[note] ゲームシステムを自作する遊び。(4):コアシステムとは

(T)RPG の遊びの一つに「ゲームシステムを自作する遊び」があって、でもその方法ってあんまり語られてこなかったよね? じゃあ実際にゲームシステムをどうやって作るの? という話。

の、第8段。

今回はゲームシステムを自作する上で、土台となるコアシステムの概念と、代表的なコアシステムについてまとめておきます。

!! Caution !!
コアシステムの概念自体は「ルールシステムの中核を担う機構」程度のものであって、自分でゲームシステムを自作しようという人か、あるいは複数のゲームシステムを整理し、インストラクションの効率をあげようと考える人でもなければ、あまり関係がありません。

コアシステムとは

ゲームシステムを組み上げるとき、その中核となるのがコアシステムです。普段、セッションを遊んでいるだけでは耳慣れない言葉だと思いますんで、まずはコアシステムとは何なのかについてザックリ説明しておきます。

はじめにコアルールありき

(T)RPG のゲームシステムは、最低でも三つのルールを必要としてきました。これら三つのルールをまとめたものを俗にコアルールと呼びます。

コアルールの諸要素

  • 成否判定
  • 各種データ
  • 資源管理

それぞれの大まかな目的と内容は、以下のとおりです。

成否判定
【内容】 主に用いるランダマイザと判断基準
【目的】 ゲームマスターとプレイヤーの間で公平なゲームプレイを行う。
各種データ
【内容】 主にキャラクターデータの表現方法
【目的】 プレイヤー間に得意不得意などの傾斜を作ることで役割分担とコミュニケーションを誘発/促進する。
資源管理
【内容】 主にキャラクターの退場にまつわる判定
【目的】 リスクを可視化しセッションをゲームとして成立させる。

このうち、特に重視されたのが成否判定でした──いくつかのコアシステムでは、使用するランダマイザをその名に冠するほどに!

コアルールからコアシステムへ

ところが近年ではコアルールにもう一つ「進行管理」の要素を加え、セッションを通じたゲームプレイをひとつの駆動系、ひとつの構造として識別するようになりました。これを本記事では便宜上コアシステムと称しています。

コアシステムの諸要素

  • 成否判定
  • 各種データ
  • 資源管理
  • 進行管理 New!

これは (T)RPG の遊び方、ゲームプレイの方法そのものに多様性が生まれた結果です。それらを進行管理のルールで大別し、その上にコアルールを乗せる形でのゲームシステム設計が、モダンなデザインということになるでしょうか。

本連載では便宜上、進行管理ルールが無かった頃のコアルールも「進行管理ルールが自由なコアシステム」として扱います。

コアシステムの長所と短所

コアシステムには、それが共通するゲームシステムであれば、ユーザは異なるゲームシステムを遊ぶ際にもあまり戸惑わず、スムーズに遊び始めることが出来るという長所があります。

反面、コアシステムが共通することで他のゲームシステムとの差別化が難しくなることもあります。この短所は、特に〈世界観〉が大きく異なるゲームシステム間で顕著です。

代表的なコアシステム

既存のゲームシステムも、さまざまなコアシステムに整理されます。ここでは代表的なコアシステムについて、幾つか紹介しておきます。

  • 2D6 システム
  • 2DR Basic
  • BRP (Basic RolePlaying / ベーシック・ロールプレイング)
  • d20 system
  • オマジウス・ベーシック
  • サイコロ・フィクション
  • スタンダードRPGシステム (SRS)

2D6 システム

グループSNEから『ソード・ワールドRPG』として発表されたゲームシステムのフレーム。進行管理の無いコアルールです。

成否判定に 2D6 を使い、能力値ボーナス、技能レベルとの合計(達成値)と目標値との比較によってその結果を決定する……あたりが大まかな骨子で、周縁に副能力値と能力値、冒険者技能と一般技能、魔法、レーティング表などがあります。

コアシステムとして独立したテキストが存在するわけではありませんが、同様のルールが「2D6システム」と呼ばれています。後に『スクラップド・プリンセスRPG』『ソード・ワールド2.0』でも使用されているので、突き合わせて共通部分を抜き出せばコアシステムを抽出することができるでしょう。

