[note] ゲームシステムを自作する遊び。の前に(2):引き算

ゲームシステムを作る遊び……の前に、遊び慣れたゲームシステムを改造する遊びについて。第2回。

今回はゲームシステムの「引き算」についての話になります。

ゲームシステムの引き算

ゲームシステムを改造する方法には、大きく分けて「足し算」と「引き算」があります。

ざっくり説明すると、

足し算
要素を増やすこと
引き算
要素を減らすこと

くらいの分類です。

たとえば前回は特に「追加」の改造について簡単に書きましたが、これは「足し算」の方法です。

逆にルールやデータを削除したり、何らかの制限をかけることが「引き算」になります。

ゲームシステムとは極言すれば、そのゲーム世界での出来事を記述(表現)するものです。ならば多ければ多いほど良い。その方が様々な出来事について詳細に記述することができるはず。

……そう考えるのはごく自然なことです。

なのに何故、引き算をするか?

これはゲームシステムによって生産/提供したい楽しみからゲームが脱線しないよう制御するためです。

余分なものを切り離すこと

ゲームデザイナーは、とかく一つのゲームシステムに様々な要素を詰め込みがちです。

それはゲームシステムを作りながら「これが完成したらアレもしたいコレもやりたい」と様々な願望が溢れてきたり、実際に遊びながら「ああいう遊びができたほうが良いよなあ」と思うためで、それ自体は誰にでも起こりうる、ごく自然な欲求の発露です。たぶんゲームシステムを自作した人なら誰でも身に覚えがあると思います(笑)

しかし実際には、そうやって増やした要素が邪魔になることがあります。

たとえば古典的な剣と魔法のファンタジー世界が遊びたいのに、何故か武器リストに銃火器のデータが入っていたり、泥まみれで生き意地の汚い冒険者を描きたいのに、気楽に使えるヒーローポイントのルールがある等です。

こうしたとき、そうした邪魔な要素を切り離すことで、より遊びたいゲーム、描きたい物語に集中できるようにするのが「引き算」のデザインです。

引き算を前提としたゲームシステム

こうやって引き算をすることで、必要な要素だけを使って遊ぶことを前提としたゲームシステムは、昔からありました。こうしたゲームシステムは俗に「汎用システム」と呼ばれています。

実際に自分がよく使っていた(使っている)汎用システムについて、ちょっとつらつらと紹介してみますと――

トンネルズ&トロールズ

例として挙げた「剣と魔法のファンタジー世界が遊びたいのに、何故か武器リストに銃火器のデータが入っていたり」というのは (T)RPG の古典たる『トンネルズ&トロールズ』の話です。(完全版の箱が想像以上に重くて何事かと思ったらサイコロじゃらじゃらだったのはご愛嬌)(あ、以下は第5版の思い出話ということでひとつ)

膨大な武器リストから世界観にそぐわないものを排除(引き算)することで、遊びたいゲーム世界の世界観を構築することが出来ます。

これが実際にやってみるとなかなかの曲者なんですよ。武器にはルールシステムに属するデータ(戦闘ルールで使用する数値)と、世界観に属するデータ(名前や形状、用途など)の両方があります。特に後者をどうするかで、このゲームシステムの評価は変わります。

ぼんやりと西洋風のファンタジーをイメージしていたのに、使用制限ナシでプレイヤーにキャラクター作成を任せると、トンボ羽の可愛らしいフェアリーが手裏剣を抱えて厄介な狙撃手になったりします(笑)

それではイメージと合わないからと世界観に沿って制限をしていっても、ルールシステム側のデータの影響で、選ばれやすい武器、選ばれにくい武器が発生します。それによって「騎士が剣で戦う世界」をイメージしていたのに、何故かみんな斧を持って蛮族のように暴れまわってくれやがるのです――野郎ぶっ○してやる!!(笑)

『T&T』は元々が暴れ馬のようなゲームシステムなので、そういう想定外も楽しみの一つとして受け入れられるようになると、馬鹿笑いしながらトロールワールドを堪能することが可能となるのです。ゲームシステムの改造話として、それで良いのかという気もしますが。実際楽しいのだから仕方ありません(笑)

ロールマスター

今では記憶の彼方に忘れ去ってしまっていたり、そもそも知らなかったりする人のほうが多そうですが、かつては『ロールマスター』と言うゲームシステムもありました。(数年前に遊んで楽しかったし、個人的には現役ってことにしたいのだけど)

これは戦闘ルールを扱う『アームズロー&クローロー』、さまざまな魔法を扱う『スペルロー』、障害となる怪物たちを扱う『クリーチャーズ』、財宝を扱う『トレジャーズ』、キャラクター作成と成長に関する『キャラクターロー』、それらを包括して扱うための世界設定をまとめた『キャンペーンロー』といった形で様々な提案を行っており、それらを自由に取捨選択してゲーム世界(キャンペーン)を構築し、遊びます。

日本語版の刊行当時(1990年)、自分は魔法使い大好きっ子だったので、なにも知らないまま『スペルロー〔呪文大典〕』を購入し、そして「ナンジャコリャ」とメダパニをかけられることとなりました――いやもう『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』、また『ウィザードリィ』や『ソーサリー』の薫陶を受けた小学生に呪文「骨接ぎ奥義」は強烈過ぎだって!

