公式ロゴで略号 “SAI-FI” になってたし変えたほうがいいかね? と思ったものの、どうせ外に出すつもりもない内輪向けの開発コードなんで構わないかと速攻解決。
ページの内容
長い前置き
先日ダラダラと書きなぐった「今の技術?」の先、つまり『クトゥルフ神話TRPG』(以降 “CoC” と略)を今の技術でリメイク(リデザイン?)するとどうなるんじゃろ? という話題が TRPG Search さんトコの Yammer*1[TRPG Search さんトコの Yammer] = Yammer の TRPG Search さんとこ? (紹介記事はこちら)であがったのでチョロチョロと考えつつ。
自分もシンプルなフレームに落としこむなら現状、サイコロ・フィクションが一番だと思うんですよね。まあ自分が慣れてるってのもありますし、「ゲームマスター(シナリオセッティングやマスタリング)が楽」ってのもあります(笑)
……いや「(笑)」とか付けちゃいましたけど、実のところ「ゲームマスターが楽」ってのは明確に、「今の技術?」で書いた流れの集大成でして。「だからルールブックに記載しよう」から更に踏み込んで「だからルールシステムに組み込もう」というアプローチ。
しかもこれが相当に堅牢なモデルで、参加者がルールシステムに準じて遊んでいる限り、余程のことがなければ過去に「トラブル」と目され忌避されたようなハプニングは起こらない、あるいはハプニングを遊びの中に取り込んで「トラブル」というレッテルを剥がしてしまう……ということに成功していると思います。
ただし、その分「面白さ」の保証はシステムデザインやルールデザインが負うことになるし、旧来の TRPG の遊び方/楽しみ方とは多少なりと違いが生じてくるため、ハウツーとしての「リプレイ」が必須になっているんだろうなー……とも。それ(リプレイ等のアピール)が面白そうに見えることで、そうした楽しみの面白さについて想像し、ゲーム前に良い意味での予断を持って当たることが出来るようになってたりします。
『シノビガミ』のかっ飛ばし具合で話題かっさらっていきましたけど、元をたどるとサイコロ・フィクション普及のきっかけになった最初の起爆剤は、『ご近所メルヒェンRPG ピーカーブー』の「リアル小学生が遊んだりプレイがぶっ飛んでる」という話題だった気がします。
商品の展開序列から見る広報(周知)戦略とか、改めて考えてみると相当凄いと思うのですよサイコロ・フィクション。
ということで、そんなハードなサイコロ・フィクションを使って「2012年製の『クトゥルフ神話TRPG』」ってのを考えてみようかなーとか思ったりしたわけです。(既に河嶋陶一朗氏がローカルで作っているそうですが)
大枠を決め込んでいくの巻
サイコロ・フィクションに限らず、システムデザインをするときは「どういう風に遊んで欲しいのか」について考える必要があって。当世風のデザインであれば、それはシナリオ構造に集約されていると思います。
大枠での認知は「オープニング/ミドル/クライマックス/エンディング」という、まあ要するに起承転結モデルがベースにあると思います。ゲームセッションを物語構造にすることには幾つかの理由がありますが、こと機能面で言うなら「よくある物語のような構造にすることで、参加者のゲームプレイの目的を収斂しやすくする」という点だろうと考えます。要は「パターン」や「オヤクソク」を読みやすくする、ということです。
ところが CoC の物語構造って、かなりアバウトなんですよね。「なんでもできる」と言うか、「なにをやってもいい」と言うか。
それでも極言すると、「ゆきてかえりし物語」ならぬ「生きて帰りたい物語」とか、なんかそんな構造ではあるんですよね。コズミックホラー――あれは「恐怖」というより「狂気」といった感じですが――に近付いて真相を探りつつ、しかし正常なまま日常生活へと帰ることを目指す。中にはホットスタートな、最初から近くにいる恐怖の対象からひたすら逃げ回る、パニックムービーのようなモノもありますが。
