[trpg] 世代の線引きの基準を変えてみる

 現在の商業タイトルの共通点について、想定される基本条件について。
 ……とは言っても業界のことなんてサッパリ知らんので、外からボケーっと見つめてる人間の、まあ想像だか妄想だか、その程度の話なんですけどね。

結論

 一言で言えば「少ない時間で最大限のスペックを発揮しろ!」というモンなんだろーなー、と。

最低限、守られるべき条件

 商業タイトルが「市場」を形作る上で、その商品を売る相手ってのを想定する必要があります。
 ザックリ言えば「ターゲットユーザ」ってやつです。
 そのターゲットユーザに合わせて商品はデザインされます。

 TRPG には、まあその「世代論」なんてのがあります。
 僕も以前これについてアレコレ考えていて、雑な話をしてきたんですが。
 その中で「第二世代」と「第三世代」と呼ばれるものの区分が、ちょっと分かりにくい部分があったんですね。
 確かに両者の間には、線が引けるだけの違いがあるように思えるのに、何故そういう線引きが行われるのかの説明が、ちょっと難しい。説明する方もサれる方も、分かったような分からんような、モヤモヤしたものが残ってしまうことが多かった。

 でもこれを、「システムが何をどのように扱っているか」といった事ではなく、「どのようなユーザをターゲットにしているのか」で線を引くと、スッキリするんじゃないかなーと思ったんですね。
 まさに世代論というか、ユーザの世代、ユーザの時代背景の違いに還元すりゃいいんじゃないかと。
 より具体的には「想定されるターゲットユーザとプレイ環境の違い」なのかなー、と。

ターゲットユーザの変化

 ターゲットユーザの変化ってのを考えると、大きく分けて「生活」と「嗜好」があると思うのですが。

ユーザの生活環境の変化

 このうち「生活」を決めるのは、主に年齢ですね。
 まあ年齢だけで生活スタイルが分類できるほどシンプルな社会じゃないんですが、凡その傾向ってのはやっぱり出ますし。
 そうして年齢設定について考えてみると、TRPG ユーザってのは「TRPG を昔から遊んでいた人たち」がそのままシフトしていくことで、現役 TRPG ユーザの年齢層が上がっている……ということがあります。もちろん若い新規ユーザも獲得しているはずですが、昔は圧倒的にマイノリティだった 30代 40代あたりの年齢層が、それなりのシェアを誇っていると思いますんで、どうしたって平均年齢はあがっちゃう。

 で、まあ年齢層が高いということは……少なくない社会人層を考える必要があるわけです。
 当然っちゃ当然の話ですが、学生と社会人を比べたら、社会人ってのは余暇に当てられる時間が圧倒的に少なくなります。学生がどんだけ忙しい言うても、現役リーマン世代には鼻で笑われちゃうよなー……ってのはあるわけです。まあ中には優雅なヤッピーもいるかも知れませんが、そんなんターゲットの中核に据えられるようなモノではありませんからね(笑)

 そんな訳で、現在の TRPG 市場ではこうした「余暇の少ないユーザ」を視野に入れて、環境をデザインする必要が出来ました。

 昔はどうだったのかって? そらもうアナタ、若年層――要するに学生――をメインターゲットに、ありあまる余暇をフル活用して楽しむためのデザインが行われていました。
 あるいは「そうでなければ遊べない」ようなデザインだったために、ユーザが学生に偏った……という意見もあるでしょう。それは「剣と魔法のファンタジー」に代表される「異世界の物語」というものが、日本の TRPG の黎明期にはほとんど知られていなかった事情もありましたし、「遊び方をどのように伝えればいいのか?」ということさえ手探りだったということもあります。そのためエンドユーザも「どのように遊べばいいのか」を手探りで探していかなければならなかったため、結果として多くのリソースを割くしかありませんでした。
 当時は「汎用ガイド」とでも言うべき書籍がたくさんあり、また雑誌でもそうした記事がたくさん掲載されていました。そうした経験則の蓄積によって、徐々に「デザインとコンセプトを一致させる」ことが可能となっていったとも考えられます。

