ほんとは帰る前にまとめておこうと思ったんっだけど、色々やってたら間に合わなくなっちゃいまして。
なんでまあ、ざっくりとやっておきます。
先日の “Culture” から “Wittily Jokes” につながっていく話は、「落語と講談」とか「漫才とコント」とか考えてた自分にとっては腑に落ちたんだけど。
さてこれを実際に文字に起こそうとすると苦労するんだよなァ。
理解に至るショートカットが、あっちゃこっちゃに飛び回ってたから、どうやって一本道に仕立てりゃいいんだか……
ページの内容
“Wittily jokes” の “Wittily” ってナニ?
日本人にはどうもニュアンスが伝わりにくい、 “Witty” とか “Wittily” とかいう言葉。
誰もが思う「“ウィットに富んだジョーク”のウィットって何?」という、アレ。
これまた辞書を引いてみると、真っ先に「理解力」とか「知力」とか言われて、実は日本語で「ウィット」って言われるのは序列的には二番手以降になってるんですよね。
で、該当するところを見ると、まあだいたい「機知」とか「頓知のきいた」とか書いてあって、却って日常的には使われにくくなってる言葉に翻訳されると「えー」とブーイングのひとつもこぼしたくなります。
熟語を分解してみる遊び
まあ愚痴ってても前には進まないので、ここは一つ遊んでみることにします。
「機知」や「頓知」ってのを、前にやった漢字トランプのアレみたいに、一文字づつにバラして考えてみましょう。
そうすると、それぞれ「機/知」と「頓/知」になります。
じゃあ「機」って何かって言えば、「勝機」とか「商機」とかの「機」、つまり「タイミング」ですわな。「頓」は? っていうと、これは日常的には使われにくい字だけど、えー……「頓服」とか「頓服薬」とか、その辺を思い浮かべてもらえれば分かるかも? 病院の世話にならん人間にはサッパリな、この「頓服薬」ってのは「特に時間を決めず、必要なときに服用する(内服)薬」のことです。こちらもやっぱり「必要なときに」ということで「タイミング」に関する字だなと。
で、あとは共通する「知」なんだけど……
これがまた厄介で、たとえば「知性」であったり「知識」であったり、あるいは「知覚」や「知能」なんてのもあります。カバーリングする範囲がやたら広いんだけど、誤解を恐れず線引きをしてみると、「情報」と翻訳してみたらいいのかな? とか思ったり。たとえば「知識=情報を識る」とか「知覚=情報を覚る」とか「知能=情報を処理する能力」とか書いてみると、わりとソレっぽいし。
そうすると「機知」やら「頓知」ってのは、どちらも「タイミングの良い情報」くらいのニュアンスで把握すれば良さそうです。
では答え合わせ。「ウィット」とは?
いやまあ遊んでないで、素直に辞書引けって話なんですけどね。
そうするとまあ、やっぱり「機知=その場その場に応じて活発に働く才知」とか「頓知=とっさの場合にすばやく働く知恵」とあります。
……ということで、ここでは「ウィット」について、そのように認識しておくことにします。
「いわんや “Wittily” をや」ですね(何)
言葉を使った笑いの芸能の種類
”Joke” とか「冗談」とかってのは、「笑いを起こす/もたらす」芸能の一つで、特に「言葉を使った芸」に分類できます。
一口に「言葉を使った笑いの芸能」と言っても、たぶん調べてみれば色々とあると思うんですが、ここでは「考えオチ」と「一発ギャグ」について考えてみることにします。
考えオチと一発ギャグ
まず「考えオチ」を「ひとつの滑稽なストーリーを用意し、その背景にある物事を理解させることで笑いを生み出す芸」と定義します。
オチに到るまでの流れを丁寧に作っておき、本来あるべき流れ、いわゆる「常識」から逸脱した部分を見せることで、思わず笑ってしまう状況を作り出す芸です。ただしこれは、そこに到るまでの流れや背景が理解出来ないと「何が可笑しいのか分からない」という芸でもあります。
対する「一発ギャグ」はというと、「その場の流れを全く無視した動作によって、観客を瞬間的に思考停止の状態に落し込み、発作的に笑いを引き出す芸」と定義しましょう。
こちらは「考えオチ」とは逆に、観客に「考えらさせない/考えられない」状態を作り出すことで、心理的な制限を取っ払い、TPO で制限されがちな「声を上げて笑う」という行為を引き出します。ただし観客が芸について身構えていると、思考停止状態に陥りにくくなってしまい、結果として笑いを引き出すことが出来なくなる……という芸でもあります。
