[心象] 楽園の果て

 こころ踊る世界が一つ、かつてあった。
 多くの人々がその世界の中で生き、語り合っていた。
 とても素敵な“失われた楽園”――

 一年が過ぎ、二年が過ぎ……五年が、六年が過ぎた。
 なつかしい時代を思って、楽園を模倣した男がいた。
 だが男の力及ばず、楽園はたった半年で崩壊した。

 さらに十年が過ぎた。
 傷と罪、それから歳ばかり負った男は、それでも楽園を見上げていた。
 熟みすぎた楽園の種を、さまざまな土地にばらまきながら。