RPG のプレイヤー・キャラクター(PC)って、世界に同じ人のいない、たった一人のキャラクター(個性)ですよね。
……いや『パラノイア』とか、そうでないケースもあるんだけど(笑)
多くのゲームでキャラクターって、代わりがいない「世界に一人だけ」の存在だろうと。
でも、それを表現・支援する手段が、ルールの中の比率が少なかったように思います。
初期の RPG のキャラクターってのは、クラス分けと能力値、あと装備くらいしかなかったわけです。その後、技能や特殊能力といった形で、また様々な組み合わせによってキャラクターを個性化するオプションは増えていったわけですけど、それらはどれも「世界に一人だけ」を保障するところまでは広がらなかったと考えます。
「世界に一人だけ」を最初に保障するのは、いつだってユーザが自主的に作り出した背景設定だったと。
ページの内容
PC の設定情報
繰り返しになりますが。
RPG の PC が「世界に一人だけ」になるとき、それを最初に保障するものは「プレイヤーが作った設定」です。ほとんどのゲームが、システムに準拠し判定ルール等で利用されるデータの羅列だけでは、PC を確立した個人として成立させません。データとは異なるものとして付録的に作成される設定情報が、それを成立させます。*1[ほとんどのゲームが…] = 『Aの魔法陣』ではシステム用データそれ自体が個人を確立するための設定となっている。詳しいことは知らないのだが『ヒーローウォーズ』もそうらしい。この点については後日、別エントリで書きます。
しかしそうした設定情報も、実際のゲームに反映されるまでには、多くの段階を経、多くのフィルタを通過させる必要があります。
設定のフィルタリング段階
設定をゲームボード上で使用するには、たとえば以下の段階でフィルタリングして、ゲームで使えるものに加工します。
「原設定」
PC 作成時にプレイヤーが作った設定のことです。
「どういうキャラクターにしたいのか」とか、「どういう風に遊びたい/活躍させたいのか」とか、その鮮明度はマチマチですが、なんかしら希望やら目標やら目的やらがあって PC は生まれてきます。
「PC は子供のようなもの」なんて言いますが、確かに感覚的には近いかもしれません。*2 [PCは子供のようなもの] = まったく脈絡もなく、つい先日見た『イノセンス』で“検死官ハラウェイ”が語った人形論が思い出される。「何故彼らは人の形、それも人体の理想形を模して作られる必要があるのか。人間はなぜこれほどまでに自分の似姿を作りこむのかしらね?」とか「つまり子育ては、人造人間を作るという古来の夢を一番手っ取り早く実現する方法だった」とか。澁澤龍彦でも読んだ方がいいかもしんない。とりあえず今回は全然読まないで書いてます。
言い替えれば、これは「思い入れ」と言ってもいい。
全てはここから始まります。
「世界設定」フィルタ
ここで最初のフィルタリングが行われます。
世界設定は使用する〈システム〉を選んだ段階でだいたい決まっていて、これは硬直的ですから、ユーザはすべからくこれに準拠して原設定を加工します。
たとえば原設定で「ゴルゴ13のような凄腕の狙撃手」と考えたとき、ゲーム世界に狙撃できる武器が無かったら、その原設定は無効になります。「狙撃手」を「暗殺者」に変えるなどしてゲーム世界にすり合わせるか、破棄しなければなりません。また「ゴルゴ13のように」と言ってもゲーム世界にライフル銃など銃火器が無かった場合、それに変わる武器を選ばなければなりません――たとえばボウガンとか。*3[たとえばボウガンとか] = いやゴルゴ13でもボウガン使うこともあるけどね。
そんな具合に、この段階では「情報の言い換え/すり合わせ」を行います。
「舞台設定」フィルタ
設定情報のフィルタリング、二段階目です。
ここでいう「舞台」とは、セッションの舞台として PC が行動する環境のことです。
舞台設定は原則的に「シナリオ = ゲームマスターが対応できる行動可能限界」に準拠して設定されますから、この段階でゲームマスターと相談する必要があります。つまり「この PC はゲームマスターが想定する行動可能限界に収まっているか?」ということです。
舞台が極めて限定的な〈メカニズム〉の場合、これは世界設定と同一であるケースがあります。
たとえば王侯貴族の勢力争いのシナリオを遊ぶとき、舞台は「王宮」になるとします。PC の設定が「羊飼い」だとして、そもそも「王宮」に入れるか否か。ゲームマスターが「羊飼い」をそれに参加できるよう誘導できるのであれば承認するでしょうし、する自信がないのであれば棄却し、別の設定とするなり、PC を作り直すなりを勧めることになります。また、相談することで「羊飼い」が参加できるようシナリオを加工する、といったケースもあります。
この段階では「ゲームマスターの恣意的判断*4[恣意的判断] = ゲームマスターは自己の能力や希望などによってこれを判断する。 による確認作業」を行います。
「参加者の承認」フィルタ
これがゲーム使用前の、最後のフィルタリングです。
参加者とは、セッションに参加する全ユーザのことです。
ここでは各プレイヤーが自分の PC との相性、またゲームの目的や傾向などを考えて、「一緒にゲームを楽しむことができるか」から判断します。
たとえば「エルフを心底憎んでいる」なんて設定の PC がいて、他の PC にエルフがいるとする。相性は悪すぎます。もしゲームが「パーティ一丸となって障害に立ち向かう」ものであったなら、パーティを二分したり、仲違いを発生させるような設定は避けるべきだと考えるでしょう。しかしゲームが「PC 個々人が自分の目的のために行動する」ものであれば、望むところか、そうでなくても警戒しつつ受け入れるかもしれません。
複数の PC が相反する設定を作ってきてしまった場合、プレイヤーの技量やら人間関係やらを考えて、設定の修正をしていきます。
この段階では「プレイヤー同士のクロスチェック/ゲーム認識のすり合わせ」を行います。
以上、3枚すべてのフィルタを通過した加工・編集された設定だけが(原則的には)ゲームに直接使用できる設定になると考えられます。
References
↩1 | [ほとんどのゲームが…] = 『Aの魔法陣』ではシステム用データそれ自体が個人を確立するための設定となっている。詳しいことは知らないのだが『ヒーローウォーズ』もそうらしい。この点については後日、別エントリで書きます。 |
---|---|
↩2 | [PCは子供のようなもの] = まったく脈絡もなく、つい先日見た『イノセンス』で“検死官ハラウェイ”が語った人形論が思い出される。「何故彼らは人の形、それも人体の理想形を模して作られる必要があるのか。人間はなぜこれほどまでに自分の似姿を作りこむのかしらね?」とか「つまり子育ては、人造人間を作るという古来の夢を一番手っ取り早く実現する方法だった」とか。澁澤龍彦でも読んだ方がいいかもしんない。とりあえず今回は全然読まないで書いてます。 |
↩3 | [たとえばボウガンとか] = いやゴルゴ13でもボウガン使うこともあるけどね。 |
↩4 | [恣意的判断] = ゲームマスターは自己の能力や希望などによってこれを判断する。 |
「[column] 背景設定の有効化フィルタ」への2件のフィードバック
コメントは受け付けていません。