ちょっと思ったんですけども。
CoC のブームから再び (T)RPG に火が付いて活気が出てきました。
ご新規さんがたくさん増えて、いろんな人たちが主にオンセで (T)RPG を遊ぶようになってきたみたいです。
冬を超えて健康を取り戻しながら、往時の活況ほどではない、安定感はあるけど爆発力のない、どことなーく停滞感のあったムードが吹き飛ばされた感じ。
いいね! すごくいいね! ってなもんです。
ページの内容
ノウハウへのアクセスポイントは?
んで、めっちゃ活況なのはイイんだけど、ノウハウのインフラがね、昔の口伝式にかなり近いところまで戻っちゃってる気がするんですよ。
かつてブログやSNSで論考を展開していた人たちが、 Twitter 普及以降くらいからパッタリ手を止めている感があって。
もちろん Twitter で色んなツイートを展開してる方たちもいないわけじゃないんですが。
でもほら、 Twitter って流れ消えるメディアじゃないですか。
もちろん Togetter にまとめられている一部のツイートは残ってるわけですが、それも雑誌よりもアッサリと話題から立ち消えて忘れ去られているような気がするんですね。
この辺、 Togetter での検索がノイジーなことや、あるいは Google の検索結果がクソまとめサイトやバイラルメディアに圧倒されて、検索性が悪化してるってのもあると思うんですが。
そんなんでテキストによるノウハウの継承が裁ち切れになってる感があるんですね。
そこで代わりに、ブームの火付け役にもなったニコ動のリプレイ動画やなんかで、ちょっとしたノウハウの開示が有ったりして。これって昔リプレイ本で見たヤツだ! みたいな(笑)
後はニコ生を始めとするライブ配信でダラっと喋ってる人たちが居たり。でもこれは見てる人が少ないんで、やっぱりサークルでの口伝とか、コンベンションでのトークくらいの広がりしか無い。
古い人間としてはこの現象、面白くは有るんだけど「ええんかいな」と思わなくもなくて。
もちろん自分のアンテナがボロっちくて、拾えてない流れがあるだけなのかもしんないんだけど。
ご新規さんたちをちゃんとマーケットに組み込めるのかしら?
CoC のファンを (T)RPG のファンに広げる導線ちゃんと引けてる?
……とか、ちょっと不安になったりもしていたり。
まーこんなしょーもない懸念なんか笑い飛ばす勢いで、上手くやってくれるんでしょうけども。
それともう一つ
もっと根っこのところで気になってる話として。
『クトゥルフ神話TRPG』のブームで (T)RPG 人口は増えたはずなのに、 CoC で遊び始めたユーザが他のゲームシステムに広がって言ってない気がする。それはどうして? みたいな話。
あくまで個人的な意見であって一般化できる話ではないんだけど、ぼんやりシーンを眺めている傍観者の意見として。
今風のシステムの要求レベル
CoC から横に広がりにくい現状、まあ一般化できる話ではないんだけど個人的な感想を整理しておくと。 一頃ブームになったりプレイ動画って「お化け屋敷」の面白さで。ただ歩くだけで様々な仕掛けが動いて、指示通りにサイコロを振ったり英雄的に行動すれば、それだけでヒーローになってるのね。物語の核の部分は、ナレーションとか GM の語りとかで補完されてるから。
これってどちらかといえば CRPG ライクなライナーモデルなんだけど、この遊び方って、現在界隈で主流のぶっちゃけと相談、みんなで物語を持ち寄ること前提の遊びとは「PL に語りたい物語を要求されるか否か」って点で大きくズレてて。
もちろん最初から物語持ってる人もいるし、「オヤクソク」って言葉や「天丼」の笑いがバラエティから定着していった流れで、昔よりもずっとシチュエーションパターンを自分で語れる人間は増えてるのよ。だから完全に昔のままって訳ではなくて。という前提はあるんだけども。
そもそも語りたい物語を持ってない、あるいは明確な形にすることができない人ってのも結構いるんじゃないか? ってのがあって。そういう人たちには今の(実際には少し前のだけど)スタイルのゲームって遊べないのよ。必要なものを持ってないから。その辺、今の遊びってすごく難しくて。
そういう「語りたい物語を持ってない/整理できないPL」って、昔は結構な数が居たというか、GMが語ってPLが聞く、みたいなスタイルのセッションも僕が初心者だった80年代末あたりにはごくごく当たり前だったわけで。
当時は僕らもリプレイの真似と、後は淡々と判定を処理するくらいしかできなかった。そこから少しずつ似た物語のアーカイブを蓄えていって、必要に応じて展開、編集しながら細分化、データベース化を身に着けていったのね。まあこのアーカイブからデータベースへの流れは、現在「パターン」「オヤクソク」の肯定によってより容易にはなってるし、ストーリーコンテンツが飽和することで読者/視聴者の目が肥えていく過程で、語るスキルの取得者総数は増えてるのだけども。
話題性
それからごくごく単純な話として、話題性が有るかということ。これは「話題にする価値があるか?」と言い換えてもいい。
ぶっちゃけると、リプレイ動画から入った人たちの中には「CoC を遊んだ」という体験を話題として持つことに価値を見出してるケースがある。
体験型アミューズメントの価値のひとつは「後日その体験を話題にできる」ってのがあって、これは日本人がお行儀よく行列に並んだり高速で渋滞につかまったりしてまで物見遊山に行く性質なんかとも強く結びついてて。モナ・リザ来日時に、芋洗いのような人混みの中を押し流されるように歩きながら「遠目になんとなく見る」くらいしか出来ないものをわざわざ見に行った人が、後日「見に行った」「すごい人混みだった」「なんだか分からないけど凄かった」という体験を話題にするアレ。
で、そうするとまず「他のゲームシステムを遊んだ」ということが話題性を持つか、それを話題にする価値が用意されてるか? というのがあって。その価値を作って導線を引いてやらんことには、わざわざ海の物とも山の物ともつかないゲームに手を出して辞めたくても辞められない針のむしろで数時間過ごしたい、なんて物好きはそうそう居ないでしょうよ、とか。
昔話をすると、国内での (T)RPG の爆発には「ロードス島戦記」っていう魅力的なコンテンツがあって、リプレイなり小説なりが面白くって、「あれを自分も体験したぞ」と話題にできる、もっと言えば自慢できるっていうのがあった。最初に遊んだ人はスゲーってなるし、後からって場合もそのスゲー人の仲間入りが出来た。そういうミーハーな導線を、ちゃんと用意してたのかなって。
そういう意味では『レッドドラゴン』で使ったシステムちゃんとして販売してれば、もっとガッツリやれたんじゃないかしら感も強かったり。
(T)RPG っていう遊びの広報を考えると、業界側はこれから色々と攻勢仕掛けてくれよと期待したいところ。エンドユーザの努力に丸投げとか市場にホワイトナイトを求めるだけとかは勘弁してよね。せっかく拡大再生産のサイクルに入れそうなんだからさ。