[book] 『机上の総べて』を読んで(3)

たかみ弌さんの『机上の総べて』レビュー、に託つけた自分語り第三回。

残り三話だから、今回で一応おしまいかな?

机上の総べて

机上の王さまII

「机上の王さまI」から数年後、再会したかつての面々でもう一度セッションを遊ぶお話。

冒頭でカラスがやっている「予定のないセッションの準備」を彼女は逃避と言ってますが、個人的にはこれも立派な (T)RPG の楽しみ方だと思うのですね。全然悪いことじゃない、というか引け目を感じるような事じゃない。

『化石的ゲームマスター読本 2』でも書いてますが、セッションを遊ぶだけが (T)RPG ではない、というのは僕の持論で。だいいち、遊ぶ予定もないのにルールブック買って読んで、未だ見ぬ物語に想いを馳せるなんてのは、多くのゲーマーがやってるでしょう(笑)

レジュメを作ったりシナリオを作ったり、フィギュアを塗ったりマップを作ったり、あるいは小説や漫画を書いたり、動画を作ってみたりなんてのも良い。レビューしたりローカルルールを考えるのもアリだし、ただルールブックを読んであれやこれやと話し合うだけだって楽しいもんです。楽しみの形は人それぞれだし、そこに優劣をつけることのほうが烏滸がましい。と、思うわけです。

まあそうしてマーケットの潜在顧客を増やそうぜって話でも有るんですが(笑)

閑話休題。

苦い記憶のある相手と、もう一度遊ぼうって言われても正直イヤだなーと思いますよね。この辺、時間が経っちゃうと余計にそういう想いが凝り固まっちゃうのが難しい。自分もそうやって失った環境に心当たりがあったりします(苦笑)(まあ直接の原因はもっとエグい理由なんですが)

「時間が解決してくれる」なんて言葉もありますが、できるだけ早くリカバーを体験させてさっさと気持ちを切り替えていったほうがいい場合もあって。周囲の人間次第だったりなんですけどねー

そしてセッションへ。

見開きで『GURPS』の説明がちょっとあるので、興味が有る方は是非……って、そうじゃなかった(笑)

シナリオかっちり準備してきたのに、ほっぽって自由に動き回られるとイラっと来るの。分かります。「協力しろよ」って気持ちになる。

近年ではそれに対して「ぶっちゃけ相談で対処せよ」って提言されてますが、昔はそういうのありませんでした。むしろ互いが目的を伏せた状態で読み合い、偶発的に噛み合うその強い快感を楽しんだりしていました。だから仲の良い友人と遊ぶことが勧められたし、予定調和にまとまると何となく物足りない気分になっちゃったりもするわけですが。 [1]PL が自由に振る舞ってシナリオぶっ壊してくれると GM も PL に近い(前の展開が分からない)立場で遊べるので。

あとまあ『GURPS』ってのも難しいところなんですよね。あれ「PC がそれらしく振る舞うことの方が大事だ」ってルールに書かれちゃってますし。反応判定や精神的不利な特徴の処理からして、『GURPS』のシステムデザインってシナリオは舞台設定のみでドラマを持たず、むしろ現在のナラティブゲーム的なアプローチで PC の行動から物語を場当たり的に生成していくことを企図していると思うので。

ドラマはキャラクターが内包している、ということがよく分かるゲームシステムでもあります。だからドラマを描きたければ重要 NPC を早く出してさっさとメインストーリーに放り込むことが肝要。後はダイスのお導きでいける(笑)

そういう意味で 92 年当時の (T)RPG の文脈ともズレてるし [2]戦闘ゲームとして軍拡と最適解を遊んでたって話はよく聞きました。、逆に理解される土壌の整った現在としては設計がレガシーすぎる。発表当時から現在でも『GURPS』を遊び続けている愛好者としては、色々と不遇なゲームシステムだと思います。

イカン、また脱線した。久しぶりにブログで書いたせいか、なんかテンションがおかしな具合になってます。筆が走り始めている感覚。まあソレは置いといて話を戻します。

リプレイを読んだり、ちゃんと準備してきたというハバネ。でもファンタジー世界なのにキャライメージがモロに現代人(笑)。まあでもコレ、もしかして『ガープス・マーシャルアーツ』掲載の部分鎧ルールを採用してたのなら分からないことも無かったり。装備品に「レザージャケット」とかありますからね。