また同システムを標榜していないものの、汎用ゲームシステム『MAGIUS 基本ルールブック』も 2D6 システムに類似した構造を持つので、参考になるかもしれません。

2DR ベーシック

伏見健二氏が主催するゲームサークル GG99 のサイトで公開されているオープンソースのゲームシステム。

同氏の『ブルーフォレスト物語 リバイバル・エディション』の付録 CD に収録されました。

・このテキストは変更/流用/再配布が可能です。

とあるとおり、同テキストを下敷きにして、自由に書き換えながらゲームシステムを作ることが出来ます。

ファンタジー世界を舞台とした ver.001 と、より汎用度を高めた ver.002 は GG99 のアーカイブに、ver.003 はエテルシアws@ウィキ で公開されています。

実際に 2DR Basic を使用したと思われるゲームシステムには、以下のタイトルがあります。

  • モンスターメーカー・リザレクション
  • 敗犬は荒野を駆ける
  • ラビットホール・ドロップス
  • ピークス・オブ・ファンタジー
  • カタナ・ジェノサイド

BRP (Basic RolePlaying / ベーシック・ロールプレイング)

言わずと知れた『クトゥルフ神話TRPG』を始めとするケイオシアム社の多くのタイトルに共通するコアシステム──かつては「ケイオシアム・ルール」なんて呼ぶ人もいました。これも進行管理の無いコアルールです。

成否判定に D100 を使い、能力値または技能値を基準とする下方判定により、その結果を決定します。またキャラクターデータとして七つの能力値の項目も決まっていますが、実際の能力値の算出方法、および技能値に配分するポイントの計算式などは、 BRP のバージョンによって違いがあるので注意が必要です。

日本語展開されたタイトルにも、例えば以下のようなものがあります。

  • クトゥルフ神話TRPG(旧・クトゥルフの呼び声)
  • ストームブリンガー
  • 大帝の剣RPG
  • 放課後怪奇くらぶ
  • ルーンクエスト

日本語訳が『Role&Roll SP』に掲載されたので、興味のある方はこちらを参照すると良いでしょう。

d20 system

(T)RPG の金字塔たる『ダンジョンズ&ドラゴンズ』のコアシステム。

D&D 3.x 時代からライセンス制度が制定され、主に英語圏の (T)RPG の多くがこれを採用し、それぞれ独自のルールシステムだったものから d20 system にコンバートされたタイトルも沢山ありました。

日本語圏で入手できた d20 system の関連タイトルは、だいたい以下の通りです。(他にDnDのサプリメントもあった)

  • d20 モダン
  • d20 サイバースケープ
  • コール・オブ・クトゥルフ d20
  • メタルヘッド d20
  • ワースブレイド d20

コアシステムの日本語版テキストが無かったり翻訳権もなかったりで、商用タイトルを作ることはほぼ絶望的だと思います(先に英語版で作ってから翻訳すればいける?)が、個人で遊ぶ分には問題ないはずなので……たぶん。

オマジウス・ベーシック

サークルないつお@おまじなラジオによる同人誌、『TRPGおまじなSOS』に掲載されたコアシステム。

後述のサイコロ・フィクションと同じく、成否判定と進行管理を基軸としたユニークなデザインをしています。ほとんど全ての要素について設計されていて、世界観を設計するだけでほぼデザインが完結できる点は、コアシステムというより汎用システムに近いのですが、判定に使用する能力値を自作できる部分はそこからちょっと逸脱してもいます。

同サークルの『30分勇者』で採用されたもの(というか『30分勇者』のシステムから汎用度の高い部分を切り出したもの?)で、細かなデータの駆け引きによる戦術よりも、即興性の高いロールプレイを楽しむゲームシステムを作るのに向いていると思います。テキスト量も少ないので、いわゆる「1ページTRPG」のような小品にも使えるあたりも長所でしょうか。

ずっと商業タイトルを遊び続けてこられた方は「1ページTRPG」ってもご存じないかも知れませんが、これについては、2016年にTwitter上で発表された『ブーランジェリは大忙し』を皮切りに広がった、大体 A4-A3 一枚に収まる程度のコンパクトなゲームシステムの総称です 1)以前から同規模のゲームシステムはあったが、明確な基準と呼称を得たのがこの頃。。2017年には『ゲームマスタリーマガジン』の刊行を記念して1ページTRPGのコンテストが行われたりしています。 2)この辺の経緯も誰かまとめてくれないものかしら。

