半で、ライターの腕が上がってきたのが90年代中盤から後半ってことなのかなあ、とか。公式のサポートが大強化されたっていう点では違いがあるんだけど、それはたぶん『マジック・ザ・ギャザリング』の経験値がものすごく大きかったんだろうなあとか。
- shinofusa
- ギャザかー。あれでユーザーぶん取られたからなあ。
- otneg
- だよねえ。一時期はセッションやろうぜっつってんのにデッキ持ってくるやつとかいて喧嘩になったり。今となってはいい思い出だけど当時は本気で腹立ったからなあ(笑)
- shinofusa
- だよねえ(笑)
- otneg
- まあギャザはテキスト化、ガイダンスの重要性みたいな部分で大きな役割を果たしたわけだけど、それ以外にもターニングポイントになってる作品が有って、それが『トーグ』。日本では93年に発表された。ナラティブプレイの強いタイトルとしてはその前に『ガープス』もあるんだけど、こっちは膨大なデータがデッキビルドゲームっぽく目くらましになっちゃって理解されなかった。
- shinofusa
- 面白いんだけどね『ガープス』。
- otneg
- 超面白いんだけどな。まあそれはいいとして。
- shinofusa
- で、『トーグ』はどうして?
- otneg
- ドラマカードの形で、ストーリーを外からルールでコントロールする遊びを明示化したから。ルールが遊び方を優越したというか、限られたユーザーにしか許されない遊びじゃないことを見せつけたっていう。ルールがゲームマスターに勝ったっていうか。
- shinofusa
- 逆に言うとゲームマスターがルールに負けた?
- otneg
- そう。かつては極論するとゲームマスターがルールブックで、腕のいいゲームマスターのセッションはゲームシステムに従って遊ぶよりも面白いのは当然、くらいGMの優越があってさ。いや極論なんだけどね。
- shinofusa
- 念のため?(笑)
- otneg
- そう。念のため(笑)。で、だけど『トーグ』はドラマカードでGMの権限と責任の一部をプレイヤーに譲渡しつつ、ルールに従って遊ぶと面白いぞっていうのを見せつけたんだよね。ルールというか、参加者全員のゲームプランをまぜこぜにすると面白いってことなんだけど。
- shinofusa
- ああ。でもそれって腕のいいGMの常套手段じゃない?
- otneg
- そう。そうだよ。正にそのとおりで、それをゲームシステムとしてサポートしたから『トーグ』は勝利した。まあ日本ではある程度以上のゲーマーでないと接点がなかったとか、お手頃価格の角川スニーカー文庫パワーで『ガープス』が広がったんだけど。
- shinofusa
- 評価としては『ガープス』より『トーグ』の方が上なん?
- otneg
- システムデザイン面ではね。『ガープス』はその辺完全にユーザーに丸投げしてるから。ほんと上手い人がGMすると超絶面白いんだけどっていうレトロな不安定さが放置されてるから(笑)
- shinofusa
- (笑)
- otneg
- そこが面白いというか、各自それぞれのゲームプランの中で主人公になって好きに楽しんで良いですよっていう広さが好きなんだけど。だから好みで言えば『トラベラー』と二強で。なんだけど、客観的な評価としては、まあ、うん。
- shinofusa
- そうなんだ。
- otneg
- うん。まああんまりいじめんでください(笑)
- shinofusa
- (笑)
- otneg
- で、えーと。そうね、それで『トーグ』以降、プレイヤーにどう物語を持ち寄らせるかの挑戦がムーブメントになってさ。『熱血専用』とか『番長学園』とかは、そういう流れの中にあったと見ることもできる。
- shinofusa
- それが今の遊び方につながってるわけでしょ?