そして自問自答の陥穽にハマるカラス。頭がまっちろになっちゃうんですよね。シナリオとか飛んじゃう。本当はリカバーに休憩を入れれば良いんだけど、慌てて続行したがっちゃう。昔は特に「GM は泰然としているべき」「弱みを見せるな」が金科玉条でしたし [3]現在も可能ならそうした方が良い(=PLが安心して遊べる)のは同じです。。でも焦った脳みそはなかなか復旧してくれないというジレンマ。よく有りましたが、結構キツイです。

ここの、ハバネの台詞がいいですよね。カラスの状態を分かってるんだか分かってないんだか。ただの身勝手にも思えるし、的確なアドバイスにも思えるし。性格が出てるというか、キャラが立ってるというか(笑)

そうしてようやっとシナリオが動き出しました。この先どうなったのかは分かりませんけど、カラス GM には苦いものを残しつつも、他の PL には楽しいセッションになったんじゃないかなあ。そんな予感をさせるカットもあって。

苦いけれど、いいエピソードです。

机上の空ごと

語りたい物語を持っていないことを自覚したカラス GM が、久しぶりにセッションをした感想についてのお話。

キャラメイクだけしてセッションがお流れになったり、ルールブックの用意ができてない参加者が出たり、だったら超速サマリーで遊べるようにしてしまえー! とカラスさんが頑張っちゃったり、実に生々しくも微笑ましいエピソードの数々(笑)

初心者さんはキャラメイクにめっちゃ前のめりでテンション上がりまくったり、社会人になるとどうしても時間合わせとか難しくなったり、中古しかないルールブックは入手の手間が色々とーだったり、そもそも金銭的な都合があったり。

ソレに対してサマリー作って力技で遊べるようにしてしまおう、というアプローチに強い親近感を覚えてしまいました(笑)(自分もキャンペーン限定だけど、サマリー掲載のハンドブック作ったりしてるもんですから)

この話は前にちょっと話題にしたと思いますが、あとまあ『化石的ゲームマスター読本 1』を入手して読んでいただけたみたいで、それについて軽く触れられています。

「机上の空ごと」より(1)

「机上の空ごと」より(2)

掲載されてる URL は以前、通販を委託していた Booth のもので、現在は手に入らないので、そこはゴメンナサイ。こちら、現段階ではBooth で PDF 版を頒布させてもらってるだけになります。3巻を刊行する際には増刷再販も考えてますが、未だ未定です。

机上の欠けら

こちらについては前にレビューしてるので。えーと……こちらになります

なんていうかな。こう、空気を読まない熱意って時にすげぇ有効に機能するんよねって(笑)

自分がえらい引っ込み思案なんで、こういう距離感スゲェ羨ましかったりもします。

『30分勇者』楽しいよね!

総評

総じてホントに皮膚感覚というか、これ完全ノンフィクションじゃないの? って言いたくなるくらい等身大のお話ばかりで。人間、好きなものについて物語を語ろうとすると、どうしても着飾った感動を演出したくなるもんですが、そんな中で、ここまで真に迫った作品にはなかなかお目にかかれないので、その辺も高評価。

自分でもなんか書いてみようかと思ったけど、なかなか難しいんですよねぇ、こういうの。

あ、そうそう。

本書は「机上の」シリーズの総集編ということなんだけど、前に読んだ「机上の」「机上の2」が入ってなかったので、アレ? と思ったりも。もちょっと普通にセッション風景とゲーム内容をコミカライズしたものですが、そちらにも興味が有る方は、パブーで読めますんで。

ボドゲの紹介&体験ルポ漫画「にちボド」「ボドゲカイ」も、読んだらきっとボドゲやりたくなるので是非(^^)

References

References
1 PL が自由に振る舞ってシナリオぶっ壊してくれると GM も PL に近い(前の展開が分からない)立場で遊べるので。
2 戦闘ゲームとして軍拡と最適解を遊んでたって話はよく聞きました。
3 現在も可能ならそうした方が良い(=PLが安心して遊べる)のは同じです。