同じ名前の呪文に等級があって、効果範囲が違ったりするのはデジタルゲームっぽかったりもしましたが(確か『Fantasy』シリーズとかそうだった記憶)。この辺もどの程度まで使えるかを選択することで、たとえば「どの程度の怪我までなら魔法で治せるから」と、そのゲーム世界のバイオレンス度を管理するコントローラになりました。 1)回復呪文と暴力の関係についてエッセーを書かれたのは秋津透先生でしたっけ?

こちらは割とイメージ通りのファンタジー世界が設計できるので、世界創造派のガチ勢があーでもないこーでもないと言いながら頭を悩ませ、ゲーム世界を構築する遊びを楽しんだもので。自分がキャンペーン単位でゲームを設計するのは、このゲームシステムの影響が大きかったと思います。『キャンペーンロー』なんて今でも叩き台に使ってますし。

ガープス

我らが『GURPS』なんかは汎用システムの雄でして、簡素なコアルールに、ルールシステム、世界観の両面から膨大なサプリメント群が用意されています。

そのあまりに膨大なサプリメント群の全てを使うことは、ほぼ不可能です。相当な無理をすれば可能ですが、それを実現できる世界設定の構築と管理で死ぬ思いをすることになります――実際やった人間として挑戦は止めませんが、想像を絶する手間がかかるので覚悟しておくように!

この辺になると、そもそも使用するサプリメントを取捨選択し、大胆な引き算をしなければ公平感の有るゲームは成立しません。『GURPS』の提案する全てを受け入れて遊ぼうとするならば、それは全ての不条理と立ち向かい、ときおりは勝利できても大抵は玉砕する、極めて悲劇的なゲームとなることでしょう。

……それはそれで楽しめるようにもなるんですが、遊ぶ人をよくよく選ばなければなりません。

パワープレイ

上記 3 タイトルはどれも海外のゲームメーカーから発表されたものでしたが、国産のゲームシステムにも引き算を前提とした汎用ゲームシステムはありました。そのひとつが『パワープレイ』です。後に『パワープレイ・プログレス』という形で、ゲーム世界の構築そのものにルールを提案した野心的なタイトルでした。

最初はわりと穏当な――当時にしては女性的とされた――世界観を持ったゲームシステムだったんですが、『マジックマニュアル』というサプリメントで魔法のデータを拡張していく過程でおかしなことになっていったと言うか、引き算しないとえらいことになるゲームシステムに化けました。

その最たるものが「練筋術」という魔法系統です……冗談だと思った人は挙手ー。はい下ろして……えー誓ってマジです。真剣な話。

初等魔法に「ティンクルティース(効果は歯が光る)」とかありまして、まあ当時ゲーマーの間で濃いぃマニアを量産していた『超兄貴』の影響バリバリな感じなんですが、そんな魔法リストが追加されたんです。()

実際にこの『パワープレイ』というゲームシステムのルールについて考えてみると、提案としてはまあ案外真っ当なものだったんですが、これを笑って許せるユーザと、悪ノリが過ぎるよ興ざめだと手を引くユーザが出るのも当然でして、そこで引き算が必要になったわけです。

RPGマガジンに掲載された海洋魔法とかも好きだったんですが、あのデータは確か『マジックマニュアル』には収録されなかったんですよね。

他にも……

他にも、たとえば『ファンタズム・アドベンチャー(Phantasm Adventure)』シリーズの種族の引き算なんてのもありますが、ここでの紹介は割愛しときます――あれもまた (T)RPG という遊びを考える上で非常に重要なタイトルなんですが!

現在の引き算

引き算の改造は、現在では「レギュレーション」という用語で普及しています。

とはいえデータのバランス取り(不公平感の除去)に最新の注意を払っている現在のモダンなシステム群においては、わざわざ個別のルールやデータを細かく取捨選択していく必要はそれほどなくなっているため、レギュレーションの概念は大抵の場合、「基本ルールに加えてどのサプリメントを使用するか」といった大雑把な選り分けに使われがちのようです。

というわけで

自分が遊んでいるゲームシステムから、敢えて要素を削ることで、より自分の遊びたいゲームに寄せる改造もあるよ。という話でした。(でしたか?)

ここ数年よく目にしたのはアレですね、『クトゥルフ神話TRPG』(以降”CoC”)から神話的驚異を取り除いてみたりする。分かっている人間からすれば「それは単に BRP にしてるだけなのでは?」って話だったりもするわけですが、 CoC しか知らないユーザにしてみればこれも一つの改造の遊びだったりします。

そうすることで、また自分が遊びたい世界観に合わせた要素を足し算してみたり、あれこれ弄り回せるようになるわけで。(観測範囲だけでも東方足したりFate/足したりヒロアカ足したりしてる模様)

改造するだけでもゲームの幅は広がるので、みんなどんどん弄くり回して楽しんだら良いよ! といったところで今日はここまで。

ホント思いついたことをテキトーに書き殴ってるだけなので計画性とかはありません。

でもって次回辺りからそろそろ自作の話に入ってみようかな? どうしようかな? って感じです。前回提示したツリーの説明とかもまだちゃんとしてないしね。

References   [ + ]

1. 回復呪文と暴力の関係についてエッセーを書かれたのは秋津透先生でしたっけ?