- otneg
- 正に正に。で、その遊び方に必要になるのが、ゲームプレイヤーのメモリマネジメント。これまで権限と一緒にGMにおっかぶせてきたストーリーテリングの負担が、局面ごとにプレイヤーに投げ返されるわけだから、そこをどうにかしましょうねってことになる。
- shinofusa
- まあ慣れてないとサッとは出てこないよね。ドラマっぽい演技とか。
- otneg
- そう。で、その頃にはまだシナリオは毎回新しいものを遊ぶのが普通だったんだけど、そんな毎回手の込んだドラマなんか作れないんで、苦戦した人は多かった。苦戦する中で離れたり諦めたりした人もいたんだけどね。
- shinofusa
- それはしょうがないでしょ。別に前の遊び方が悪いってわけじゃないんだし。
- otneg
- もちろん。ただ、やっぱり昔からあるものは古い、古いは悪い、みたいな考え方もあって、まあそもそも同じ遊びに飽きちゃった人たちもいたわけだから、その辺はどうしてもね。今のクトゥルフのムーブメントなんかは、そういうメモリマネジメント面でプレイヤーの負担が軽いって部分もあるだろうなあ、とか思ってるんだけど、そうすると当時諦めちゃった人はどう思うかなあ、とか。
- shinofusa
- 帰ってきた人もいるじゃん。
- otneg
- いたねえ。僕んとこも何人か帰ってきた。『ソード・ワールド2.0』の時も帰ってきた人いたし。まあ優劣は個々人の評価基準次第だからなあ。古いと新しいは簡単にひっくり返るし。
- shinofusa
- だあねえ。
- otneg
- そんな中でシナリオの構造化が進んでいった。シナリオ作るの大変だから。
- shinofusa
- 楽しようとしたわけだ(笑)
- otneg
- 必要は発明のナンプラーなので(笑)。古くは『ルーンクエスト・シティーズ』とか、『パワープレイ』の『白熊亭の一夜』みたいなランダムチャートで構成されたシナリオがあって。それに原作ものの『コンプコレクション』、『マギウス』シリーズとか、そこからのシナリオクラフトの流れとか。ほぼ並行して90年代前半のぽりりん劇場の様式美の普及から、95年の『新世紀エヴァンゲリオン』でのマニア的なアプローチの肯定化が重なってる。
- shinofusa
- ああ。「お約束」ね。
- otneg
- ヤー。それでその似たようなシナリオの繰り返しの中で、そうすると今度は個々のシチュエーションに対する審査、評価が始まる。それっぽさ、分かりやすさ、みたいな。「お約束」の陳腐化。まっちゃんの笑いだわね。
- shinofusa
- あ、それそれ。コミュニケーションが変わったっていうのは?
- otneg
- なんだっけ?
- shinofusa
- さっき言ってたじゃん。入れ替わったとか、なんか。
- otneg
- ああ。ダジャレ、一発ギャグ潰しか。元々はいまいち受けが悪かったネタに対するフォローというか、滑った芸人をいじって笑いを生み出すテクニックだったんだけど、その前提にはネタを評価する、面白かったかどうかを判定するプロセスが必要でしょ? それ以前は、つまらないダジャレでも一応笑っておきましょう、それがマナーですよ、みたいなのが有ったんだけど、審査して弄る笑いが普及すると、そのとりあえず笑っとけってのが消えちゃうわけで。
- shinofusa
- ああ。ずっこけとかの。
- otneg
- そうそう。
- shinofusa
- 新喜劇的な。
- otneg
- それそれ。それに対してどうなんかなあ、て混ぜっかえして別の笑いにする。元々はそういう芸ね。でもその辺がうまいことやれないと、笑いに厳しいというか、インテリごっこの楽しさから、簡単にマウンティングになるんだよねこれ。何にでも優劣をつけようとすると、場がピリピリしやすくなるしさ。ダジャレなんかも口にするだけでリスキーになっちゃったし。
- shinofusa
- そういうの好きだもんねえ。
- otneg
- 笑える、笑っていい環境って大事だと思うんだけどね。ポリコレ棒とか、弱者の聖剣というか、扱いの難しい話ではあるんだけど。
- shinofusa
- やりすぎると順に切り捨てられていくんだろうね。
- otneg
- だろうねえ。まあ政治の話は百害あって一利なしなんでポイするとして、本来はフォローの技術としての笑いが理解されないまま単純化されて、コミュニケーションを相互に審査する、もっというとマウンティングのツールにされちゃったりして。子供のいじめのパターンで、あいつつまんない、ていう暴力とか。
- shinofusa
- あー。
- otneg
- ゲームに持って返ってくると、あれだ。『ガープス』で軍拡して喜んだりデータでマウンティングしてゲームぶち壊しにようなもんね。そこじゃねえんだよっていう。
- shinofusa
- 『クトゥルフ』でもない? やたら銃器持ちたがったり。
- otneg
- あったね。
- shinofusa
- だよね。ダイナマイト抱えてダゴン殺したり(笑)
- otneg
- あったあった(笑)。d20版だっけか。あれについてはプレイングの方法論として、山本さんの『クトゥルフハンドブック』でやり方を考えろって話があって。
- shinofusa
- ツイッター見てると今でもありそうだよあれ。
- otneg
- あるんだろうねえ。若い子増えてるわけだし。
- shinofusa
- だよね。
- otneg
