学生俺巷が雑魚寝集団と化した客室に行くと、えらい酒臭い。
ほんとチミたちいつまでそんなライフスタイルか。
……いや僕も人のこと言えないけどな!
とりあえず声をかけながら、ひどいことになってるブツを引っぺがして籠へ。
仕事仲間が貫徹でダベってた居間は、起きた人が片付けていた。
うん。さすがだ。
「洗濯物、出せる?」
「あ、ヤエちゃん、これお願い」
へーい。
これだけで大した量だったので、ひとまず洗濯機に放り込んでスイッチオン。
ガゥンガゥンと心地好い響き。
ふとカミさんが起きたような気がしたので、寝室に戻るとやっぱり起きてた。
左半分だけボサボサになった頭を撫で付けながら、閉じかかる右目との攻防。
普段スタイルを崩そうとしない人の、こういう顔は可愛い。
「洗濯するけど?」
「うん、あー、これお願い」
へーい。
見事にオフになってんなァ。面白い。
赤ちゃん’sルームと、居候の部屋はパス。
チビ助の部屋のドアをノックすると、
「きがえちゅ―」
「洗濯物、出しとけよー」
娘の部屋のドアをノックしてから、書斎で寝てるの思い出して一人苦笑。
書斎のドアをノックすると、こちらも「もうちょっと待って」とのこと。
なにをもうちょっと待つのか知らんけど、もうちょっと待ってから「待ったよー」と。
「洗濯物はー」
「自分で持ってくから」
へーい。
抱えて出てきた。
ってチミ、着替えまで持ってきてたのか。計画的犯行か。
(↑ダメ客から逃げて、僕の書斎のソファで寝ちゃった人)
書斎から出てフロアを見下ろすと、チビ助が階段を下りている。
「洗濯物は!」
「部屋ー」
こらテメェ。
ドスドスと地響きを立てて追いかける。
玄関で靴を履いているところで捕獲!
「洗いもんくらい出しとけよお前」
「急いでんだよ仕方ねぇだろ」
カッチーン!!
逃げようとするチビ助を、顎のつけ根を手で挟んでロック。
デコピン。
「誰に向かってモノ言ってるか、貴様」
「……おえんあはい」
ヨロシイ。
手を離すと、すかさず反撃とばかりに僕の頬のつけ根を、片手で挟もうとするチビ助。
ふ。親父の顔のデカさを甘く見るな。
(それ……威張れることか?)
すかさず両手に作戦を切り替える。
「状況判断が遅い」
もう一度、チビ助の顎をロック。
降りてきたカミさんが一言。
「……なにやってんの?」
うん。シツケをね。
そこでハタと気がついた。
この図式、親子でほっぺた挟み合ってる、実にワケの分からん絵面である。
まあチビ助も急いでるみたいだし、事情説明は後ですることにしよう。
「この話はまた後で、帰ってきてからな。忘れるなよ?」
「もう忘れた」
捨て台詞一つ残して、玄関を駆け出て行くチビ助。
うん。元気でヨロシイ。
カミさんの物言いたげな視線に気がつき、ふと階段上を見れば……
ちらかった洗濯物を、娘が籠に入れなおしてくれていた。
ゴメンナサイ。