CoC ではこれを「正気度/SAN値」というリソースに集約させて、こいつがゼロになったらゲームオーバーという発明をやってのけた。これによって従来の「生命力/HP」というリソースの「肉体的な危険を管理する」性質に加えて、「精神的な危険を管理する」要素が加わりました。
この「精神的な危険」というのがそもそもホラーで、肉体的な危険・損傷に比べて精神的なソレというのは目に見えないし、どうなってしまうのかについても漠然としたイメージしか出来ない。明確なイメージが持てるならば対策を講じることはできます。でも漠然としたイメージであり、しかも複数の全く異なる可能性が予測できてしまう場合、もうどうしようもない。ただ不安でしかない。
そして CoC では、その「複数の異なる可能性」についてをチャートで表現しました。(この辺りについては CoC の翻案とも言える『ゴーストハンターRPG』にも継承されています)
チャートを使う点については、サイコロ・フィクションとの相性はとてもいい。またシナリオのベースモデルも、仮定した「生きて帰りたい物語」ということであれば、とにかく生存をかけて「逃げる」要素をゲーム化すればいい……と考えられます。
この辺からデザイン上のアタリを付けて、要件を絞り込んでいきます。
- ゲームのベースモデルは「生きて帰りたい物語」
- 生還の方法として「逃げる」ことを目的とする
- 「逃げる」の表現として「恐怖」との概念距離をリソース化する
- 「恐怖」の表現として「迫り来る危機」をリソース化する
- 「迫り来る危機」をチャート化する(恐怖表)
ざっくり大枠はこんな感じで。
ちょっとした注意として。システムを組む際には「リソース」に複数のバリエーションがあることを忘れると、管理パラメータの量が多くなりすぎて何やってんのかわからなくなる、という痛い目に合いやすくなります(笑)
リソースというと、最初に思い浮かぶのは「HP」や「MP」に代表される「PC個人の資源」です。また同列で「NPC個人の資源」というのもあります。ここからもう一つ枠を大きくして「パーティ全体の資源」というものがあります。これは主に「時間」や「軍資金」があります。サイコロ・フィクションでは「サイクル」がこうしたリソースのひとつとなっています。
ここまでの大枠では、「(怪物に代表される)危機が提示され、そこから逃避するために危機から免れられるだけの概念距離を確保する」といったモデルになるんだけど、次はもうちょっと掘り下げて「危機の提示」や「概念距離の確保の方法」について考えていくべーかなということになります。
とりあえず借用するモデルを考えるの巻
CoC のシナリオモデルが「なんでもあり」と書きましたが、それは「ホラー」の性質でもあります。「ホラー」というやつは、枠が広いというのか節操が無いというのか、ちょっと針が傾いただけで「スプラッタ」も「ミステリ」も「ナンセンスギャグ」にもなりえます。そして CoC 自身がそのどれをも遊ぶことができてしまう。
ただし「生きて帰りたい物語」の枠組みにはめ込んでみると、どれもこれも「情報の提示方法」の細かな違いになるかな……と、大雑把なアタリを付けておきます。この辺はまあ、巧遅よりも拙速で進めておきます。間違っていたと思えば後で直しゃあイイのです(笑)
ま、ソレは置いといて。
これまでのサイコロ・フィクションの中から、より CoC のシナリオモデルに合いそうなモノを選択すると……自分は未プレイの『ブラッド・クルセイド』は除いて、全部で3タイプ。
- 『ご近所メルヒェンRPG ピーカーブー』
- 『ハンターズ・ムーン』
- 『魔道書大戦RPG マギカロギア』
『シノビガミ』はフリーダム過ぎるので外しました(笑)
『ご近所メルヒェンRPG ピーカーブー』なら?
