[Comic] ヴィンランド・サガ(14)、軍靴のバルツァー(6)

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息抜きに本屋に行ったら出てたので買ってきました。

以降感想。ネタバレは特に避けません。
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**軍靴のバルツァー (6)[/pukiwiki][pukiwiki]

ヴィンサガがあるんで軽めに。

冒頭で前巻を思い出して、「騎兵に追われて方陣による斉射→森へ退却」の流れってやっぱり『皇国の守護者』の北領戦だよなァ? なんてことまで思い出したりしつつ。

戦場の技術革新は戦線や経済力への影響が大きなところだけど、鉄条網+機銃による騎兵の封殺から、さて次はどうなるんだろーかと思ってたら、戦場は打って変わって外交の場へ。

研究者としてのバルツァーが、鉄条網と機銃の戦術運用について論文を書いて、その反響とかもどっかで出てきたらいいなーとか、バルツァーには当分はそんな時間も取れそうにないなーとか。戦闘報告はしたみたいだけども。

なにしろ一度の勝利で戦術がまるっと変えられるわけじゃない。あれこれ決めなきゃいけないこともあれば、訓練せにゃならん兵士も、生産せにゃならん兵器もあるわけで。しかし確実に騎兵不要論は進むし、となると戦場もそう遠くない未来には様変わりしていくだろうし。

塹壕があり、大砲があり、鉄条網があり、機銃がある……となるとつまり、もっと人がたくさん死ななきゃならない戦場ができあがるわけだ。しかも鉄道の敷設が進んでいるとなると、本当にもう見事なまでにプロイセンなわけで。

そんな中で「ベルント…/君は何も/感じないのか//国と人の進歩を/待たずして/戦争だけが次の時代に/突入することを」なんてモノローグを吐くリープクネヒトとはいったい誰モチーフなんだ……(笑)

そういえばバルツァーって、士官学校で教鞭とったりバーゼルラントで軍需工場を確保したり。あと今回は大使館陸軍部連絡室長って肩書で外交の場に参加して。何気に要所を抑えてる感じで、クーデターやれる(成功するかは別)ポジションだよなコイツ(笑)

まーともかく、相変わらずドキドキハラハラの展開で面白かったです。

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**ヴィンランド・サガ (14)[/pukiwiki][pukiwiki]

うん。『ヴィンランド・サガ』14巻はね、もうホントに笑いまくった。

スゲーよトルフィン。ホントスゲー。

そしてクヌート。

もう殿下じゃないね。帝王だ。

***対立しない価値観のありかた

この二人の対話を読んでいて思ったのは老荘思想だったりする。

「得ようと思えばまず与えよ」というか、まあそんな感じで。

かつて『蒼天航路』で曹操と石徳林(寒貧)とのやりとり((単行本30巻「人呼んで寒貧」))があったけど、あれも「同じものを求めながら逆の道をゆく」ってのが一つの答えになっていて。

クヌートとトルフィンも同じで、「楽土」というものを求めたとき、権力者のありかたと、個人のありかたとの違いが出る。

ここで個人が「戦う」という選択肢を選ぶなら、組織に立ち向かうための組織を作り上げる必要があって、結局はその個人も権力者になるしか無い。((ウクライナはどうなるのだろう?))

それをどの程度分散して均質化して利益の分配を可能とするのか、また権力の一極集中による暴走を留めるのか、みたいなところに旧来的な生存闘争があって、世界というのは長いことずっとそうやって、英雄と組織、数と力の拮抗する閾値を見定めながら歴史を築いてきたところがある。

でも個人としては分かり合えるし、同じ価値観(いわゆる「力の原理」)において対立しないのなら、こぼれ落ちる未開のフロンティアを任せてしまうことはできる。この辺は国家権力と宗教組織との互助関係みたいなのが分かりやすいのかな。

もちろん思想を残すためには英雄に頼らない組織化が必要であるし、組織は細かなひとつひとつのトラブルに対応するために肥大化して、いつか同じ「力の原理」に沿った組織に変貌しやすいってネックもある。まあその辺が制度疲労というか陳腐化の閾値で、そうなったらまた新しい価値観によってフロンティアを築き直していく必要があるのだけど。((この辺は内輪のメンツは人類史ゲームやってりゃわかると思う。そういういやらしいモデルになってる(笑) ))

なんか色々と考えちゃうよね。昨今の義憤を装った鬱憤晴らし的な雰囲気とか、よくわからんけど「住み分けりゃ済むことじゃねーの?」って思うことが多いしね。

「相手が怖いから滅ぼせ」って、開戦理由としては典型的な印象もあるけど。よく泥沼化するヤツ。

***「逃げる」

それにしてもこの物語で「逃げる」って言葉がここまで美しく響くものになるとは。『プラネテス』のときもそうだったけど、幸村誠のこういう、力の抜けたキャラクターを許容するセンスがすごい好き。

逃げることができるのは、ひとつには「逃げられる余地」があること。

もうひとつは「追撃する側の都合」っていうのもあって。つまり戦線をどこまで放胆に広げることができるのかってのは、その軍を支える組織体の経済力と技術力の課題なわけで。

そういう意味でもこの帝王の判断はものすごく納得できるもので、「任せる」って判断が単なる情実のモノじゃないんだろうなっていうのがね。うん。ヴィンサガの〈世界観〉の合理性みたいなものを感じちゃったりもする。

そしてこの「逃げる」っていう行動。思い出すのは『三国志』における劉備の逃避行(長坂坡)だったりする。曹操=魏の価値観から逃げる群衆。そして『蒼天航路』における「天下三分」の扱いとか。

あるいは『カオスレギオン』2巻でもいい。「我々は故郷へ帰るだけ」という二万人の大行進。

幸運者レイフの協力を得て、ヴィンランドはどんな国になるのかな。

おっとその前に故郷アイスランドの話が。わははスゲェさすがユルヴァちゃん(笑)
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