■戦術をデザインする
勝利条件の設定によって、その先頭における基本的な戦闘プランが決められる。更にゲーム的な要素を加味するために、敵や障害の戦闘プランについて設計することも必要となるだろう。これはPCの、主に勝利条件を満たすための行動を妨害することを目的としたものと、純粋な戦闘行動としてのものとの二種類がある。
戦術をデザインする上での注意
- あまり長期戦にならないように
- 戦闘はルールが複雑で細かな手順が多いため、どうしても時間がかかりやすい。そのため長期戦になると、どうしてもプレイヤー、ゲームマスターともに疲労が蓄積しやすくなる。そうした状態でのゲームが良い結果を生まないことは述べてきたとおりだ。
そのために考えるべきこととして、PCの能力をいかんなく発揮し、活躍の実感をプレイヤーが得るために必要な時間がどの程度かについて検討するとよい。
これはゲームシステムによって異なるものだが、PCの実力を発揮し、かつ疲労は少なめに抑える、という条件を満たす目安として、筆者は目安として手番(ターン)数を基準に、各プレイヤーに3~5手番程度が、適正な戦闘の時間だろうと考えている。PCの戦術プランも、特に活躍につながるものは、多くても5パターンに収まるものだ。参考までに。 - PCへの能力封じは慎重に
- PCの能力を使えなくしたり、無力化したりする能力を敵に与えることについては、慎重に行うべきだろう。プレイヤーの多くはできることが増えることについては賛否両論だが、できることが減ることについては強く反発する傾向がある。
プレイヤーは戦闘について、PCのデータを作成した時点でプランを持っている。攻撃ならこのスキルを使おう。防御はこれくらいあればX回くらいは耐えられるだろう。移動はこういった場所に位置取りすればいいか。など、大なり小なりそれぞれの行動イメージを持ってセッションに望んでいるものだ。その中には、どのようにPCを活躍させるか、といった内容も含まれている。PCの能力を封じてしまうことは、このプランを封じてしまうことになる。それは活躍のイメージを阻害することであり、プレイヤーの楽しみを阻害することにつながりやすい。
能力を封じる場合、その制限を解除するための手段も用意しておくと良いだろう。そしてその条件を満たすために、他のPCが支援のために多少の手番を費やす必要があるとする場合、共闘関係を演出しやすくなる。できればそうした行動が、支援役のPCの活躍につながることが望ましい。 - 避けすぎる、硬すぎるデータは慎重に
- 敵の回避能力が高くて攻撃が命中しなさすぎる、また防御力が高すぎて与えられるダメージが少なすぎる、などの敵は慎重に扱わなければならない。これらの敵は、実質的にPCの能力を封じているようなものだ。PCの能力封じに関する注意点は、前述のとおりである。
- 敵のデータはPCより多少弱めに
- 敵のデータはPCよりも多少弱めに設定すべきである。これは何も手を抜けという話ではない。スリリングな戦闘のバランスを考えたとき、PCとまったく同等の強さのNPCと戦闘する場合、ほとんどのゲームシステムでPCの勝率は五割を下回ることになるだろう。これは戦術と資源管理の問題なのだ。
PCの戦術は、まず第一に生存を目的としたものになるだろう。特にプレイヤーは自分のPCにできれば生きて活躍してほしいと考える。PCの死亡を前提とした戦術をとるプレイヤーは珍しいと言ってもよい。
対するNPCは、死ぬことを厭わない。多くのゲームマスターは、プレイヤーほどにNPCたちの命を大事にはしない。あるいはスリリングでドラマティックな戦闘を演出するため、あえてNPCに死亡を前提とした戦術をとらせ、死に様を演じることでドラマ性を付加しようと考えるゲームマスターも珍しくはないだろう。
こうした差は、使える戦術と資源の差として表れる。そのため、該当する戦闘イベントで死亡することが織り込み済みの敵のデータは、PCと比べて多少弱いくらいで丁度よい。ただしどの程度弱めに設定すれば良い、という指針を示すことは、残念ながらできない。それは各自のルールの習熟度、そして戦術能力に依存するためだ。