ピーカーブーの構造は大きく「学校」「放課後」「真夜中」のフェイズがあって、「学校」フェイズに消耗するリソース【眠気】をやりくりしながら、「放課後」「真夜中」フェイズに情報を集めて、悪いオバケの潜む「お化け屋敷」を探し出して事件解決を目指す……といった感じになってます。
このモデルを使う場合、【眠気】の扱い次第でカラーが変わってきそう。
たとえば【眠気】を「狂気/SAN値」に置き換えるとき、「学校」フェイズの扱いをどうするかで二種類のゲームが想定されます。
ひとつは「学校」フェイズを「危機との遭遇」と書き換えるゲーム。そして「放課後」フェイズは標準的な「情報収集」のままで、「真夜中」フェイズが「リスクのある情報収集」と。この場合、わりとシンプルに CoC っぽくなる気がします。ただし日常の中に「危機との遭遇」が潜んでいる、それは毎日どこかしらに訪れるということに。
「お化け屋敷に行く」コマンドによってPCが直接対決を選択するプロセスを、どのように解釈するのか? この点について考える必要があります。こと CoC においては「お化け屋敷」のように明確な「場所」で対決するとは限りませんし、「逃げる」ために「敵地に赴く」という矛盾をどのように解決するのか?
もうひとつは「学校」フェイズをあくまで「日常生活」のままに置いておくゲーム。この場合、【SAN値】は別のフェイズで増えることにしないと、「ただ日常生活を送っているだけで人が狂っていく」という……まあそれはそれで凄まじいホラーではありますが(笑)。更にそのモデルの場合、PCは「生活を送りながら人知れずコズミックホラーと対決する」という、正義の味方だかのような存在になっちゃうんでしょうか? いや疑問形にしてどうする。えー、まあPCの立場はとりあえずおいておくとして。
こちらのモデルの場合、【SAN値】が「日常生活」フェイズに影響するようなルールを整備して、【SAN値】が減るにつれて日常生活に支障が出てくるという……なんだそのマゾゲー(笑)。(なんか内輪からは CoC というより “Kult” じゃねーかって声がどこかから聞こえてきそうな気もします)
あ、これサラリーマンTRPGにできそうじゃない?(誰がやるんだそんなもん)
『ハンターズ・ムーン』なら?
これは Yammer の方で “氷川霧霞” さん並びに “てぃあご” さんから出た案がベース。
ハンタムの構造はピーカーブーのそれをシンプルに集約して、「追跡」フェイズと「遭遇」フェイズということになります。更に「追跡」と「遭遇」を1回ずつ行うことを1サイクルとして、3サイクル目の「遭遇」でなければ「絶対に勝てない」というルールがあります。
この「絶対に勝てない」の部分は、そのまま「決定的に脱出できる」という解釈で通ると思います。逆に言えば、そのサイクルが来るまで何度でも危機は迫り来る、と。
ハンタムは徹頭徹尾「モノビーストを倒す」ということのみを目的としていて、ゲームもひたすらその戦いの内容にのみ集中しています。それ以外の要素についてはプレイヤーが自由に記述できますが、ゲーム的にはほとんど意味がありません(笑)*2[ほとんど意味がありません] = 皆無ではないのは、「感情調整」というコマンドの際に「モノビーストに対する思い」を宣言する必要があるため。
これに「迫り来る危機からのエスケープ」といったゲームをはめ込むと、「ひたすら逃げる」ことを目的としたゲームとなっちゃうのか……またマゾゲーか(笑)
まあその「逃げる」といった行動にも複数のバリエーションが考えられるので、その辺を加味すれば色々と出来るはず……ではあります。敵が追跡を諦めるまでの概念距離をHPとするとき、「全力で走って逃げる」のも「敵の足止めをする」のも「敵の脅威度そのものを下げる」のも全部同じHPダメージと考えることも出来るわけで。
ただ CoC の場合、その「さまざまな方法」の相性がいろいろ違いまくるんですよね。たとえばこうした「さまざまな方法」をスキルとするとき、スキルの相性が極端に異なるとゲームバランスがとんでもないことになってしまう。
とはいえ「CoC だし、それでいっか」と思わないでも無いですが(笑)
その種の問題は「危機の情報開示とスキルビルドのタイミングをズラす」ことで解決できるんで、たとえば「追跡」なり「遭遇」なりのフェイズで「迫り来る危機」のデータを収集しつつ、1サイクル毎に1個のスキルをセットする……みたいなルールにすりゃ、そこまでブッ壊れることもないかもしれません。
ならないかもしれません(笑)
あとは肝心の「恐怖」「狂気」に属する処理をどうするか? ですが。
ハンタムにはフェイズ中に「感情(値)」「感情属性」が変動することで「遭遇」フェイズでのリスクとなる「激情」ルールがありますんで、そいつを上手いこと「恐怖」に置換してしまえばいいじゃないか……というアイディアが氷川さんから出ましたので、これを借用する方向で(笑)
『魔道書大戦RPG マギカロギア』なら?
