[掌篇] 36 : いつものやつ

 弾き語りのピアニストに、チップと共に一言。
 注文を取りに来たバーテンダーにも、一言。
 シェイカーの小気味良い音。
 音もなく注がれるライム色の液体。
 カクテルグラスを取れば、ピアノの音は遠のいて。
 そして男は目を覚ます。
「いつものやつ」
 そう、一言。

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