ユーザの嗜好の変化

 また「嗜好」で言えば、これまた大きく変化したように思います。
 かつては「剣と魔法のファンタジー」という異世界での冒険に、この上ない浪漫がありました(だからこそ汎用ガイドが通用したと言うことも)。それが今では実に様々なフィクション世界での物語に、拡散しているように思います。これはまあ、かつて流行りモノだった剣と魔法のファンタジーが、ひとつのジャンルとして定着したこと、また TRPG に少なからず流行を反映するサブカルチャーとしての性質があること等、色んな原因が考えられるわけですが。

 こうして多くのジャンルへと展開/拡散していった TRPG の背景世界のひとつひとつに、かつての「剣と魔法のファンタジー」と同じようにゼロから構築するような手間はかけてられないんですね。
 たとえば「剣と魔法のファンタジー」と「現代ピカレスクロマン」と「禁酒法時代のホラー」と「オカルティズム」と「サイバーパンク」と「アフターホロコースト」と「スペースオペラ」のすべてを、かつての「剣と魔法のファンタジー」でやったように、ゲームシステムと汎用ガイドを別々に読みながらゲーム世界を想像/創造しろ! ……なんて言われたら、単純計算で 7倍のコストがかかるわけです。なんという無茶振り!

 こうした「色んな世界で遊んでみたい」という要求に対しても、やはり余暇≒時間というリソースが関係してきます。

 それ以外にも様々な娯楽によって、ユーザの余暇の争奪戦が行われているのが現状です。
 これについては年齢層やジャンルを問わず、現在の社会背景に起因するものでしょう。
 そうした「時間が少ない!」といった要素が、ターゲットユーザに共通するようになったと考えられます。

プレイ環境の変化

 こうしたターゲットユーザの分析と併せて、TRPG をプレイする環境の変化も考える必要があります。
 レンタルスペース*1[レンタルスペース] = 時間を区切って借りられる部屋やホール等のこと。かつては公民館、体育館、ホテル等の会議室や、カラオケボックス程度(大分グレーゾーン)だった。それが今ではイエローサブマリン系のデュエルスペース、「ロール&ロールステーション」や「TRPGカフェ・デイドリーム」、「リーチングムーン」等のゲームスペースの増加、オンライン環境の普及などは、黎明期では考えられなかったような環境の変化です。

 こうした環境の変化も、当然ながらデザインに影響を与えると考えられます。

レンタルスペースの増加

 レンタルスペースの増加により、遊ぶ場所に悩まされることが減りました。
 TRPG というのは実に騒々しい遊びです。しかもそれは室内で遊ぶことを前提とされています。サイコロやトランプカード等、賭博の道具になるものを使用するのも体裁が悪く、公民館などは借りにくい場合もあります。実家暮らしなら、家族の理解を得るのが難しいこともあるでしょう。そのため遊ぶ場所で悩んだゲーマーも少なくなかったんじゃないかと。

 また誰かの家で遊ぶというのは、それはそれでちょっとした抵抗がある場合もあります。
 たとえば一人暮らしの男性の部屋をセッション会場とするとき、女性プレイヤーが参加するのは個人としても社会的にも抵抗があるってコトもあります。これはまあ全く気にしないという人もいるので、全員が全員そうだというコトもないでしょうが、そうである人たちにとっては公のレンタルスペースというのは却って安心できる環境となるようです。

 そうしたユーザにとって、レンタルスペースは有難い存在でしょう。
 それは昔から「あったらいいな」と言われていた、ひとつの夢でもありましたし。

 ただし、レンタルスペースの多くは時間で区切って借りるものです。
 この時間制限は、参加者の家/部屋などと比べて強く働きます。誰かの家で遊んでいる限りは、バスや電車といった交通手段、また門限などの制限を除けば、こうした制限は非常に緩いものになりがちです。特に気心知れた友人同士で、かつその家で暮らす他の人たちとも特に問題がなければ、最悪「泊まりこみ」なんて手段にシフトすることもあります。そんなわけで、カジュアル環境で遊ぶゲーマーの中には、時間管理が非常にグダグダ(笑)な人が少なくなかったりもするんですが、レンタルスペースで遊ぼうとすると、それでは困るんですね。
 ……というわけで、やっぱり「時間」というリソースの扱いが重視されやすくなります。

