■戦闘の勝利条件
テーブルトークRPGの花形といえば、多くのゲームシステムが戦闘をあげるだろう。セッションに決着をつけるのも、クライマックスの戦闘であることが多い。こうした戦闘に必要なデータも、シナリオ作成の重要な要素である。
多くのゲームシステムが、敵として戦うべき存在についてのさまざまなデータを提供しており、これをどのように組み合わせ、どのような戦闘イベントをプレイするのか。それを自力でイチから設計するには、ゲームシステムへの慣れが必要となる。慣れるまでは、何度もシミュレーションしてみなければならないだろう。
ゲームシステムごとに戦闘のルールは異なるが、戦闘における勝利・敗北条件のバリエーションは限られている。まずはこれを整理しよう。
戦闘イベントの勝利条件の例
テーブルトークRPGにおける戦闘イベントは、主に以下の勝利条件のうちひとつ、または複数の組み合わせによって設定される。
- (特になし)撃破
- 対象となるキャラクターを活動不能にする。標準的な戦闘イベントの勝利条件。
- 移動(突破)
- 戦場をある地点まで移動する。途中、敵や障害物などの突破、または迂回などの必要がある。
- 回収
- 戦場のある地点にいる人物、または物品を回収する。対象の位置まで移動する際や、対象自体の移動が妨害される場合、判定や戦闘などの行動が必要となる。
- 救出(護衛)
- 捕虜や人質など、戦場にいるキャラクターを無事に救出する。救出対象の移動を可能としたり、攻撃を防ぐことが必要とされる。
- 時間稼ぎ
- 戦闘を決められた時間だけ長引かせる。時間は判定などによって変化する場合もある。
- 制限時間
- その他の勝利条件と併用し、一定時間内に目標を達成する。
- 破壊(解除・撤去)
- 戦場にある対象物を無力化する。その他の制限と併用することが多い。
- 妨害
- 対象がある地点まで移動することを妨害する。妨害の手段として対象の撃滅や時間稼ぎ、捕獲などの手段が必要とされる。
勝利条件を設定する際の注意
勝利条件を設定する際は、いくつか注意しておくべき点がある。これは筆者やその仲間たち、その他ゲームマスター経験者たちの体験談からくる指針であって規則ではないが、心に留めおいていただければ幸いである。ここでは三つばかり紹介しておこう。
- 特殊な勝利条件の設定は、ある程度ゲームシステムに慣れてから
- 特殊な、あるいは複雑な勝利条件は、往々にして複数の細かなルールを複合的に利用する必要が出てくる。その分、どうしてもルールを見落としたりケアレスミスをしたりと、想定外のトラブルが発生する確率も上がってしまう。特殊な勝利条件は、あくまでシナリオ上の必然やプレイングの結果によってのみ、くらいに考えておいた方が良い。
またプレイヤーがゲームシステムに習熟していないケースについても同様に注意しなければならない。ルール処理について何度も確認、検討しなければならず、それだけで疲れてしまうことになりかねない。疲弊し、集中力を欠いたゲームでは、ミスやトラブルが発生しやすくなる。 - 勝利条件はゲームシステムで整備されたルールで処理できる範囲に収める
- 特に古いゲームシステムでは、移動や回収、妨害などに関するルールが無いゲームシステムも少なくないので注意が必要である。
これはなにも、ルールで整備されていない要件を扱ってはならない、ということではない。そうした条件を採用する際には、予めルールを自作して対処するという方法もある。ただしその場合、正規のルールとの整合性をよく確認しておく必要があるだろう。確認を怠れば、セッションの際に思わぬ事態が発生し、勝利条件が成立しなかったり、逆に簡単すぎてしまうことにもなりやすい。 - 必ずPCの社会的リスクについて考慮する
- 発生した戦闘イベントが行われる環境によっては、戦闘終了後にPCの立場が悪化するケースも少なくない。特に世界設定で警察機構がある程度整備されている場合、都市部などの生活空間での戦闘はリスクが大きく、敬遠される傾向がある。シナリオ上の理由がなければ、極力そうしたリスクの少ない環境で発生させたほうがいいだろう。
こうした社会的制限は、後のゲームの状況に大きく、悪い方向へと影響してしまうことがある。特にプレイヤーがそうした事情を斟酌するプレイスタイルであった場合、想定外の自主規制によって過剰に行動を抑制し、ゲームの進展を妨げる結果になるからだ。