お笑い芸の性質
本題からはちょっとズレるし、本音を言えば「笑いを分析すること」の無粋さというのは、そりゃまあ良く知ってるんですが。
その辺を分かった上で、敢えてちょっと書いておきますと、お笑いの芸というのは「考えオチ」や「一発ギャグ」に限らず「笑うことを赦す」という性質があります。
社会環境によって「笑う」という行動が制限されがちなとき、それが赦されにくい環境であるとき、笑ってしまう状況を作り出すことで「不意を突かれて笑ってしまったが、これは仕方のないことなんだ」と責任転嫁を認める、という機能があります。(笑うことでストレスを発散させ、正常な精神状態に復帰させる、ある種の治療行為だとする人もいます)
そのため、本来ならオチもギャグも既に分かっていて、特に新鮮味を感じないものであっても、「笑うことが赦される」という経験から発作的に笑ってしまう……ということもあります。(テレビの「笑い屋」なんかも、そうした機能の増幅装置だと言えます)
そういう意味では「繰り返しは笑いの基本」というのも関係すると思うんですが……まあそれは余談になるので置いておきます。
文章の背景にある “Context―文脈”
さて、本題に戻って。
「考えオチ」と「一発ギャグ」の、どちらでも使っている「流れ」という言葉。
これ、何なんでしょう?
「考えオチ」では更に「ストーリー」や「常識」なんて言葉まで使ってます。
これは一体?
ここまでの文章を読んでくれた方で、これらの言葉について特に疑問に思わなかった人。
あるいはちょっと考えて「多分こういうことだろうな」と自分なりの答えを出せた人。
そういう人たちは、これまでの文章の “Context―文脈” を把握してくれているのだと思います。
逆にサッパリ分からん、という人たちには “Context” を把握してもらえなかったということでしょう。
……という話が理解できた人は、今の文の “Context” を把握してくれていて、そうでない人は(以下略)
“Context”とは「連立方程式の途中式+解」のようなもの
”Context” とは何なのか?
日本語では「文脈」といいます。「文の脈絡」で、文脈。
脈絡ってのは、支離滅裂な話について「脈絡の無い話」とか「前後の脈絡がない」と評するときの、あの脈絡です。
文章を構成する個々の言葉というのは、多彩な定義を持っています。そしてそれらは相互に関係しながら、文章の意味を構築する。そうして意味を構築するとき、定義の中から文章全体を俯瞰して、もっとも適切と思われる意味を抽出して理解に至るわけですが、その理解に至るために利用される「そこに到るまでの文章の内容」として認識されるものが、文脈です。
大抵の場合、「その文章の書き手がなにを言わんとしているのか?」ということ。ちょっと雑な言い方をすると、いわゆる「意図」がそれに相当します。
これってまあ、言ってみれば連立方程式みたいなモンでして、ある文章、ある話というのは、常に方程式が追加されていってるようなものです。そうやってヒントになる方程式が増えれば増えるほど、求められる解は絞られていきます。
文章の、話の焦点が定まっていくわけです。
種明かしをすれば、前述の「流れ」ってのが、まさに “Context” です。
そして、これまた誤解を恐れず書いてしまうと「ストーリー」や「常識」というのは、連立方程式を解く際に使用される「定義」や「定理」だろうと考えています。
“Context”を共有する社会、社会で共有される”Context”
笑いを理解するとき、まずその場の “Context” について理解する必要があります。コント芸や漫才であれば、それは様々な「状況」や「設定」ということになります。芸人が何について話しているのか? どういったシチュエーションを想像すれば良いのか? 観客がそれについて理解することで、初めて「そこから逸脱する」ことが可能になります。
「将にこれを奪わんと欲すれば、必ず固くこれに与えよ」なんて言ったら老荘的ですが(笑)
そうした “Context” を濃厚に共有する社会を “Culture area―文化圏”、そうして共有される “Context” が “Culture―文化・教養” ってやつなんだろうな……という話。
で、じゃあ”Wittily jokes”って?