!! Caution !!
利用に際しては特に明確な規約はありませんが、使用した際にはゲームシステム内にその旨を記載しておいて欲しいとのことでした。

サイコロ・フィクション (SF)

冒険企画局によって発表されたコアシステム。

進行管理について参加者個々人の手番レベルまで詳細に決めたことや、能力値の代わりに特技表という特殊な表を用いることなど、他とは一線を画するユニークなコアシステムとなっています。

同コアシステムを使用している商業タイトルは以下の通りです。

  • インセイン
  • カードランカー
  • 艦これRPG
  • キルデスビジネス
  • シノビガミ
  • ストラトシャウト
  • ダークデイズドライブ
  • ハンターズ・ムーン
  • ピーカーブー
  • ビギニングアイドル
  • ブラッド・クルセイド
  • ブラッドムーン
  • マギカロギア
  • ヤンキー&ヨグ=ソトース

スタンダードRPGシステム (SRS)

ファーイースト・アミューズメント・リサーチ(F.E.A.R.)社が 2006 年に公開したゲームシステム。細かな進行管理のルールはありませんが、セッションを4つのフェイズに分け、シーン単位で管理するルールテキストがあります。

同社から発表されたさまざまなゲームシステムで利用されており、サンプルとなるタイトルも多くなっています。以下に一例を示すと……

  • アルシャード・ガイアRPG
  • アルシャードセイヴァーRPG
  • アルシャード・フォルティッシモ
  • 風の聖痕RPG
  • 神曲奏界ポリフォニカRPG
  • 世界樹の迷宮SRS
  • 天下繚乱RPG
  • 天羅WAR
  • トリニティ×ヴィーナスSRS
  • トワイライトガンスモーク
  • フルメタル・パニック!RPG
  • まじしゃんず・あかでみいRPG
  • メタリックガーディアンRPG
  • モノトーンミュージアムRPG

これら商業展開されたゲームシステムは、原則 SRS のデータ記法、各種パラメータ、用語など、多くの共通点を持っているため、異なるゲームシステム間でデータを移植することが(比較的)容易であるなどの特徴もあります。

(いくつかの条件付きではあるが)自由に改変できるコアシステムのテキストデータを公開しており、ユーザはこれを自由に書き換え、自分のゲームシステムを作ることができます。

!! Caution !!
ただしオープンソースなのは同テキストのみであって、以下で紹介する商用タイトルの各種テキストはそれぞれ著作権法で保護されたものであることを忘れずに!

実際には細かな調整が必要になるものの、極論するなら SRS のコアテキストと、既存の SRS タイトルからデータを必要な分だけ抽出すれば、それだけで新しいゲームシステムに必要なテキストの大半を用意することが可能だったりも?(あくまで著作権法に抵触しない範囲での利用に限られるが)

もっとも、抽出やバランス取りなどの作業で忙殺されることになると思いますが……

ゲームシステムの自作とコアシステム

ゲームシステムを自作する際、コアシステムを他のゲームシステムから借用するという方法は、よく取られます。改造との違いは、ルールテキストを自分で作成すること。これは著作権法上の問題をクリアするために必要なことです。

ただしルールテキストを公開し、規約の範囲内で利用を許可しているコアシステムもあります。自分が作りたいゲームシステムとマッチしていると思ったならば、こうした素材を土台にするのも良いでしょう。

オープンソースとして提供されているコアシステム

以下は2019年2月現在、日本語環境でオープンソースとして提供されているコアシステムです。

  • 2DRベーシック
  • オマジウス・ベーシック
  • スタンダードRPGシステム (SRS)

利用規約については、各自確認してください。

こんなところで

今回はここまで。

次回は「コアシステムを具体的に組む」方法について考えていきます。

References   [ + ]

1. 以前から同規模のゲームシステムはあったが、明確な基準と呼称を得たのがこの頃。
2. この辺の経緯も誰かまとめてくれないものかしら。