 また、こうした性質以外にも、レンタルスペースが明確に「TRPG(アナログゲーム)を遊ぶ場」として展開されていることで、何らかの TRPG 関連イベントを実施しやすい……といった利点もあります。これは例えば『Dangeons&Dragons』のエンカウンターや、新作タイトルの体験会(近々では『Eclipse Phase』?)等が実際に行われているようです。

オンライン環境の普及

 オンライン環境でのゲームは旧来の、ひとつの部屋に集まって顔を合わせて遊ばれる――いわゆるオフライン環境での――セッションで言えば、コンベンション環境にも似た性質があります。

 インターネットを介して物理的な距離を無視できるため、「ネット上で参加者を募り、ネット上で遊ぶ」という体制が取りやすくなりました。
 これにはいくつかの利点があります。ひとつにはオフライン環境にみられるいくつかの危険を回避しやすいということ。また性別や年齢、職業、身体特性などが分かりにくくなるため、オフラインではそもそも顔を合わせる機会もないような組み合わせで集まりやすいということも有ります。
 こうした利点は、普段の付き合いからは全く切り離されたところで、ただゲームを遊ぶためだけに集まれる……と言うこともできるでしょう。

 ただし「いつでも集まれる」といっても限度があります。特にオンラインの「さまざまな人間が垣根を超えて集まれる」という特性も、あくまで個々人の余暇の範囲に限られています。さまざまな人が集まれるということは、それだけさまざまな社会の制約を受けるということでもあるのです。直截に言えば、これもまた「使える時間に限りがある」ということになります。

 更に「物理的な距離に囚われない」ということは、しかし「同じ物理空間に集まらない」ということでもあります。
 これは「ルールブックやサプリメント等を共有することが出来ない」という明らかなマイナスとしても働きます。
 また互いの表情や心理などを理解/把握するための情報が制限されるため、「実際にゲームを遊びながら認識をすりあわせていく」という事が難しくなり、お互いの距離感が取りづらいことで大きく踏み込み過ぎてしまったり、踏み込まれたと相手の要求を大きく考えすぎてしまう……といったことも考えられます。
 こうした性質から、オンライン環境ではオフライン環境に比べて、より強くルールについての明確な指針があることが望ましい、と言えます。

兎にも角にも「時間」がイノチ!

 そんな感じで、兎にも角にも「いかに時間というリソースの無駄遣いを防ぐか」ということが、デザイン上の条件として設定されます。
 その答えが「いかに少ない時間でゲームが始められるようにするか」や「なるべく短時間で長時間プレイと同じレベルの楽しみを引き出すか」といった事ですね。
 「ルールを明確にする」というのも、それによって「ルールの解釈で話し合う時間を省略する」といった効果が考えられます。

 そうした条件の下にプロダクトデザインが行われたものが、結果として「第三世代TRPG」に分類されるタイトル群なのかな? とか。

で。

 こうした基準で考えると、「第二世代TRPG」は「時間を注ぎ込むほどスペック上限を上げられるもの」だと考えています。
 注ぎ込めば注ぎ込むほどスペックが上がる可能性はある。
 けどそのためには色んなコストを支払わなければならないし、そうしたコストが時にユーザ間での不均衡を生みやすい。
 そういう「TRPGマッチョ」をターゲットユーザにしたのが「第二世代TRPG」だろーなと(笑)

 で。
 「じゃあ第一世代はどんな基準なんだよ」って言われると……か、考え中!

 あ。ちなみに次回は「それでも『GURPS』が好き!」という話です。
 ってかソレ書いてたら、脱線しまくったのが本エントリなのでした(笑)

References

References
1 [レンタルスペース] = 時間を区切って借りられる部屋やホール等のこと。かつては公民館、体育館、ホテル等の会議室や、カラオケボックス程度(大分グレーゾーン)だった。それが今ではイエローサブマリン系のデュエルスペース、「ロール&ロールステーション」や「TRPGカフェ・デイドリーム」、「リーチングムーン」等のゲームスペース