で、まあ最初に戻って “Wittily jokes―ウィットに富んだジョーク” って何? という話。
これについては、とりあえず “Wittily jokes” を “Wittily” + “Joke” と分解して読んでみることにします。
”Joke―冗談” とは何なのか?
最初の定義では「言葉によって笑いを生み出す/もたらす芸能」でしたが、その後、それが “Context” の共有と逸脱によってなされるものである、ということも付け加えられました。
そこんところを加味してまとめなおし、”Joke―冗談” を「言葉と “Context” を利用し、そこから逸脱することで笑いを生み出す/もたらす芸能」と再定義しておきます。
次に “Wittily―機知に富んだ/頓知のきいた” とは何か?
こちらについても「機知」について分解を行ったので、「特にタイミングの良い情報」と再定義しておきます。
“Context” の通時性
では “Wittily jokes” とは?
それは「特にタイミングの良い “Joke” 」ということになる。
では「タイミング」とは?
ここでちょっと “Joke” に深く関係する “Context” について、もう一度、あとちょっとだけ掘り下げて考えてみることにします。
”Context” について「文脈」「意図」「流れ」などと書いてきましたが、ちょっと整理してみると、それは読み手(受容者/観測者)の立場からは「それまでに語られたことに対する現在の理解」ということになります。
そう考えると “Context” は、「それまでに語られたこと」という過去に対し、「現在の理解」という現在の状態という、一方通行の時間軸――通時性――を持っていると考えられます。
つまり “Context” とは、それ自体が最初からタイミング、時節が重要な要素であるわけです。
“Wittily jokes” = 環境依存度が高い “Context” を使った “Joke”
そうしたものの中で、「特にタイミングが良い」というのはどういうことか?
”Wittily jokes” も “Joke―笑いの芸能” ですから、そこには “Context” を共有する、という前提条件が求められます。要は「あるある(笑)」とか「ないわー(笑)」とかいう言葉が出てこないといけない。
誰と共有するのか? 観客や聴者といった相手、つまり人間です。
また “Joke” には「本来なら笑うことが赦されにくい状況であるとき、それを赦す」という機能があります。例えば、どうしようもなく緊張してしまっているとき、小ネタでひと笑いさせてくれるとか。
つまり状況にも依存します。
これらを整理し、更に “Wit” の第一義である「知性」を加味すると、
- 「適切なタイミング」
- 「”Context” を共有する聴者の揃った場所」
- 「笑いが欲しいが、しかし笑いにくい状況」
- 「知性的」
の四要素が揃った “Joke” が “Wittily jokes” なのかな、とか。
もっとダイナミックに “High context” *1[High context] = コンテクスト依存度が高い、の意。対義語は “Low context” 。確かエドワード・ホール(先日話題にした〈プロクセミックス〉の提唱者)が「日本はハイコンテクストな社会だ」って言ってた気がする。な “Joke” って書いちゃっても良さそうだけど。
最後ちょっと雑ですが、だいたいこんな理解でいいのかな?
……いやまぁ雑ったら最初から最後まで雑なんですが(笑)
教えて! エロい人!(違)
References
↩1 | [High context] = コンテクスト依存度が高い、の意。対義語は “Low context” 。確かエドワード・ホール(先日話題にした〈プロクセミックス〉の提唱者)が「日本はハイコンテクストな社会だ」って言ってた気がする。 |
---|