- とはいえ楽しみ方は人それぞれだし、そもそも『クトゥルフ』のリプレイ動画が流行ったのって、そういうバイオレンス要素を切り離せなかったりするからなあ。現代で等身大のヒーローになれるぜ的な。あとダイスロールでクリティカルとファンブルの面白さとか。
- shinofusa
- 手軽にヒーローになれそうだもんねえ。
- otneg
- それはそれで楽しいんで、そう遊びたいってんならそれはそれで構わないとは思うんだけど。そもそも正しい遊び方がどうたら言うのも簡単にマウンティングになるわけで。だから自分が楽しいと思うことを言葉にして、住み分けましょうねって言うんだけどさ。
- shinofusa
- でも正直それもめんどくさいんだけど。
- otneg
- しょうがない(笑)。それはしょうがない。遊びだからね。
- shinofusa
- だよね。
- otneg
- 楽しんでなんぼだからね。
- shinofusa
- といいつつあんなの書いたりしてるじゃん(笑)
- otneg
- まあねえ。読本もさ、基本的には君は一人じゃないよっていうエールだから。
- shinofusa
- あ、そういうもんなんだ、あれ。
- otneg
- そういうもんなのよ。昔からゲームマスターって孤独でね。特にセッションの出来の責任をおっかぶせられたり、シナリオを一人で作らなくちゃいけなかったり、みたいな。そこでしかも誰も良し悪しの基準を用意してくれないじゃない。健全なコミュニケーションを取りましょう、みたいなガイドはあるんだけど。僕らの世代は、更にそこでマイナーな遊びとして、インドア、イコール根暗、みたいな偏見もあったりしたし。
- shinofusa
- ああ。
- otneg
- そんな中で、一人でゲームマスターをやってて、あれが楽しい、これが楽しいっていうのがさ、他の人に言いにくいわけね。特に時間芸術としてのシナリオ、ストーリーコンテンツ、ストーリーテリングを考えると、びっくりさせること、びっくりさせたい、みたいな欲もやっぱり出て来るし。
- shinofusa
- それはあるよね。
- otneg
- 今はそこで最初に相談しておきなさいね、ぶっちゃけてしまいなさいって言うんだけど、やっぱ素でびっくりさせたいことだってあるだろうし、仲間内で遊んでるとコンベンション向けのメソッドだけでは足りなくなることってのもあったりするわけ。
- shinofusa
- なるほど。
- otneg
- あとまあ、そういう正しいことを言う人も、昔はそうじゃない遊び方で散々楽しんできてたりして。そういう古い楽しみ、原始的な楽しみをうっちゃって、新しい、きれいな楽しみだけを語られるとさ、それはそれで窮屈で。自分の根っこにある楽しみがそこから外れてると気付いた時に、そこでドツボにはまって身動き取れなくなっちゃうことがあるわけ。
- shinofusa
- うん。
- otneg
- だからまあ、そういう遊び方もされてきたし、そういう人は他にもいるよ、少なくともここに一人はいるし、それでも楽しんで今まで長く遊んでこれたよって話はしておきたいなと。
- shinofusa
- うん。でも悪いところも書いてるよね。あれは?
- otneg
- だって書かないと嘘くさいじゃん(笑)
- shinofusa
- (笑)。らしいって言うか、なんてか(笑)
- otneg
- 煮詰まっていくプロセスって、どれだけ肯定的に励まされても、自分で否定的に見ちゃうから、そういうのって簡単に無効化されやすいんよね。だから最初からマイナスも見せて、そういう見方もあるけど、プラスな見方もあるでしょって整理して、肯定しながらマイナスの解消法に目を向けた方が、みんな幸せになれるんじゃないかっていう。
- shinofusa
- なるほど。
- otneg
- 他人の目を気にするようになる、アイデンティティが芽生えたとき、比較しちゃうわけだ。比較して、審査して。審査ってのもね、今はほら、リプレイ動画があるから、テレビのお笑いみたいに比較対象があるわけ。そこで比較するし、比較される。ほんとは気にする必要ないんだけど、必要云々でなくそういうのって気になるもんだし。
- shinofusa
- それはそういうもんだよね。
- otneg
- そういうのはね、しょうがない。だからまあ、その中でもやってることは同じですよ、同じ構造ですよって解体してみて、そこから自分との違いを考えたり、あれこれ模索したりっていう、そういう考える土台になればいいなっていう。読本はそういう感覚で書いてる。もちろん誰にでも使えるものではないと思うけど。
- shinofusa
- 固いしね。
- otneg
- 柔らかい話は色んな人がしてるからね。まあでも、まあ、うん。そもそもさ、深く考えたり、ちゃんと整理したりっていうのもさ。下手に整理すると、それ面白いの? みたいに自縄自縛と言うか、それ以外の価値観とバッティングして素直に楽しめなくなることもあるわけで。だからあれが正しいのかと問われると、回答に困る部分はある。気楽に遊べれば、それが一番だと思うし。
- shinofusa
- だよね。
- otneg
- 僕も深く考えるのは苦手なんで(笑)。ああ、もう時間が。
- shinofusa
- やっぱり。脱線しすぎなんじゃない?
- otneg
- といっても話したかったことだからなあ。まあいいや。じゃあ今日はこのへんで。
- shinofusa
- はい、おつかれさまでした。
- otneg
- おつかれさまでした。ありがとね。