マギロギの構造は、イベントを集約したNPCカードを複数用意し、これを1フェイズごとに1枚選んでオープンしながら、封じるべき禁書の〈断章〉を探しだしていく……というモデルです。カードめくり自体が複数の意味を持つため、nフェイズ[/サイクル]制ではなく純粋なサイクル制になっています。
ぶっちゃけると、マギロギの構造で CoC に使えるのってこのカードめくりの要素くらいかもなーとか思ってます。というかカードめくりがめっちゃ魅力的なんだコレ。それ以外の要素については、PCが強力かつ特殊なポジションにあるため、「探索者」という名のパンピー揃いな CoC に置き換えるのがちょっと難しい……と思う。出来る人は出来ると思いますが。
あとは〈断章〉との戦い(=魔法戦)を、狂気との概念戦闘みたいなモノに置き換えちゃえば、「狂気に触れながら重大情報をゲットしてくる」みたいなコトは出来るかもしれません。あるいはハンタムのところに書いた、スキルセット用の情報収集として模擬戦じみたものとみなすか。
マギロギについてはちょっとまだ自分の中で練り足りないので、今んところは「カードめくりを他モデルに流用する」くらいの話で。
で、どれで進めるかで絶賛お悩み中
と、この辺まで考えて、さて「どの線で進めてみるか」を決めかねているところ。『ハンターズ・ムーン』モデルで進められると、多分一番GMが楽できるんじゃないか*3[一番GMが楽できるんじゃないか] = 実際「ハンタムだけならGM出来る/やってもいい」って人が内輪には結構いる。という気もします。その分かっちりデータ&フレーバーを作らなければならないのでシステムデザインはきっと地獄です(笑) (あるいはそこもハンタムのように、フィールドチャートもアタッチメントにしてしまえば良いではないか好いではないかという説も)
もうちょっと別の、自作の「XFペルソナ」モデル*4[XFペルソナモデル] = 事件イベントから敵データを生成するモデル。イベントチャートを振るごとに敵データが自動生成されていくシステムで、GMはシナリオ作る必要すらない(ただしイベント表から即興で語れる必要はある)。これ CoC で使えりゃ最高じゃね? と思ったものの、CoC の「敵/脅威」って結構な数のパターンがあるので、まずそいつを整理せにゃならんという異常事態。無理。を流用するとかの案もあったんだけど、それにはそれなりに CoC の深い知識が必要になるので「無理! 絶対無理!」ということに。
コアな原作フリークのいるタイトルを扱う時は、慎重にならざるをえない(苦笑)
どのモデルをベースにするかで特技表もだいぶ変わってきます。
まあでも暫定的に、カテゴリは「戦闘」「運動」「探索」「社会」「人文」「CTHULHU」あたり? とか考えたりも。しかし「CTHULHU」カテゴリにそんなにたくさんの特技が入れ込めるかという疑問も。えー「外なる神」「旧支配者」「怪物」「魔道書」……駄目だ続かぬ。
References
↩1 | [TRPG Search さんトコの Yammer] = Yammer の TRPG Search さんとこ? |
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↩2 | [ほとんど意味がありません] = 皆無ではないのは、「感情調整」というコマンドの際に「モノビーストに対する思い」を宣言する必要があるため。 |
↩3 | [一番GMが楽できるんじゃないか] = 実際「ハンタムだけならGM出来る/やってもいい」って人が内輪には結構いる。 |
↩4 | [XFペルソナモデル] = 事件イベントから敵データを生成するモデル。イベントチャートを振るごとに敵データが自動生成されていくシステムで、GMはシナリオ作る必要すらない(ただしイベント表から即興で語れる必要はある)。これ CoC で使えりゃ最高じゃね? と思ったものの、CoC の「敵/脅威」って結構な数のパターンがあるので、まずそいつを整理せにゃならんという異常事態。無理。 |