「■ピンチカーブ」の項は後日掲載予定。
■盛り上がりの演出とピンチカーブ
シナリオ全体の流れと重大な葛藤と選択(決断)の割り振りについて理解したら、次はプレイヤーがシナリオに没頭し、盛り上がれるようにすることを考えよう。シナリオの盛り上がりについて、ここでは共感と緊張感という二つの要素について注目していく。
テーブルトークRPGは一方的に鑑賞する物語とは違い、語り手たるゲームマスターが一方的に語り聞かせることが、聞き手、つまりプレイヤーの盛り上がりにつながるとは限らない。それはプレイヤーが物語の当事者として能動的に参加しているためであり、複数の目標を持っているためでもある。プレイヤーは、物語の登場人物として没頭していれば良いわけではない。彼らはゲームの目標達成のためにも行動しなければならない。そのため客観的であること、冷静であることが求められることになる。その冷静さが、聞き手としての盛り上がりを阻害してしまうことも少なくない。
こうした条件下でプレイヤーが盛り上がれるようにするためには、ただ語る以上の手段を講じる必要がある。そしてそのためにこそ、ゲームシステムが搭載するさまざまなゲームの要素が強い味方となるのだ。
ゲームを盛り上げるための典型的な手法には、大きく分けて二つのアプローチがある。ひとつは共感を得ること、もうひとつは緊張感を与えることだ。
盛り上がりを演出するための二つの基準
- 共感を得る
- 共感を得るといっても、あまり難しく考える必要はない。大事なことは、ゲームの状況が納得できるものであるかどうかだ。これはセッションを盛り上げるためというより、盛り下げないため、水をささないための予防的な性質が強い。
なぜPCが目標達成のための行動をとらなければならないのか。イベントで必要とされている行動は、目標達成のために意味があるかどうか。そして何より、PCにとってそれらは納得できることか否か。これらが納得のいくものであれば、プレイヤーは能動的に行動してくれることだろう。プレイヤーが能動的であることは、セッションに没頭する上での重要な条件の一つである。
また、PCの行動の自由を制限しすぎたり、過剰に攻撃を仕掛けることも、プレイヤーの共感を妨げることにつながる。過酷すぎる状況に置かれれば、そこから退避したいとPCが望んでもおかしくはないし、プレイヤーはそうできないことに不満を抱くだろう。それらはプレイヤーの参加の意思を削ぎ、受動的で投げやりな姿勢にしてしまうことが多い。
共感を得るためには、プレイヤーが納得できるだけの説明ができなければならない。シナリオで発生する各種イベントについては、その合理性についての確認を怠らないようにしよう。 - 緊張感を演出する
- 共感を得ることが盛り下がらないようにする予防的なものであるなら、緊張感を与えることは能動的に盛り上がりを作り出すための手段だ。その目的は達成感の演出である。
スリリングな状況の中をうまく立ち回り、プレイングの冴えを見せることは、ゲームの楽しみのひとつだ。また、自分のプレイングによってPCが活躍することに不満を感じるプレイヤーというのも珍しいだろう。判定というルールは、こうした時にもゲームマスターを助けてくれる。
緊張感を与えるシンプルな方法は、判定の難易度を上げる(成功確率を下げる)というものだ。難しい行動を成功させた、という達成感の演出である。ただし、これには判定に失敗することのリスクをプレイヤーに丸投げにするという要素が含まれている。判定の失敗によってその先の展開が立ち行かなくなるようなシナリオでは、そうしたリスクを避ける事を考えなければならない。
また、目に見える活躍を計画的に演出しようとする場合、安定した方法として、他のPCに不可能なことを、それを得意とするPCがやってのける、というものがある。こうした役割分担と得意不得意の表現は、テーブルトークRPGの得意とするところだ。
ここで重要となるのが、PCのデータと判定の成功確率についての理解だろう。得意なPCであれば可能だが、不得意なPCには無理な判定難易度をどの程度に設定するのか。その基準を持つために、ごく初歩的な確率統計の知識が役に立つのだ。
その他、緊張感を演出する手法としては、タイムリミットなどの資源管理を行ったり、他のキャラクターと競争させる、といったものもある。
ピンチカーブ
(省略)