ファーストフードで 5時間粘るダメ客は、帰りの電車で出くわした光景にドラマを妄想し、歩くのが億劫になって乗ったバスでびっくりした。
まず電車内での光景。
雨の後、風の無い車内は外より蒸し暑い。
ドア近くに座っていると、ドア前に座れなかった人が立った。
少しして、斜め前あたりに座ってた女が立つ。
立っていた男が知り合いだったらしい。話しかけていた。
飲み会の後だと言う女は、酔っていたのか少々呂律が回っていなかったが、何のかんのと男に話しかけるが、男の方はそっけない。
電車が発車して20分、女は飲み会での話やらなにやら必死に話していた。
男は、ああ、うん、そう、と酷くそっけない。
そのまま幾つめかの大きな駅で男は降りる。ホームで待っていた別の女とドア前で楽しげに言葉を交し、エスカレーターに乗った。
車内に残された女は笑顔で手を振り、電車が動き出すと、ガラガラの車内で声を出して泣いた。
私は次の駅で降りた。
次にバスでのびっくり。
バスに乗る。乗客は四名。
私と、通路を挟んだ斜め前に一人、それから私の後ろに赤ん坊を抱いた男が座っていた。
動き出すバス。夜も遅かったので、スムーズに進む。
やがて私の目的のバス停。当然、ブザーを押した。
すると後部座席の男がいきなりキレた。
「子供が起きるだろうが!」
その怒鳴り声で赤ん坊は泣き出し、男はあやしながら恨み節を延々と言い続ける。
私は当然下車をする。
バスが動かない。
はて? 見ればもう一人の乗客も降りてきた。
年若い運転手の困った表情を背に、あの男は何だったのかと唖然として走り去るバスを見送った。