■ゲームシステムの表現力
「表現力」というと、なんだか難しい話のように思うかもしれないが、これは要するにそのゲームシステムがどのようなプレイ感を作り出すことに長けているのか、という話である。
ゲームプレイの中でプレイヤーが何かしら判断を行うとき、その基準となるゲームの状況は、ゲームシステムのルールやデータに沿ってデザインされる。そのひとつひとつは小さな傾きに過ぎないかもしれないが、積み重なることで大きな偏りとなる。そのため、どのように遊びたいのか、どういった楽しみを演出したいのかという、いわばセッションのデザインコンセプトと、ゲームシステムの表現力というのは極めて強い関係性を持つことになる。
もちろんこれはゲームマスターのマスタリングの技法によっても変わることであって、このゲームシステムは必ずこうした傾向を持つ、と断言できるものではない。それがテーブルトークRPGの妙味でもあり、悩ましいところでもあるのだが。ゲームシステムの構造、ひとつひとつについて洗い出してみることにしよう。「ゲームシステムの基礎知識」はそのとき役に立つだろう。たとえば表現力について、次のような読み方がある。
- 例・上方判定における数値の偏りと〈世界観〉
- 上方判定の表現の傾向について、たとえばPCのデータから求められる値の幅(最低値と最高値の差)と、ランダマイザの出目の幅に注目する方法がある。
PCのデータの幅の方が、ランダマイザの持つ幅より大きい場合、そのゲームシステムは基本的にPCの才能や努力といった能力への依存度が高い〈世界観〉である。こうした〈世界観〉のゲームシステムでは、能力にランダマイザでは覆せないほどの差がある二者の対決は、判定を行うまでもなく決するだろう。逆にランダマイザの幅の方が大きいのであれば、そのゲームシステムは運不運に左右されやすい〈世界観〉であると言える。実力者であっても運に恵まれなければ、ビギナーズラックの初心者にたやすく敗退するかもしれないわけだ。
こうした傾向は、当然ゲームプレイにも関係する。プレイヤーが堅実に得意分野についてのアクションを積み重ねることを考えるか、はたまた運任せの一発逆転を狙うのか、その判断を左右することにつながる。またマスタリングをする際にも、どのようにその状況を表現するのかについて、ゲームシステムごとの違いを出す上でひとつのポイントとなる。
これはあくまで筆者の読み方であり、異なる読み方があっても構わない。こうしたゲームシステムに対する認識は、そのままそのゲームマスターがどのような判断基準によってマスタリングを行うのか、という根幹に関わるからだ。だが、こうした基準を持っていれば、自分が遊びたいゲームに、そのゲームシステムが合っているかどうかを判断する上で役に立つだろう。