PC 個人を確立するための背景設定は、フィルタリングされてゲーム盤上に現れるってのは前エントリで書いたとおり。そのフィルタリングは、多くの人の目によって構成されてるってのも、同じく。
ただまあアレにも穴があって、たとえば「舞台設定」のフィルタを通過させるときにゲームマスターの恣意的判定、つまり「シナリオに適応させられるか?」って判定を無視することも、ある条件下においては可能になるわけです。
その条件とは「シナリオに参加できなくてもいい」というもの。
プレイヤーが開き直ったら、ゲームマスターはどうしようもありません。
ページの内容
活躍を保障しないゲーム
前エントリで言うところの「世界設定」は、PC をゲームに参加できるようにするための最低条件といえます。ところが「舞台設定」や「参加者の承認」は、ゲームを円滑に行うための予防策としての性質がとても強い。*1[世界設定と舞台設定] = 前エントリでは「システム」と「シナリオ」で分割したが、前者を「システム」ではなく「キャンペーン」という区分にすると、前者にもユーザが介入できるようになるので表現の自由度は上がる。それはともかく、「世界設定」は〈制限/情報〉であり、「舞台設定」は〈管理資源〉と考えることも、できるんじゃないかと思ったり思わなかったり。
たとえば「舞台設定」はゲームマスターの準備しているシナリオ、言い換えると用意したゲーム盤で PC が動かしやすいかどうかを診断するものだし、「参加者の承認」はプレイヤー間でゲーム中にトラブルが起きないようにクロスチェックをするもので。
だからまあ、そういったゲーム盤上で行動しにくい可能性とか、プレイヤー間トラブルを背負い込む覚悟があれば、これらのフィルタを通さないでも良い、と考えることも出来ます。
「舞台設定」フィルタの図式化
ちょっとまた簡単な図にしてみましょう。
まずは「舞台設定」フィルタを通す前の設定の状態です。
で、これを修正しつつ「舞台設定」フィルタに通すと、
こんな具合になるわけです。
で、ちょっと分かりにくいですが、舞台設定の中心にある★マーク。註で「ゲームの目標」とあるやつです。設定と★マークとの距離が近いほど、その設定はゲームで使用しやすいと考えてください。逆に距離が遠いほどゲームで使用しづらい。まあ、そのくらいの認識で。*2 [★マークと設定] = この図は“★と設定とを近付けるのが RPG の性質の一つ「情報の編集」である”という考え方に基いている。PC設定と〈メカニズム〉とを使用して外延近接戦を行うわけだ。でもそんな面倒なことは分からんでも、ニュアンスが伝わればヨシ(笑)
フィルタリングは「ゲームの勝ち」を約束する
ゲームマスターは「舞台設定」を行う――もっと直接的に「シナリオを作る」としてもいい――際に、この★マークまでの距離があまり開かないように設計します。相談された PC の設定が、自分のフォローできる範囲、つまり「シナリオ上での活躍を企図できる範囲」に在れば承認し、フォローできない範囲に在れば却下したり、修正案を提案するわけです。
この「PC の設定と舞台設定のすり合わせ」の作業は、PC が一定以上のミスをしない限り、ゲームマスターが設定する「ゲームの勝ち」にたどり着けるようにするためのものです。逆説的に、これを行えば PC はゲームの勝ちを得ることができるようになります。
フィルタリングしないなら自己責任で
「舞台設定」へのすり合わせは、ゲームマスター側が「マスタリングによって PC の設定を活用できるか?」という判断をしています。ですがもし、プレイヤー側が「自身のプレイング技術によって PC の設定を活用できる」のであれば、ゲームマスターの舞台設定から逸脱していても、あるいはゲームで活躍できるかもしれません。
プレイヤーは自分の技量に自信があるなら、ゲームマスターの舞台設定フィルタを無視することも出来ます。ただしその場合、活躍できなかったとしても全責任はプレイヤーに帰属することになります。(ゲームマスターに「接待」を要求するプレイヤーは、それでも責任転嫁をするようですが)
『Aの魔法陣』の性質
ここでちょっと、設定がめちゃくちゃ重要な『Aの魔法陣』について。
従来の RPG と一線を画し、「設定を直接キャラクターデータにする」という方法をとっている『Aの魔法陣』は、この種のフィルタリングを嫌う――なるべく広い PC 設定を容認する――傾向にあると思います。いやマスタリング次第なんでしょうけど。
A-dic という「世界設定」で、また SD もセッションデータという「舞台設定」によってフィルタリングを行いますが、その他のゲームシステムに比べて精度は粗く、大雑把な印象があります。
何故か?
と考えると、これは『Aの魔法陣』というゲームの性質が関係しているんだろうなと。
つまり「SD はプレイヤーにゲームの勝利を約束しない」という性質です。
「勝利を目指すゲーム」と「舞台設定」フィルタ
『Aの魔法陣』というゲームは、難易度を削りきることを第一目的とします。
もっとメタな目標――相互理解を深めるとか――もありますが、システムが提示する目的はこれだけであり、プレーも基本的にはただ一つ、それだけを目指して行われます。だから、
そこでしのぎを削る Dead or Alive にならないと、ゲームとして遊ぶ必要がなくなってしまう。
ゲームとして遊ばないのであれば、ただみんなで寄り集まって、あーでもないこーでもない言いながら「おはなし」を作ればいいことになっちゃうわけです。(『Aの魔法陣』は同じ面子でやり込むと、最終的にはそうなるようですが……って、それは余計だ)
「舞台設定」フィルタを通す目的は、「ゲームの勝ちを約束する」ことです。
が、『Aの魔法陣』でそれをやっては興醒めになる。
だから精度が粗いんだろうと考えます。
まあ、この「勝利を目指すゲーム」とか「勝ちを保障されていないゲーム」というのは昔からあって、なにも『Aの魔法陣』の専売特許ではないんですが、システム自体がそれに特化していたということで、ちょっと書いてみました。(システムデザインと遊び方が密接に関係する好例かなぁ、と思ったんで)
References
↩1 | [世界設定と舞台設定] = 前エントリでは「システム」と「シナリオ」で分割したが、前者を「システム」ではなく「キャンペーン」という区分にすると、前者にもユーザが介入できるようになるので表現の自由度は上がる。それはともかく、「世界設定」は〈制限/情報〉であり、「舞台設定」は〈管理資源〉と考えることも、できるんじゃないかと思ったり思わなかったり。 |
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↩2 | [★マークと設定] = この図は“★と設定とを近付けるのが RPG の性質の一つ「情報の編集」である”という考え方に基いている。PC設定と〈メカニズム〉とを使用して外延近接戦を行うわけだ。でもそんな面倒なことは分からんでも、ニュアンスが伝わればヨシ(笑) |
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